「仕事ができる人は、いつも機嫌がいい」と聞くことがあります。

実践しようと思ったのですが…「いつも機嫌いい人になる」って、めちゃくちゃ難しいです…。

イライラしてしまったり、何かに八つ当たりしたくなってしまったり、「いつ会っても機嫌が同じ」人間になるなんて、一生無理なのでは…?

そこで今回は、いつもご機嫌で、感情にムラがなく見えるお笑い芸人、ずん・飯尾さんに「機嫌を保つコツ」をお聞きしてみることに。

テレビのイメージ通り、明るくご機嫌な様子で部屋に入ってきた飯尾さんでしたが…見事に出鼻をくじかれました。

〈聞き手=サノトモキ〉


飯尾和樹(いいお・かずき)】1968年生まれ、東京都出身。浅井企画所属。2000年にお笑いコンビ「ずん」を結成し、ボケを担当

「しょっちゅうイライラしてる」という飯尾さん…

サノ:
テレビを観ていると飯尾さんっていつもご機嫌に見えるのですが…

どうしてそんなに機嫌を保っていられるのでしょうか?

飯尾さん:
えっ、そう見えます!?

いや僕、機嫌にムラありまくりですよ。イライラすることなんて、しょっちゅうです。

サノ:
えっ…

飯尾さん:
虫の居所が悪ければ、レジで行列ができてるのにお金の用意してない人がいると「なんで気が回らないかなあ」ってイライラするし…

歩いてて肩ぶつかっちゃって「すみません」って言ったのに無視されたときなんかは、「いつかライオンにぶつかって痛い目に遭え」くらいのことを思ってます。

そこから25、26歩かかってるんじゃないですか? 気持ちを収めるのに


日々歩きながら人を呪っていた飯尾さん。このままでは企画が…

サノ:
で、でも…いつも楽しそうにギャグを言ってますよね!?

どうやってイライラから“復活”してるんですか…?

飯尾さん:
いつも機嫌がよく見える人たちも、イライラしてないわけじゃないんです。

ただ、とにかく「イライラから離れるスピードが異常に速い」んですよ。

サノ:
離れるスピード、ですか。

飯尾さん:
まず、イライラから離れるのが苦手な人って、そもそも自分が何にイライラしてるかわからなくなっちゃってると思うんですよ。



飯尾さん:
たとえば、仕事で失敗した後、イライラしながら後輩と飲みに行ったら、普段聞き流せるはずの言葉にもイライラしちゃった…みたいなことってありません?

サノ:
あります、あります。

飯尾さん:
そういうときって、そんな自分にさらにイライラして、モノにまで当たっちゃったりしません!? 家の鍵開けるときに「ああ、入れる向き逆かよ!」とか、郵便受けのダイヤル間違えて「また最初からやり直しかよ!」みたいな。

サノ:
ああー!! めっちゃあるー!!

(とくに家の鍵めっちゃやる)

飯尾さん:
でも後輩にイラついたのも、家の鍵やポストのダイヤルにイラついたのも、仕事で失敗したという「最初のイライラ」から連鎖して生まれた「余計なイライラ」じゃないですか。

言ってみれば、イライラしてるときって、そのうちの9割くらいは「オマケ」なんですよ。

人生でイライラしてる時間って、じつはほとんどが「八つ当たり」なんです(笑)


名言と出会ってしまった気がする

飯尾さん:
でも、「オマケ」に埋もれるうちに、自分が本当は何にイライラしてたのかわからなくなっちゃうんです。

まずはイライラの9割が「オマケ」であることを理解して、「最初のイライラ」を特定してあげる。これが、自分の機嫌をコントロールする第一歩だと思います。


イライラは「オマケ」が9割…学びだこれは

自分の機嫌を守りたかったら、「縁を切る覚悟」を決めろ

サノ:
「最初のイライラ」を特定したら、そこからどう離れていけばいいんでしょう?

飯尾さん:
僕の相方のやすって、ホントに温和で、いつもご機嫌なやつで。

出会って27、28年になるのに声を荒らげたところなんて見たことないんです。

サノ:
へえ! 素晴らしいですね。

飯尾さん:
ある日、酒飲んだときに本音暴いてやろうと「なんでそんなにイライラしないの? イヤなやつとかいないの?」って聞いたんです。

そしたら…「いざとなったらぶん殴ればいいと思ってる」って言うんですよ。


えっ怖

飯尾さん:
いい考えですよね! ようは、「いざとなったら縁を切る覚悟」を持って人と付き合ってるんです。

「人間図鑑」をめくってるような感覚なんですって。なんかイヤなこと言われたら、「へえ〜こういう人もいるんだ」とどんどんページをめくってく。イヤなページには全然留まらない。

サノ:
すごい割り切り方だ…

飯尾さん:
でも、誰と話しててもご機嫌に見える人ほど、じつはそのへんを徹底してるんですよね。



飯尾さん:
キャイ〜ンの天野とかウドもいっつも機嫌のいい、気持ちいいやつらですけど、彼らに共通してるのって、イヤだと思ったときに「イヤです」とはっきり言うところなんです。

これも「いざとなったら縁を切る」という前提で人と向き合ってるから言えることだと思うんですよね。

それでも相手が変わらなかったら、自分の機嫌を守るためにそこからさっと「引っ越し」しちゃう。

サノ:
誰に対しても機嫌よくいる秘訣が「いざとなったら縁を切る覚悟を持ってること」…

でも、すごくわかる気がします。



飯尾さん:
寂しいかもしれないけど、それでいいと思うんですよね。

ほとんどの人は葬式に出るような仲でもないんだし、合わなかったらどんどん「引っ越し」していけばいい

自分の機嫌を守るためなら、「いざとなったら縁を切る」と腹をくくってみるのもアリなんじゃないですかね。

続いて、「自分にイライラしているとき」にはどうすれば…?

飯尾さん:
相手にイライラするだけじゃなくて、「自分」にイライラするときもありますよね…

そういうときも、「引っ越し」がカギになると思うんですよね。



飯尾さん:
たとえば僕も、タイムマシンがあったら消したいボケがたくさんあるわけです。

でも、仕事で生まれたイライラって仕事でしか取り返せないんですよね。だから図々しく明日も芸人やるわけで。つまり、次の打席が回ってくるまでそのイライラは解決のしようがない。

サノ:
ふむふむ。

飯尾さん:
となると、次の打席に向けて準備をしたら、あとはさっさと気持ちを別のところに「引っ越し」させなきゃいけないんです。

ずっとそこを見つめてると、またイライラの連鎖に入っちゃいますから。

サノ:
引っ越しって、具体的にどうすればいいんでしょうか?

飯尾さん:
王道なのは、「趣味」ですよね。

たとえば、さんまさんって不機嫌な顔を見たことすらないですけど、木材からゴルフのパター削り出したり、ティッシュボックス作ったり、「没頭して気づいたら朝7時」みたいな趣味を持ってる。

「仕事について反省することとかないんですか?」って聞いたら、「ベストを尽くしてるから、反省しようがない!」って答えられました。


さんまさん、言いそう

飯尾さん:
没頭できるような趣味がない人には、「ただただ歩く」がオススメですね。

サノ:
歩く?

飯尾さん:
俺、「景色が変わらない」って機嫌の悪さにめちゃくちゃ影響すると思うんですよ。

オフィスで戦うプロフェッショナルたちは、景色が変わらない環境においてのイライラの回避方法は、俺より断然熟知してると思うんです。聞き流す技術とかね。

サノ:
たしかに、そういう技術は高いかもしれません。

飯尾さん:
でも俺はロケ芸人だから、「場所を変えると、そこで生まれたイライラからも引っ越しできる」ってことを、身をもって知ってるんです。

機嫌が悪くなったときは、物理的に場所を変えると、気持ちも変えられたりするもんなんですよ。

僕も、スベった現場から何度も歩いて帰りましたよ、やすと。恋人にフラれたときなんかも、とにかく歩いた。


鎌倉でフラれたときは3泊4日で歩いて帰ったそうです

飯尾さん:
会社員の方なんかはとくに、会社と自宅の往復だけで生活が完結して、イライラから抜けられなくなってる人もいると思うんですよね。

そういう方は少しでも歩いて、自分にいろんな景色に見せてあげてほしい。歩くなら誰でもできるし、いつでもできる。

もし俺がこの息抜き方法を知らないまま明日から内勤ってなったら、3カ月で辞表書いちゃうかもしれない(笑)

「機嫌を保てない場所からは、どんどん逃げればいい」

サノ:
「引っ越し」の重要性はよくわかったんですけど…

でも、その繰り返しってある意味、逃げの連続になっちゃうんじゃないでしょうか。

苦手な人との付き合い方も、ずっと上手にならないし…

飯尾さん:
もちろん、機嫌が悪くなってしまったときに、自分にも何か問題があったんじゃないかと考えることは大切ですよ。

誰と関わってもイライラするなら、本当は自分にイライラしてるだけかもしれないし。

それでもやっぱり、「最悪ここから離れちゃえばいいんだ」という感覚が頭にあるかないかでいったら、絶対あったほうがいいと思う。



飯尾さん:
職場とか学校って、やっとの思いでたどり着いた大事な場所だったりするから、「自分にとってとんでもない場所だった」なんて、自分が一番信じたくないと思うんですよ。

でも、そこが自分にとって不良ばっかの路地裏だったなら、立ち止まってる必要ってないんじゃないかな。そこで潰れるくらいなら、引っ越しちゃったほうがいいと僕は思う。

サノ:
たしかに、「その場所から離れる」って選択肢があるとないとじゃ、全然違うのかも。

飯尾さん:
うまく機嫌を保てない場所からは、どんどん逃げればいい。無責任かもしれないけど、僕はそれでいいと思う。

仲間と笑い飛ばせたりしたらいいんですけどね、「あいつマジ転勤しねえかな」なんつってね(笑)。

でも、ぽつんと一人でずっと同じ一点見つめてるようだったら、ちょっと逃げちゃってもいいんじゃねえかって、僕は思いますけどね。



サノ:
今日はたくさんお話いただき、ありがとうございました…!

きっと、飯尾さんの言葉に救われる読者も多いと思います。

飯尾さん:
ま、とにかくイライラしないことは無理だから、発生源を特定して、自分をそこから遠ざけることだけ考える。

その引っ越し方法をどれだけ持ってるかが大事って話ですね。

これが、俺なりの「機嫌の保ち方」って感じです!


「ほら、引っ越し先なんてけっこうあるでしょ?」と教えてくれる飯尾さん。癒やされまくった…

機嫌の取り方を「引っ越し」にたとえて伝授してくれた飯尾さん。

「イライラのほとんどは八つ当たり」という言葉もすごくしっくりきたし、イライラの発生源から身を置く大切さも、とても納得できた気がしました。

「いざとなったら引っ越しすればいい」という選択肢が自分を救ってくれること、きっとたくさんあると思います。いつかイライラして苦しくなってしまったとき、またこの記事を読みにきていただけたらうれしいです。

〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉