日本と海外とで、子育ての仕方に違いはあるのか。移住先のフランスで9歳、7歳、1歳の3人の子どもを育てるデジタルクリエイターのロッコさんは「フランスでは、大人が先回りして子どもに手を貸すことは少なく、見守る子育てが主流だ」という――。

※本稿は、ロッコ『フランス人はママを理由に諦めない』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/filadendron
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/filadendron

■子どもと一緒に寝ない2つのメリット

日本で長男を出産したときに、フランス人の夫が「これだけは絶対にやらない!」と断言していたことがあります。それは、子どもと一緒のベッドで寝ること。幼い頃に家族で川の字で寝ていた私は、そんな日本の習慣について説明しましたが、結局、最後まで意見が変わることはありませんでした。

実践して感じたメリットは2つ。まず、睡眠の質が高まったこと。産院では、子どもの存在が気になり休めていなかったと気づきました。そして、寝かしつけが不要なので自分の時間をしっかり確保できたこと。子どもと一緒に寝てしまう「寝落ち」も心配ありません。

フランスでは、義務教育が始まる3歳になると自分のベッドを準備する習慣があります。我が家の子どもたちも、一緒に組み立てたベッドに、誇らしげな顔で横たわっていたのが印象的でした。

■フランス流「夜泣き」対応術

子どもの夜泣きで眠れない……これは世界共通の悩みで、フランスでも同じです。とくに、フランスでは子どもを1人で寝かせる習慣があるため、最初の頃は心が折れそうになる瞬間を何度も経験しました。

最近では生後18ヶ月になる三男が夜泣き虫で、夜中の2時や4時に泣くことを繰り返しています。私は子どもの泣き声を聞くと反射的に抱っこしてあやしたくなるのですが、夫はすぐには動きません。子どもの泣き声を聞きながら状況を判断するのです。

「寝言のような泣き方だから、すぐに寝るかな?」「お気に入りの人形が見つからず、不安になっているのかな?」。そんなことを考えながら、しばらく様子を見守ります。実際、「ふえ〜ん」と泣いても目を閉じているときは、静かに待っているだけでスヤスヤと寝てしまうことも。そんなとき、夫は得意げに「ね! 寝たでしょ?」という顔をして私を笑わせます。

■グズる三男を落ち着かせた義母の言葉

すぐに抱っこしないのは、「放置している」わけではありません。夜中に少し泣いても、子どもが自分で眠れるなら、親が手を出さずに見守る。そうすることで、「泣いたら必ず抱っこしてもらえる」ではなく、「自分で眠ることができる」という感覚を子どもが身につけていくのです。

義母が行うお昼寝の方法もまた、フランス流の育児を体現していました。彼女が三男を預かってくれた日のこと。お昼寝の時間になると息子がグズり始めましたが、落ち着いた声でこう話しかけたそう。「私たちはみんな家にいるから大丈夫。しっかり休んで、また一緒に遊ぼうね」。

それも、理解しやすいように兄弟の名前を出したり、幼児語を交えたりしながら。すると三男は泣き叫ぶことをやめ、話を聞き、自分からゴロンと横になって眠ったというのです。

言葉で安心させることも、無理なく夜泣きと向き合うことも、フランスならではの頑張りすぎない育児なのだと感じました。

写真=iStock.com/silvia cozzi
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■「できない!」に、すぐに手を貸さない

フランスの家庭や学校で、大人と子どものやりとりを見て感じること。それは、「なんでもかんでも助けない」という考えが強く根付いていることです。大人が先回りして手を貸すことは少なく、子ども自身が試行錯誤しながら学ぶ機会をとても大切にしているように感じます。

たとえば、身支度の場面。靴ひもを結ぶのに時間がかかる子どもに、親はすぐには手を貸しません。子どもが「できない!」と怒っても、「ゆっくりでいいよ」「何度も挑戦すればできるよ」と優しく声をかけ、あくまで本人にやらせようとするのです。その姿を見て、辛抱強く見守る育児の姿勢に感心した記憶があります。

また、子どもが転んで泣いたときの対応も印象的でした。私ならすぐに駆け寄って「大丈夫?」と声をかけますが、夫はまず子どもの様子を見守ります。そして、笑顔で「ブラボー! よくできました!」と拍手をして応援するのです。

すると子どもは「よし!」という表情で何事もなかったかのように立ち上がり、また元気に遊び始めます。この反応に最初は驚きましたが、子どもは、意外とその場の雰囲気で泣いていることが多いようです。

■親の役割は手助けではなく「見守ること」

他にも思い出に残っているのが、義母と子どもたちのやりとりです。子どもたちが園児の頃、義母が教えてくれたのが「1人で簡単にコートを着る方法」。床にコートを裏返しに広げ、袖に手を入れて上にひっくり返す着方で、海外の保育園などでよく使われています。義母はこれを「ちょうちょさんの着方」と呼び、子どもたちとワイワイ楽しそうに練習していました。

「子どもが自分でできる工夫」を多く取り入れているフランスで子育てをしていると、以前育児雑誌で読んだ「親の役割は手助けではなく、見守ること」という言葉を思い出します。小さなことでも「自分でやる」経験を積み重ねることで、子どもは自信を持ち、時間をかけて自立していくのでしょう。

■「泣けば買ってもらえる」と誤解させない

フランスの子育てで感心するのが「怒り方」です。私はつい感情的になって「ダメ!」「やめなさい!」と言いがちですが、夫やフランス人の友人ママたちは、冷静に理由を説明し、ルールを伝えるのがとても上手です。

ロッコ『フランス人はママを理由に諦めない』(扶桑社)

たとえば、スーパーで「お菓子買って!」と泣き叫ぶ子どもに対して、「買わないって言ったでしょ!」と怒鳴ったり、「今日だけだからね……」となだめたりする場面はよくあるシーンですよね。

しかしフランスでは、子どもの気持ちを受け止めつつも、「今はお菓子を買う時間じゃない。でも、おやつの時間には別のお菓子が食べられるよ」と冷静に説明する姿が見られます。「泣けば買ってもらえる」という誤った認識を避けることができますし、ただ「ダメ」と言うのではなく、理由を伝えることで子どもも納得しやすくなるのです。

また、子どもに対しても大人と同じように話す姿勢を大切にしています。実際、夫も子どもたちを小さな大人という意味の「Petit adulte(プチ・アダルト)」として尊重し、対等に接しています。私が子どもの頃は、「ダメなものはダメ」と頭ごなしに怒られることが多かったため、子どもたちが納得できるように理由をきちんと伝える今の環境を羨ましく感じることも。

また、学校の先生との面談でも、「子どもを怒鳴ったり、感情をぶつけたりするのではなく、冷静に説明することが大切」とよく言われます。大人が感情的に怒ると、子どもは「親の機嫌が悪いから叱られた」と感じますが、落ち着いた口調で説明すると、「自分に問題があった」と理解しやすくなるそうです。

もちろん、毎回冷静な態度で接するのは簡単なことではありません。私も余裕がなくなると、いまだに感情的になってしまいます。それでも「理由を説明して納得させる」「子ども扱いせずに接する」ことを意識することを忘れずに、子どもたちと向き合っていきたいと思います。

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ロッコ(ロッコ)
デジタルクリエイター
東京都生まれ。現在はフランス・リヨン在住のデジタルクリエイター。フランス人の夫と3人の子どもとともに、5人家族で「肩の力を抜いた暮らし」を楽しむ。日本では完璧主義に縛られていたが、フランスでの日々の中で、「ちょうどいい、余白のある生き方」の大切さに気づく。Instagramでは「フランスでやめたこと」など、飾らないリアルな日常を発信し、多くの共感を集めている。現在は音声プラットフォームVoicyにて、フランスでの暮らしから歴史環境問題、女性の生き方など、多彩なテーマを独自の視点で語っている。著書に『フランスでやめた100のこと』『フランス人に学んだ「本当の感性」の磨き方』(ともに大和出版刊)がある。
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(デジタルクリエイター ロッコ)