【何モノ?】中国製VW「わざわざ」日本で販売する背景 好きが高じて
中国製フォルクスワーゲン日本に輸入text:Kumiko Kato(加藤久美子)photo:Hiroto Kato(加藤博人)editor:Taro Ueno(上野太朗)
昨年12月初旬、突如として「上海ドイツ国民自動車株式会社」という不思議な名前の会社がネットの広告に現れるようになった。
公式サイトを見てみると、「Car Import Agency 中国生産フォルクスワーゲン輸入代行サービス」と記されている。
「上海ドイツ国民自動車株式会社」が輸入したフォルクスワーゲン・ラマンド。 加藤博人中国製VW車を日本に輸入して日本の一般ユーザー向けに販売する会社のようだった。
これまでも純中国メーカーのクルマや日欧米+民族系合弁メーカーを含めて、中国で製造され輸入したクルマを「研究用」として販売する業者は存在していたが、日本での登録は現実的ではないとされていた。
それが、同社では上汽大衆(上海VW、SAIC)中国で生産される20車種を輸入して日本で登録(=公道走行可)できるという。
VWの最上級セダン「フィデオン」や中国におけるトップセラー車「ラヴィーダ」など、日本や欧州では販売されていない中国専用車種や、ティグアン/パサートのハイブリッドモデル、ラヴィーダの純電車など新能源車(新エネルギー車)もラインナップしている。
以下がその車種である。
セダン
フィデオン/パサート/ラヴィーダ/ラマンド/ラヴィーダ デパート/サンタナ
ハッチバック
ラヴィーダ・ヴァリアント/サンタナ・ヴァリアント/ポロ・プラス
SUV
ティグアンX/テラモント/テラモントX/ティグアンL/タル/Tクロス
MPV
ヴィロラン/トゥーランL
新エネルギー車
ティグアンEハイブリッド
パサートEハイブリッド
Eラヴィーダ(純電車)
なぜ中国製VWを輸入? 聞いてみた
日本の輸入車ディーラーで発注業務などをおこなっていた経験を持つ、上海ドイツ国民自動車株式会社代表の綱島宏奈さんに経緯を聞いてみた。
――なぜ中国製VWの輸入を?
上海ドイツ国民自動車株式会社代表の綱島宏奈さんが中国製VWの輸入を始めたのは「好きだったから」 加藤博人「最初はドイツ車が好き、とくにVWのセダンが好きという個人的な趣味から始まりました」
「弊社のデモカーでもあり、登録第1号となったラマンドは高めのデッキと短めのボディというシルエットがキレイで一目ぼれでした」
「最初は自分で買って乗るつもりだったのですが無事、ナンバーが付いた際、中国製乗用車にナンバーが付くのは非常に数少ない例だと聞きました」
「おそらくラマンドは日本初の車種だと思います。そこで、会社を起こして輸入業務をやってみようかと思い立ちました」
「また、VWはドイツメーカーの中でも比較的早い時期から世界に工場を持ちドイツ以外の工場で製造された車両が日本市場へも輸入されています」
「中国国内の工場は2010年代に入りVWグループの中でも最新の設備にアップデートされたMQB/MLBプラットフォームの車両を製造しており、大幅な品質アップを実現しています」
「VWの取り扱い車種/グレードが他国に比べて少ない日本市場において、実用性とドイツ車の走行性能を兼ね備えた素晴らしいVW車のニーズは高いと考えました」
「外観にも個性があり他車と差別化が容易でありながら技術的にはドイツ純正モデルと同一で信頼性と整備性が高いという点も魅力があります」
なぜ「一汽大衆」より「上汽大衆」?
――中国製VWには「上汽大衆(上海汽車とVWの合弁)」と「一汽大衆(同、第一汽車)」がありますね。
「わたし自身、上汽大衆とのつながりがあったことに始まり、上汽大衆は一汽大衆に比べて車種が豊富です」
Eマークと併せて製造メーカーから「技適」(技術適合)の証明があれば排ガス/加速騒音試験以外の各種試験も不要だったという。 加藤博人「完全な中国オリジナルモデル車が16車種もあります。車種が豊富なことも大きな魅力でしたね」
――日本のナンバーが付くまでかなり苦労されたのでは?
「中国はUN-ECE(国連欧州経済委員会)による協定規則の締約国ではないため、純粋な中国車メーカーのクルマを日本に輸入して登録するのは莫大な費用と時間が掛かります」
「しかし上汽大衆は元がドイツ車ですから部品にはEマークもついています」
「国交省および関連の独立行政法人に確認したらEマークと併せて製造メーカーから「技適」(技術適合)の証明があれば排ガス/加速騒音試験以外の各種試験も不要で手続きは欧米からの輸入車と違いは無いとのことでした」
「1号車のラマンドに関しては現地側との交渉に時間を要したため、ナンバー取得まで約2年かかりましたが、現在では発注から納車まで3〜6か月で可能です」
――中国生産でもVWだったから……ですか。
「上汽大衆(上海VW)の販売店やドイツVW本社の知人にも尽力いただいて、製造者の上汽大衆(上海VW)から必要書類を取得することができました」
「日本へ輸入する前に、準備を完ぺきにおこなっており事前にほとんどの書類も通していたので、あとは順調でしたね」
「また、日本でも実績のあるVW車ということで各種機関での試験も技術的にクリア出来たのではないかと思います」
登録第1号車VWラマンドどんなクルマ
取材の際、登録第1号車となったVWラマンドを見せてもらった。
VWラマンドは2014年秋に中国市場で発表されたゴルフ7のセダン版に位置付けられる中国専用モデルとなる。
車両本体価格にプラスして手配費用、輸送費用、通関費用、改善費用、各種試験費用などで約250~300万円が必要。 加藤博人ゴルフ7やアウディA3 8VとMQBプラットフォームを共用するミドルサイズのセダンで全長×全幅×全高=4598×1826×1425mm。
最初に綱島さんがラマンドに出会ったのは前期型の「ラマンドGTS」というスポーツモデルだった。
魅力的なデザインに惹かれて購入に向けた交渉をしていたところ、多岐に渡る交渉に時間を要してしまい、実際に購入する段階になった時にはすでに、後期型へマイナーチェンジしてGTSは廃盤になっていたそう。
そこで、通常モデルを購入したとこのこと。
2019年モデルのラマンドは排ガス規制がユーロ5(現在販売中のモデルは全車、ユーロ6に適合)となるが、改善作業はナンバープレートアダプターの取付のみで排ガス等の試験は購入時のままで一発合格。
中国製であることは、リアに貼り付けられた「上汽大衆」のエンブレムでわかる。
上位グレードであるためほとんどの装備は標準だが、純正のカーテシランプやデンマーク製ディナウディオのオーディオや「車線変更補助」の装備、SONAXのコーティングなども上海のディーラーで施工したとのこと。
気になる価格については、ラマンドの車両本体価格は日本円換算で240〜300万円で、これにプラスして手配費用、輸送費用、通関費用、改善費用、各種試験費用などで約250~300万円が必要となる。(この経費は車種ごとに大きな差はない)
なお、現在のところ、日本では登録がほぼ不可能な「民族系車種」についての問い合わせが7〜8割とのことだが、VW車マニアや日本では販売されていないレアなドイツ車が欲しい人にとってはユニークで魅力的な選択となりそうだ。
