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宝刀といえるシビック・タイプR由来の4発ターボ

アリエル・アトム 4Rから降りるマット・プライヤーが、口を滑らせる。「メカニズムとの結びつきが素晴らしい。快適性には大きな妥協がありますが、2023年のベスト・ドライバーズカーで間違いないでしょう」

【画像】2023年の「トップ3」 ポルシェ911 GT3 RS アリエル・アトム 4R ランボ・ウラカン・ステラート 全109枚

それはどうだろう。責め立てて運転するほど、高揚感を得られるとしても。


アリエル・アトム 4R(英国仕様)

ステアリングにアシストは備わらないが、そのぶん感触は濃厚。脚力は求められるが、強力で漸進的なブレーキにはABSが備わり安心感も高い。すべての操作へ、鮮明で豊かなフィードバックが返ってくる。その次の挙動を、正確に予想できる。

コーナリング・スタンスは、僅かなテールスライドを好むタイプ。リアタイヤを軽く滑らせながら、脱出速度を高めていける。

そして、アトム 4Rの宝刀といえるのが、タービンの悲鳴を盛大に響かせる、ホンダ・シビック・タイプR譲りの4気筒ターボエンジン。チューニングを受け、従来より滑らかなパワーデリバリーを叶えている。

トラクション・コントロールの効きを1番弱めても、突然沸き立つ太いトルクで手に負えなくなることはなくなった。濡れたアスファルト上でも、高い精度で求めるパワーを引き出せる。

路面が乾いていれば、目覚ましく速い。クワイフ社製のシフトパドルを弾くと、変速は瞬時に完了。狂気の勢いでエネルギーが路面へ伝わり、ストレートを飲み込んでいく。

一挙手一投足 全部が気に入った

ボディパネルがないだけに、公道での妥協は大きい。疲労度も高い。服装から整える必要がある。それでも、控えめな速度でも、ドライバーの魂を激しく鼓舞する。

一見すると、近づき難いワイルドさがある。ところが常識的な速度でも、ドライバーとマシン、包まれる環境との結びつきを堪能しながら、運転へ没頭できる。


ブラックのアリエル・アトム 4Rと、オレンジのランボルギーニ・ウラカン・ステラート

路面へ追従するように、フロントタイヤが上下する。サスペンションの仕事を目で楽しめるのも、アトム 4Rならではだ。

対するランボルギーニ・ウラカン・ステラートも、淡々と能力を発揮するポルシェ911 GT RSや、高精度なアトム 4Rとは異なるスタイルで、ドライビングの喜びに浸らせてくれた。少し誇張気味な見た目以上に。

「ランボルギーニの進歩ぶりを、如実に表しています。最高のクルマといっても良いかも。恐らく、自分がこれまで運転してきた、すべてのモデルの中で」。先の発言を撤回するように、プライヤーが興奮気味に口を開く。

そして続ける。「一挙手一投足、コミュニケーション力、全部が気に入りました。エンジンも最高!」

彼の主張は正しい。スノードニア国立公園のワインディングを少し走らせただけで、ウラカン・ステラートの壮大ぶりを筆者もひしひしと感じた。

スーパーカーは、恐怖心を覚えるほどパワフルで、手のひらに汗をかくほどドラマチックであるべきかもしれない。それも、魅力の1つになるだろう。だがウラカン・ステラートは、異なる方法でわれわれを魅了した。

以心伝心の自然吸気V10エンジン

運転席へ座ると、横に長く切り取られた前方視界が広がる。1956mmという全幅の広さに、初めは圧倒される。人間工学的にも、優れるとはいいにくい。いずれも、ランボルギーニらしい。

ところが、ウラカン・ステラートの走りっぷりは、過去のどのランボルギーニとも異なる。通常のウラカンより25%ソフトに調整され、ストロークが伸ばされたサスペンションが、ふわりと荒れた路面を処理していく。


ランボルギーニ・ウラカン・ステラート(英国仕様)

通常なら衝撃へ身構えるような隆起部分にも、怯える必要はない。ひび割れてできた穴も、深いワダチも、何事もなかったかのようにいなす。

柔軟な足腰によって、従来以上に確かな自信を抱いたまま、限界領域まで迫ることができる。クイックなステアリングと、見事に制動力が立ち上がるブレーキ、小さくないボディの動きが相乗し、荷重移動は明確。回頭性を高められる。

自然吸気の5.2L V型10気筒エンジンのレスポンスは、まさに以心伝心。爆発するように、甚大なサウンドとエネルギーが発散される。

これらが生み出すコーナリングは、信じられないほどの極上体験。アクロバティックと表現しても良いだろう。凄みを増したボディと、スーパーカーのパワートレインを備えながら、鋭敏なラリーマシンのように現実世界を我が物にできる。

サーキットでも遺憾なく能力を発揮

どちらかといえば、ウラカン・ステラートは公道との相性がいい。とはいえ、サーキットでも遺憾なく能力を発揮できる。意のままに振り回せるバランスと、自在のコーナリングスタンスは、トールマン・エディション205 GTiにも近いかもしれない。

コーナーのきつさを問わず、望み通りのドリフトアングルへ持ち込める。四輪駆動システムは瞬時にトルクを分配し、制御不能へ陥ることを防ぐ。高価なランボルギーニを、路肩へ突っ込ませる可能性は低い。


ランボルギーニ・ウラカン・ステラート(英国仕様)

「最高!」。とアンドリュー・フランケルが笑う。「911 ダカールの扱いやすさと安定性に、一層のスピードとドラマが融合した感じ。ランボルギーニの運転がこれほど楽しいと感じたのは、いつぶりでしょう。間違いなく過去イチですね」

ベスト3へ勝ち残った、アトム 4Rと911 GT3 RS、ウラカン・ステラートの楽しませ方は3車3様。総合的な5名の判断で、どの1台が2023年のベストへ選ばれたのだろうか。最後のまとめは、今回はオブザーバーとなったマット・ソーンダースへお願いしよう。

この続きは、BBDC 2023(8)にて。