発達障害グレーゾーンの葛藤「診断が出た人が羨ましい」

写真拡大

 仕事や家庭などさまざまな場面で感じる「生きづらさ」が日本人に蔓延している。30〜55歳までの男女2000人を対象にしたアンケート調査でも64.5%の人が生きづらいと感じている現代社会。もはや国民病とも言える、その病理に迫る!

◆人並みに仕事ができない……線引きが難しい生きづらさ

 生まれ持っての“脳の発達のアンバランスさ”によって生じる発達障害。世間での認知度が高まったことで自分の生きづらさの正体が判明した人が増えた一方、いまだ苦しみを抱えたままの人が多いのも実情だ。

「そもそも発達障害とは生まれつきの脳の特性。コミュニケーション能力に難があり特定分野へのこだわりが強い『自閉症スペクトラム障害(ASD)』、不注意が多く多動・衝動性の強い『注意欠陥・多動性障害(ADHD)』、読み書きや計算能力に難がある『学習障害(LD)』の3つが発達障害の代表例として挙げられます。

 ASDは100人に1人、ADHDが10人に1人といわれていますが、そうした傾向を持つグレーゾーンの人を含めるとそれよりはるかに多い。しかも、グレーゾーンの人には『自分が“普通”に近い』という認識や葛藤があるぶん生活に支障が起きやすく、生きづらさを抱える傾向があるように思います」(精神科医の西脇俊二氏)

========
<発達障害の代表的な症状>

ASD(自閉症スペクトラム障害)
・人を不快にさせる言葉を無意識に使ってしまう
・客観的に自分を見られず、身だしなみに無頓着
・何かに集中しすぎて約束事を忘れる
・マルチタスクが苦手

ADHD(注意欠陥・多動性障害)
・人の話に集中できずによそ見や聞き逃しをする
・長期的な仕事が不得意で、なかなか業務を始めない
・仕事でケアレスミスや忘れ物が多い
・時間の管理が苦手

LD(学習障害)
・読み書きがうまくできず、転記や音読が困難
・計算がうまくできず、桁の多い暗算が苦手
========

 そもそも発達障害の診断は、国際的な診断基準マニュアルにのっとり医師から下されるものだ。しかし障害の濃淡や範囲は千差万別で医師にも線引きは非常に難しく、生きづらさから抜け出せない人は多い。都内のビル清掃会社で働く白根和明さん(仮名・34歳)も発達障害のグレーゾーンとして生きづらさを抱える一人だ。

◆「診断が出た人が羨ましい」グレーゾーンの葛藤

「学生時代、クラスメートが盛り上がっている理由や教師に怒られている意味がわからずに『変なヤツ』扱いされることはありました。でも、勉強もできたし劣等感を覚えたことはありませんでした。

『俺っておかしいのかな』と自覚したのは大学時代のバイト経験。矢継ぎ早に飛んでくる店長の指示に臨機応変に対応できなかったり、客に『少々お待ちください』と伝えたきり忘れてしまい店の前で30分待たせてクレームが入ったりと、どれもうまくこなせずバイトを3回立て続けにクビになったんです」

 西脇氏は「子供の頃は大目に見られていた発達障害の傾向が大人になって露呈し発覚するケースは少なくない」と話す。それでも白根さんは大学卒業後、アパレルメーカーに入社。だが、入社早々に取引先とのトラブルを頻発させ、1年で退社。結局どの仕事も3年と続かず、2年前から清掃の仕事に就いている。

「清掃の仕事は苦手な人付き合いもないし、やることが毎日決められているのでなんとかこなせています。発達障害についてテレビで知ったのは3年前。『これだ』と思い病院へ行くも、医師からは『ASDの傾向はあるけど、あなたは健常者の範疇です』と言われるのみ。

『結局すべてお前の努力が足りないだけだ』と社会から無能の烙印を押されたようで絶望したのを覚えています。診断が下りることがすべてじゃないとは頭ではわかっているけど、周囲から『ただの無能』扱いされるのはもう苦しい。正直、診断が下りている人が羨ましいなと思ってますね……」

 診断が下りれば、精神障害者保健福祉手帳が取得でき、就労支援を受けられるほか、税金や公共料金の割引も適用される。しかし白根さんの場合、そうした外的な補助よりも自身が直面する“生きづらさの正体”を目に見える形で欲しているようだ。

― [生きづらい病]の正体 ―