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現行型、大幅減 先代末期を下まわる

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)

トヨタ・クラウン1955年に初代モデルを発売して以来、65年にわたり、日本を代表する高級乗用車であり続けてきた。

セダンでありながら、国内市場に重点を置いて開発されてきたことも特徴だ。

現行型トヨタ・クラウン(2018年)。発売直後は伸びたが、2019年6月以降は対前年比が大きく下がっている。    トヨタ

現行型の全長は4910mmと長いが、全幅は1800mmに抑えた。後輪駆動とあって前輪の最大舵角も大きく、最小回転半径は2WDなら5.3〜5.5mに収まる。

今の国産セダンは、ほぼすべての車種が海外向けに開発されるので、全長が4800mmを超えるLサイズモデルは、全幅も1800mmを超えてしまう。

そこをクラウンは、日本での運転のしやすさを考慮して1800mmとした。国内市場を大切に考える貴重なLサイズセダンになる。

このクラウンの売れ行きが、最近は下がり始めた。

現行型の販売推移を見ると、2018年6月の発売直後は伸びたが、2019年6月以降は対前年比が大きく下がっている。

2019年6〜12月は、前年と比べて40〜70%のマイナスだ。

2020年4月以降の登録台数は、コロナ禍の影響を受けたから本来の人気度を反映していないが、コロナ禍前の1〜3月も各月ともに30〜60%減った。

コロナ禍の影響が収まってきた2020年7〜9月も、同様に30〜60%減っている。

直近の2020年9月における登録台数は2050台だ。2018年9月は6063台だったから、クラウンの売れ行きは約2年間で3分の1程度まで減少した。

また先代型がモデル末期だった2017年9月は2357台だ。つまり2020年9月の登録台数は、先代型のモデル末期よりも少ない。

内外装 失われた「クラウンらしさ」

現行トヨタ・クラウンの売れ行きが伸び悩む背景には、複数の理由がある。

まずボディスタイルの変化だ。

現行型トヨタ・クラウンのサイドビュー。持ち味だった典型的なセダンらしさが薄れている。    トヨタ

歴代クラウンは、エンジンルーム/居住空間/トランクスペースが明確に区分される3ボックススタイルだった。

それが現行型は、ボディ後方のピラー(柱)とリアウインドウが大きく寝かされ、トランクフードは短くなった。さらにボディ側面のウインドウが3分割される6ライトのデザインに変更された。

その結果、エクステリアがリアゲートを寝かせた5ドアハッチバックのように見えてしまう。クラウンの持ち味だった典型的なセダンらしさが薄れている。

インテリア、操作性が馴染みにくい?

現行型クラウンはインテリアも変わった。

インパネの中央部を見ると、モニター画面が上下に2つ並ぶ。上側にはカーナビの地図を表示して、下側はエアコンなどのタッチパネルとして使う。カーナビ操作時には下側でもカーナビ画面を呼び出せる。

現行型トヨタ・クラウンのインパネ周り。スマートフォンやタブレット端末を使い慣れているドライバーでないと、操作が繁雑に感じられて馴染みにくいという声もあるはず。    トヨタ

ただしスマートフォンやタブレット端末を使い慣れているドライバーでないと、操作が繁雑に感じられて馴染みにくいという声もあるはずだ。

従来型のクラウンは、オーソドックスなスイッチを装着していたが、現行型は印象が変わった。

若返りを図ったものの裏目に出て苦戦

新型のグレード構成については、1970年代からクラウンの上級グレードとして高い人気を得てきたクラウン・ロイヤルサルーンが廃止されている。

その代わりにスポーティ指向のRSが用意された。

トヨタ・クラウンRS(2018年)    トヨタ

現行クラウンが内外装のデザインやグレード構成を大幅に変えた背景には、ユーザーの高齢化に歯止めを掛けて、若返りを図るねらいがある。

開発者は「近年のクラウンのお客様は、平均年齢が65歳から70歳に達していました。現行型では、中心的な年齢層を40歳から50歳まで引き下げたいです」とコメントしてくれた。

このほか従来型には、V型6気筒3.5Lのハイブリッドのみを搭載する最上級シリーズのクラウンマジェスタがあったが、これは廃止された。

V型6気筒3.5Lハイブリッドは、上級グレードに搭載して、ボディバリエーションは減らしている。

さらにプラットフォームはレクサスLSと共通化され、走行安定性を向上させた。その代わり乗り心地は、従来よりも硬めの設定になっている。

運転感覚はクラウンらしさが薄れ、メルセデスベンツなどの欧州車に近付いた。

このクルマ造りの若返りが裏目に出て、売れ行きを下げたと考えられる。

アルファード好調もユーザーを奪った

クラウンの売れ行きが下がったことに関して、販売店からは以下のような話が聞かれる。

「最近は、今までクラウンを購入していた法人のお客様が、Lサイズミニバンのアルファードに乗り替えるようになっています」

トヨタ・アルファード。クラウンの売れ行きが下がった背景には、アルファードの好調な売れ行きもある。    トヨタ

「TVのニュースで、政治家などがアルファードを使う様子が活発に放送され、お客様の幅が広がりました」

「アルファードを扱うトヨペット店は、もともと法人営業が強いこともあり、クラウンではなくアルファードを選ぶケースも増えました」

「特に2020年5月からは、トヨタの全店で、すべてのトヨタ車を買えるようになりました。そのためにクラウンを扱うトヨタ店でも、アルファードに乗り替えるお客様が増えています」。

クラウンの売れ行きが下がった背景には、アルファードの好調な売れ行きもあるわけだ。

トヨタの全店が全車を扱うようになった影響もあり、2020年9月には、アルファードが1万台以上登録された。クラウンの5倍以上の売れ行きだから、需要がアルファードに移ったとも考えられる。

クラウンは今でもLサイズセダンの最多販売車種で、フーガやレジェンドに比べると、登録台数は圧倒的に多い。

それでも安泰ではなく、ミニバンのアルファードに脅かされている。トヨタの敵はトヨタといえるだろう。

マイナーチェンジで有るべき姿めざす

クラウンの売れ行きについて、トヨタの商品企画担当者は以下のように述べている。

「かつてのクラウンは、トヨタ店のみが扱う専売車種でした。従ってクラウンは、トヨタとトヨタ店の皆様が、一緒になって築いてきた商品だと考えています」

トヨタ・クラウンRS(2018年)。販売店は「クラウンは11月2日にマイナーチェンジを実施する」という。    トヨタ

全店が全車を扱う販売体制への移行は、クラウンのブランドイメージにも少なからず影響を与えた。

クラウンの今後の課題は、現行型がねらったユーザーの若返りと、65年間にわたって築いてきたブランドの両立だ。

知名度の高い商品だから、仮に現行型で売れ行きを下げても、今後のフルモデルチェンジで挽回することは十分に可能だ。

ロイヤルサルーンの復活、セダンらしいボディスタイルの再構築、優れた走行安定性と従来モデルの路線に沿った柔軟な乗り心地の両立など、理想のクラウンを目指して今後も進化を図れる。

それは現行クラウンのチャレンジがあったからこそ、可能になる新しい展開でもあるだろう。

販売店では「クラウンは11月2日にマイナーチェンジを実施して、インパネに装着された2つの液晶画面は、従来と同じ1つに戻します。ハリアーと同じ12.3インチの画面が装着されます」という。

クラウンの進化は、原点回帰を含めて今後も続き、ほかの車種とは違う日本の高級セダンを目指す。