荒れる成人式、その原因は地方の若者の承認欲求? #もやもや解決ゼミ

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1月13日は成人の日ですね。この日に成人式に参加するという人もいると思います。毎年ニュースを見ていると、参加者がヤジを飛ばすなど荒れた成人式に関する報道を目にすることがありますよね。このように成人式が荒れてしまう原因はいったい何なのでしょうか?
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今回は、立教大学 現代心理学部映像身体学科の香山リカ教授に回答してもらいました! 香山先生は精神科医、心理カウンセラーとしても活躍していらっしゃいます。
成人式が荒れる理由は?
成人式になると毎年、決まって全国の「荒れる成人式」の映像がニュースで流れますよね。市長や来賓のあいさつにやじを飛ばしたり、ド派手な衣装で乗り込んできて式が終わったら奇声を上げたり、そうかと思うと小競り合いなんかも起きて警察が出動などという地域もあるようです。
成人式にはその地元で生まれた人たちが、みんなやって来るわけです。大学生もいれば働いている人もいて、進路が決まらないフリーター、ちょっと引きこもっている人なんかもいるかもしれません。
学生同士なら「今どこの大学?」「あ、K大だよ」であいさつが済みますが、そうでない人たちは大学名以外で自分の存在をアピールしなくてはならない。これは、実は心理的にはとてもストレスになるのです。
そうなると、中には自分のことを派手な衣装や染めた髪、あるいは持っているクルマなどでアピールしちゃおう、と思う人も出てきます。
するとすぐに成人式の場がちょっとしたアピール合戦になってしまい、「もっと派手に見せたい」「もっと大きな声で目立たなきゃ」とエスカレートしていくわけですね。
そして、ハッと気付いたときには、「荒れる成人式」と呼ばれるような、ちょっと恥ずかしい事態にまでなってしまいます。
つまり、彼らは決して暴れたい、式を壊したいと思っているわけではありません。「オレってこんなに頑張ってるんだよ! オレのことを知ってくれよ」と自分を一生懸命アピールしているのです。
つまり、彼らなりに「承認欲求」※を満たそうとしているわけです。
今年成人式を迎える人は、会場に着いて大学に行っていない中学時代の同級生に会ったら、こんなふうにちょっと声をかけてあげてください。
「仕事してるんだって? 頑張ってるじゃん!」
「美容学校行ってるの? カッコいいな」
自分のことをちゃんと認めてもらえたと思えたら、その人はきっと荒れたりしないはず。私はそう考えています。
※承認欲求とは:他者から自分のことを認めてほしい、自分でも自分を価値のある存在として認めたいという欲求のことです。
香山先生によれば、成人式で暴れてしまう人も決して式を台無しにしようと思って行っているわけではない、とのこと。他の人に自分を認めてほしいという承認欲求からきた行為と考えられるようです。
かつての同級生や知り合いを見かけたら、ぜひお互いに声を掛け合ってみてください。
イラスト:小駒冬
文:高橋モータース@dcp
教えてくれた先生

香山リカ Profile
精神科医・立教大学 現代心理学部映像身体学科教授。
1960年北海道生まれ。東京医科大学卒。
豊富な臨床経験を生かして、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続けている。専門は精神病理学。
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