「ゲームは最高の先生なんだ。成長するためにはゲームでプレーしなければいけない。試合でプレーをすれば、自分にはどんな特徴があり、どんな弱点があるかを見つけられる。それを活かすためにトレーニングをして、また試合に向けて準備をする。もし試合に出て、トレーニングでやって来たことが正しかったと実感できれば、さらに自信を深めて良いプレーが出来る。チームの勝利にも繋がっていくんだ」

 では日本人GKがチーム内の外国人GKとレギュラーを競い合うのと、無条件でゴールマウスに立つのでは、どちらが成長できるのだろうか。

「間違いなく試合に出る方だ。GKは試合に出ることで、ボールや選手たちが走るスピードを感じ取り、それに即した判断ができるようになる。また試合に出るからこそ流れも読めるようになる。そして試合で見つけたことを参考にトレーニングを考える。それは勉強をしてテストを受けるサイクルと同じだ。ゲームでプレーすることと、正しいトレーニングがセットになる。これがとても重要だ」
 
 Jリーグが創設されて間もなく30年間になる。当初は攻撃的MFを中心に選手の輸出が始まり、今では欧州のトップレベルで活躍するセンターバックやボランチも生まれて来た。もし最後に残されたGKにも著しい進化の兆しが見えてくれば、日本の未来も明るくなる。ペイトンは、そう見ている。

「繰り返すがGKはとても大切なポジションなんだ。だからこそ時間をかけて育てていくべきだと思う。また優れたキャリアを積んだGKが指導者になれば、また優れたGKを育てることができる。もし日本がワールドカップで勝ちたいなら、そうするべきだと思うよ」

 現役生活が約20年間、さらに指導者として四半世紀。「合わせて45年間もサッカービジネスに関わって来た」ペイトンの提言である。現在は兵庫県相生学院高校(定時制)サッカー部のアドバイザーを務めており、今後は日本でも自身の豊富な経験や卓越した技術や理論などを広めていきたいと考えている。(文中敬称略)

■プロフィール
ジェリー・ペイトン
1956年5月20日生まれ、英国バーミンガム生まれ。現役時代はバーンリーでキャリアを開始し、フルアム、ボーンマス、エバートン、ウェストハムなどで活躍。アイルランド代表としては33試合に出場し、90年ワールドカップのアイルランド8強メンバーのひとり。94年に引退後は指導者に転身し、95年〜97年に磐田、97〜98年に神戸、2018〜19年には清水で指導にあたる。アーセン・ヴェンゲルが指揮を執ったアーセナルでは、2003〜18年まで15年にわたりGKコーチを務めた。またイングランドでは、エミリアーノ・マルティネス(現アストン・ビラ)を育てたのが最後の仕事だった

※このシリーズ了

取材・文●加部 究(スポーツライター)