by Scott Beckner

100kg以上もある巨大な岩が人知れずズルズルと移動するという現象「さまよう岩」の痕跡が2億年前の化石から発見されました。研究チームは、このさまよう岩の痕跡が「三畳紀末の恐竜大量絶滅」の謎を解き明かすと主張しています。

AGU Fall Meeting 2019

https://agu.confex.com/agu/fm19/meetingapp.cgi/Paper/580376

Sailing Stone Track Discovered ‘Hiding in Plain Sight’ in Dinosaur Fossil

https://blogs.ei.columbia.edu/2019/12/09/sailing-stone-track-dinosaur-fossil/

Fossil Find Shows The Enigmatic 'Sailing Stones' Existed Even 200 Million Years Ago

https://www.sciencealert.com/there-were-sailing-stones-scudding-across-the-mud-200-million-years-ago

コネチカット州ポートランドから発掘された「ブロントサウルスの足跡の化石」は、ブロントサウルスの脚先にあるウロコの質感さえ判別できるほど状態が良く、1896年以来、博物館の展示物として扱われていました。以下が実物の「ブロントサウルスの足跡の化石」の画像。



この化石について、多くの研究者は恐竜の足跡にしか注目を向けませんでした。しかし、コロンビア大学のラモント=ドハティ・アース天文台に所属するPaul E. Olsen氏率いる研究チームは、「足跡の横の跡」に着目。この跡は、「さまよう岩」によるもので、恐竜の足跡がついた約2億年前のジュラ紀の気温が一時的に下がった証拠だと発表しました。

研究チームによると、「さまよう岩」が生じる原因は2つ考えられるとのこと。そのうち1つは、「マット状に堆積した微生物が岩を滑らせる」というものですが、研究チームは「仮にマット状に微生物が堆積していれば、ウロコの質感さえ判別できるほどの足跡はつかなかったでしょう」と述べ、この説は「可能性が低い」と論じています。残る1つの説が、「岩の下にたまった水が凍結して氷となり、その氷が風によって上にのった岩ごと移動した」というものです。この説は以下の記事で詳しく解説しています。

「死の谷」で人知れず移動する「さまよう岩」現象の謎がついに解明される - GIGAZINE



By Trey Ratcliff

しかし、この説にも問題点が1つ残されています。それは、この化石が発見されたコネチカット州ポートランドは、約2億年前には今よりも暑かったいうこと。2億年前には地球の地軸の傾きが異なり、ポートランドの位置は現在よりも赤道に近かったと考えられているため、さまよう岩が生じるために必要な「水の凍結」が起きにくい環境でした。

研究チームは約2億年前にさまよう岩が存在したことの説明として、約2億130万年前に生じた「三畳紀末の火山活動」が原因の可能性があると主張。この火山活動によって大気中に硫黄エアロゾルが放出され、地球の気温が低下したことで、さまよう岩の現象に必要な氷ができる環境が整ったのではないかと研究チームは考えています。さらに研究チームは、火山活動によって地球の気温が低下したことが、三畳紀末の恐竜大量絶滅の原因なのではないかとも推測しています。

三畳紀末の恐竜大量絶滅に関しては、他にも「隕石が衝突して引き起こされた」といったさまざまな説が存在しますが、研究チームは「2億年前の化石に残るさまよう岩の痕跡が三畳紀末の恐竜大量絶滅の謎を解き明かす手がかりになり得る」と指摘。研究チームは、「氷が原因でさまよう岩が発生したならば、他にも多数のさまよう岩が同じ向きに移動しているはずです」「同じ地域から別のさまよう岩が同じ向きに動いた跡を発見できれば、2億年前にポートランドで生じたさまよう岩の原因が氷だと特定できます。2億年前のポートランドに氷があったことが特定できれば、その時代に気温が下がったという証拠になり得ます」と主張しています。