「東京、大阪のふたりの知事の存在が国政に大きな波紋を投げかけようとしている」と語る古賀茂明氏

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『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、東京、大阪のふたりの知事の存在と安倍政権の解散・総選挙シナリオについて語る。(この記事は、5月25日発売の『週刊プレイボーイ23号』に掲載されたものです)

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安倍首相は今年の秋口に解散・総選挙を仕掛けてくるのではないか――7月の東京都知事選で自民党が独自候補擁立を見送るとのニュースを聞いて、そんな思いが頭をよぎるようになった。

コロナ対応の不手際や検察庁法改正の問題などで、支持率が30%台前半にまで落ち込んでしまった安倍政権。とても選挙などできない状況だと誰もが思う。

しかし、今国会は6月17日に閉会する。次の大きな政治イベントは、7月5日投開票の東京都知事選だ。小池百合子都知事は、新型コロナ対応の要請と同時にいち早く50万円から100万円の補償金給付を打ち出すなど、コロナ対応を選挙運動にうまく活用している。連日の会見でマスコミへの露出度も高め、世論の評価は急上昇中だ。

安倍首相は早々と都知事選は勝ち目ナシと踏んで、独自候補擁立を断念した。本来は攻勢に出るべき立憲民主党も候補者さえ決められず、出遅れている。

安倍自民が都知事選で小池支持に回れば、自公小池連合が大勝するだろう。自民は「大勝だ!」と叫び、野党は意気消沈で雰囲気はガラッと変わる。新型コロナが小康状態となり、夏休みに入れば、政権支持率も持ち直す可能性が高い。

ただ、上げ潮ムードはそこまでで、以降は明るい材料が見当たらない。その先に待つのは秋冬のコロナ第2波襲来、コロナ不況によるアベノミクスの破綻、さらに、来春には夏の東京五輪中止決定という最悪のシナリオの可能性も高まっている。つまり、今冬から来夏までは解散のタイミングはほぼないのだ。

衆院議員の任期は2021年10月までだが、このままでは解散できないまま五輪中止で辞任に追い込まれることもありうる。ならば、少しでも支持率が回復したとき――つまり今年の秋口に解散・総選挙をやるのが安倍首相にとってのベストシナリオではないか?

もうひとつ、首相が秋口解散の誘惑に駆られる材料がある。それは吉村洋文大阪府知事の「日本維新の会」と小池都知事の「都民ファースト」が東西連合を組んで国政を目指し、次の総選挙で大躍進する可能性だ。

毎日新聞の調査(5月6日実施)で、コロナ対応において評価する政治家として吉村、小池の両知事が1位、2位となった。以前にも橋下徹元大阪市長と小池知事が連合し、国政に進出するというシナリオが水面下でささやかれたことがあったが、小池、吉村両知事の人気が高まっていることを考えれば、両者が連合して非自民の「改革保守」政党を結成し、総選挙を戦うこともありうる。

来夏には都議選があるが、16年のように小池知事の都民ファースト旋風を再現すれば、清新なイメージの吉村知事人気と相まって、東西連合の勢いは一気に高まるだろう。

来秋解散のシナリオでは、同じ保守で支持層が重なる自民への大打撃は必至。自民の議席数は激減しかねない。そのリスクを封じるには小池、吉村両知事に東西連合による国政進出の準備の時間を与えず、今年秋口に総選挙を行なうことが望ましい。

ジリ貧の安倍首相とともに存在感を一向に示せないリベラル野党。その間隙を突いて、東京、大阪のふたりの知事の存在が国政に大きな波紋を投げかけようとしている。秋口の解散・総選挙シナリオを含め、政局は不安定化する。日々変化する情勢を注視していきたい。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中