「想定の範囲の中でのワーストケースというのは、想定内なんです。ただ、そこにも入っていないような事が起きてしまうと、これは想定外なんです。経営者としては、そこがすごく大事なことだと思うんですね」

 経営の持続性を確保するには、企業そのものが時代の変化に対応していかなくてはならない。




社会課題解決へ、新事業を 創出するパートナー戦略


「社会的イノベーションの起点になりたい」という志を持ち、「社会課題解決の結節点になりたい」という使命感を持つ藤原氏。そうした志や使命を果たすうえでの東京センチュリーの強みとは何か?

「われわれにはおかげ様で、長い歴史の中でほとんどの産業の方々とのお付き合いがあります。われわれは直接、消費者に接するBtoC(企業対消費者)のビジネスは限られていて、敢えて言うと、ニッポンレンタカーサービスというレンタカー会社がありますが、それ以外は基本的にBtoB(企業対企業)の会社なので、やはりそういったネットワークが非常に大切な財産ですね」

 ネットワークづくりを進めていくうえで、NTTグループや伊藤忠商事などのパートナーの存在は大きく、自分たちの強みであると氏は認識する。

 特に、NTTとは2005年のオートリース事業の統合に始まり、2019年度に資本業務提携し、共同出資会社のNTT・TCリースを設立(2020)。NTTグループ各社とは、インドや米国で需要が高まるデータセンター事業などを推進中だ。



パートナーと一緒になった投資が続く。写真は米国シカゴにあるNTTと共同出資でつくったデータセンター



 祖業であるリース業でいえば、業界トップのオリックスや銀行系の三井住友ファイナンス&リースや三菱HCキャピタル(2021年に三菱UFJリースと日立キャピタルが合併して誕生)がある。

 2025年3月期の業績で見ると、オリックスは売上高2兆8748億円、営業利益3318億円、次いで三井住友ファイナンス&リース(売上高2兆2091億円、営業利益1714億円)、三菱HCキャピタル(売上高2兆908億円、営業利益1871億円)の順。

 東京センチュリーは売上高1兆3686億円、営業利益1170億円で総体的には4位の座にあるが、各社とももはや〝リース業〟で一括りできる業容ではない。また、そういう時代でもない。

 みずほFGグループ内にも、みずほリース(2025年3月期の売上高は6954億円、営業利益489億円)や芙蓉総合リース(売上高6783億円、営業利益647億円)があるが、東京センチュリーは歴史的に見ても銀行色は薄い。

 藤原氏は、こうした現状況を踏まえて、「もはやリース業という括りではない所まで来ていますし、現にわたくしどもも他のリース業といわれる各社さんとも業容が違います」と語り、「わたくしどもの差別化の最も大きな源泉は、豊富な経営資源を持ち、かつグローバルに活躍しておられるパートナーの存在があることです」と強調する。

 同社の取引先会社数は現在、大企業から中堅、中小企業まで約2万社以上。この中でNTTや伊藤忠商事、富士通など各業界をリードし、グローバルに事業を展開するパートナー企業と連携して、ジョイントビジネス(合弁事業)を行っている。パートナーシップ戦略での新事業創出である。

「これだけ課題自体が複雑で多様になってきている時に、自らだけで解決策を追うというよりは、やはり誰か専門性を持ったパートナーの方々と一緒にやるというアプローチが大事だと思います」と藤原氏は語る。


地方創生に繋げる


 日本の社会課題の一つである地方創生にはどう取り組むのか?

「みずほ銀行は全国に支店や拠点がありますから、わたしは銀行に居た時から地方創生というものにも取り組んできました。今度、そうした仕事にわれわれ自身が入ることで、金融以外のところで、お役に立てるような連携の仕方があると思います」  同社はすでに、福岡銀行との折半出資でリース会社(FFGリース)を立ち上げている。

 東京センチュリーが持つリース機能やネットワークを活かし、車やIT機器といった従来のリースにとどまらず、不動産投資や開発等による都市開発や地方創生を手がける。

 最近では、その地域の特性を活かした工場の誘致や、データセンター、物流センター建設といった事例も出始めている。

「地方を元気にするプロジェクトはこれから膨らんでくると思います」と藤原氏。地方創生は日本が抱える重要な社会課題の一つであり、同社がどのような役割を果たすかが注目される。




5つの事業分野に注力!


 藤原氏は、東京センチュリーがこれから注力する事業として、〝5つの事業分野〟を掲げる。

 まずは、『国内リース』事業。これはIT機器などのリース、各種ファイナンスやパートナーとの共創ビジネスなどの業務。

『オートモビリティ』事業ではニッポンレンタカーをはじめ、法人向け・個人向けのオートリースや次世代オート(EV=電気自動車、データ等)を展開。

『スペシャルティ』事業では、航空機リースや船舶・不動産などに関わるリース・ファイナンスや投資業務を展開。

 そして、『国際』業務として、IT機器リースやオート・建機のファイナンス、データセンター事業が含まれる。

 さらに、『環境インフラ』事業として、太陽光発電やバイオマス発電などの再生可能エネルギーや蓄電池事業、法人のPPA(電力購入や電力販売に伴う契約)を支援する業務を手がける。

 氏は、社長就任後直ちに『YMOプロジェクト』を立ち上げ、注力する5つの事業領域の下、20のプロジェクトを実行することを決定した。

 YMOとは何か?

「YMOは何の略かというと、僕らの世代はあのYellow Magic Orchestraというニューミュージック、ニューウェイブの音楽の新しい風を吹かせたあのバンドを思い浮かべますけど、実はこれ、Yはヤングとかユースの若者、Mはマーベリック(maverick)で変わり者、Oはアウトサイダー(よそ者)を意味します。だから基本的には、若者、変わり者、よそ者を集めて、この企業変革プロジェクトをやってみようと思ったんです」

 事業戦略、財務戦略、経営インフラ戦略、人事戦略の全てにおいて、一番大事なのは「社員の意識改革だ」とする藤原氏は、企業変革について語る。

「われわれは業界ナンバーワンになるという強い意識を持ってこれに取り組んでいきます。そういう気運をぜひ社内で盛り上げていきたいと考えています」


祖業リースの可能性は?


 祖業のリースは、時代の推移と共に、さまざまな事業と融合し、形を変えて進化してきた。リースの可能性・潜在力はまだ掘り起こせるのか?

「今、(産業界全体の)設備投資で、リースの使用割合は4%位しかない。2000年代前半(ピーク時)は8%位あったのが、今は4%位に落ちているんです」

 藤原氏は、投資に対する産業界のトップの取り組みも変化してきているとして、「見直しされる」と期待する。

「お客様からしてみると、単に物を借りたいだけじゃなくて、やはり解決策を知りたいんですよ。そういう意味でいうと、例えば人手不足の中で、IT機器や車のメンテナンスにしても、アウトソーシングしたいとか、在庫管理を任せたいというニーズですね。車のドライバーも探してきてくださいといったニーズは増える一方です」

 デジタル投資の増加もあり、藤原氏は、「われわれの出番は絶対に増えるし、まだまだ伸びます」と強調する。




『早く、正しく、新しく』を キーワードに


『早く、正しく、新しく』─。藤原氏は社長就任直後から、この3つのキーワードで、グループ内の社員(約8000人)の意識改革を推進中。

「これだけ時代の変化が激しい中で、やはり早さは価値だと。例えば1週間後の100点より、翌日の80点のほうが価値があるんだと」  次に、『正しく』にはどういう意義を含ませているのか─。

「われわれは東京センチュリーとして、社会課題の解決に導くのだから、これには戦略ストーリーがあって、それに沿った戦略的整合性というのはすごく大事にします」

 藤原氏は「それだけに、やはり世の中がわれわれを見ている。そのことを強く意識してほしい」と社員に訴える。

 倫理的、道徳的に正しいことをやっているか─という自らへの問いかけである。例えば、環境エネルギーにしても、算盤ずくだけでやっていないかという自省が大事で、周囲との調和を大切にして、「道徳的、倫理的に正しい形で進めなければいけない」という氏の思いである。

 業績向上の数字だけを追いかけていて、「儲かることなら何でもやる」─といった風潮が世の中の一部に見られる。

 こうした〝儲かるものなら何でも…〟といった考え方とは一線を引く生き方。経営には基本軸(コア、中核)となるものが不可欠という考え方である。

「わが社は絶対に、地球規模の社会課題を解決するというコアをつくりたい。儲かるからといって、何でもやらない。正しく稼ぐことが非常に大事なことで、そこの道徳観、倫理観を大事にしていきたいと思っています」

 最後に、『新しく』について、氏は「これは、わたしのビジネスパーソンとしての信念でもありますけれども、やはり前例踏襲は思考停止の第一歩だと思っているんですよ」と話す。

 自分で物事を考え、行動することの大切さ─。

「ええ、これまでのやり方はこうだったとか、昨年もそれでやりましたとかいう発想は要らない。やはり自分で物事を考え、行動する。その軸の中で、やはり常に新しい発想で臨んでいく。それを育むような職場環境をつくるのがわたしの仕事でもありますし、社員の皆さんもそこに挑戦、チャレンジしてほしいなと思っています」

 藤原氏が1985年(昭和60年)に大学を卒業し、社会人となって40年が経つ。さまざまな修行をし、困難を経験して、今思うこととは何か?

「成功の反対は失敗ではなくて、挑戦しないこと、だと思っています」と藤原氏。新しい事への挑戦がこれからも続く。

日本生産性本部会長・小林喜光「『未来から学ぶ』の精神で、日本の生産性向上を!」