そんな状況で、さらに年上のレフェリーたちがマイケル・オリバーを育ててもいました。たとえば、マイケル・オリバーは、試合後にサンダルで帰ろうとして、それを年上のレフェリーたちが『そんな生活態度ではダメだ』と戒める。まだ独身でしたから、食生活なども指導されていました。

 レフェリーは、今日明日で生まれるわけではなくて、場数や経験数も大事で、さらに年功序列というわけでもない。育成の戦略も必要だなと思いました。当時の私は、2022年のことなんて考えていませんでしたから」
 
――非常に興味深いお話で、日本にも必要な戦略かもしれません。では、2015年のアジアカップが国際審判員としてのターニングポイントとなり、その後の2016年にはリオデジャネイロ五輪のレフェリーにノミネートされ、グループリーグで1試合、レフェリーを務めました。

「アポイントされると思っていなかったので、驚きました。後々考えたら、2018年のロシア・ワールドカップの候補に入っていたので、その候補全員を同じ大会ではテストできないじゃないですか? そんな背景もあり、『このグループはこの大会』と分けられて、私は五輪だったのでしょう。

 グループリーグ1試合をレフェリーとして担当し、もう1試合、担当したかったのですが、ある程度割り当ては最初から決まっているそうです。FIFAのアセッサーからも「(もう1試合吹きたい)気持ちは分かる。必要なのはAFC内でのランキングを上げることだ」と言われました。AFCからは3人ノミネートされたのですが、それを聞いてなるほどと思いました」

――グループリーグ第1節と第3節を担当したサウジアラビアのファハド・アルミルダーシ、同じくグループリーグ第1節と第3節、さらに決勝戦を担当したイランのアリレザ・ファガニですね。

「AFC内のランキングなども知らなかったので、明確にあることがリオ五輪で分かりました。私たちには開示されないのですが、AFCからの『1番が〇〇で、3番は佐藤だ』という原案を受けたFIFAが、オートマチックに割り当てていく。五輪の1試合が良かったから、次が割り当てられるというわけではない」

――加点での割り当てはなくて、減点で割り当てがなくなるというような。

「かもしれないですね。いずれにしろ、FIFAの大会でレフェリーを務めるには、AFC内での評価が必要になってくると感じました。FIFAもレフェリー全員を把握できるわけではないですから、各大陸のサッカー連盟の審判委員会に訊くのは仕方ないですよね」

――「この試合はビッグマッチじゃないから」と手を抜いていると、そもそもビッグマッチが回ってこなくなる。すべての試合がワールドカップにつながるわけですね。

「はい。リオ五輪で学んだのは、国内でも、AFCでも、自分が与えられたすべての試合をきちんとやっていくしかないと強く再認識できたことです」

――ワールドカップのノミネート候補レフェリーは、ポラール(トレーニングガイダンスや、心拍数、24時間/365日のアクティビティトラッキング、睡眠とリカバリーを自動的にモニタリングする機械)で管理されるのでしょうか?

「いえ、女子ワールドカップは厳しいようですが、男子は特に今はポラールを必ずつけなさい、というのはありません。そのような管理はなく、個々に任され、大会前の体力テストのクリアがマストですね」

>>>後編( https://www4.targma.jp/fbrj/category/footballweekly/ )に続く