ブンデスリーガ2016〜17シーズン前半戦、最も辛酸をなめたのはアウクスブルク宇佐美貴史だったと断言していい。負傷から復帰途中の武藤嘉紀や内田篤人も苦しんだことに間違いないが、それはあくまでピッチ外での出来事。チームの練習にしっかり加わりながら出場機会をつかみきれずもがいていたのは、やはり宇佐美だ。

 宇佐美の2度目の欧州チャレンジには懐疑的な声もないではなかった。もちろんガンバ大阪に復帰している間の活躍は誰もが認めるところではあるが、それでも前回の二の舞になるのではないかと懸念された。バイエルンで歯が立たなかったことはともかく、ホッフェンハイムに定着できなかった適応力の低さがその大きな理由だ。

 今季、宇佐美獲得を決めた監督が他チームへ去ったことも逆風となった。実際、シーズンが始まるとチャンスは少なかった。ヴォルフスブルクとの開幕戦で82分から出場したものの、2度目の出場機会はなんと第12節ケルン戦まで待たなくてはならなかった。その2度目にしても78分からの途中出場。前半戦16戦で先発起用されたのは、監督交代の騒動があった直後の第15節ボルシアMG戦のみ。キッカー誌で採点対象になったのもその1試合だけで、その他の4回の途中出場は時間が短すぎるため採点対象外だった。

 それでも、後半戦に向けて宇佐美には期待する価値がある。2016年の最終戦となった第16節ドルトムント戦後、約20分にわたって心境を語った宇佐美の様子は前向きの明るさに満ちていた。

――前半戦はなかなか出番がなかったけれども、レベルアップしている感覚は?

「できていると信じたいですね。たぶんこの半年......、一番......。難しいな言い方が。トゲのない言い方を探さないと(笑)。苦しみながら、苦しまされながら、努力はしっかり積み重ねてきました。この試合が終わってオフには入りますけど、この半年ほぼほぼ戦っていないから疲れてない(笑)。オフの短い間でも積み上げ作業をしっかりして、いかに(リーグ再開前の)キャンプからスタートダッシュできるか。ゼロからの勝負だと思います。成長はしていると思いますよ、絶対」

――さほど成績が悪くない(13位) なかで、監督交代(第14節終了時にディルク・シュスター前監督を解任、マヌエル・バウム新監督が就任)など、チームがバタバタしたことに、動揺はなかった?

「僕、以前なら、ああいう状況に陥っていたら、つまり監督が代わったら、『よし、俺の出番だ』みたいに思っていたかもしれないですけど、今回は不思議なくらいなかったんです。監督が代わろうが代わるまいが、自分のやらなきゃいけないことはひとつだという信念を持ってやれている部分があったので。監督交代がいきなりすぎて、少し驚いたっていうのはありますし、もちろんそれで状況が変わればうれしいことだとは思いますけど、そんなに気にならなかったですね。不思議と」

――それは何かひとつ、成長している印象ですね。

「と、思いますね。自分でも思いましたもん。4年前(ホッフェンハイム在籍時)、監督がコロコロ代わる時期があったんですけど、代わるたびに気持ち的なアップダウンが結構あったので、少しぶれやすい部分はあったのかなあと思います。今はもう、やれることをやっていれば出番が来るでしょうし、と思えるんです」

――バイエルンやホッフェンハイムで試合に出られない時期がありました。今季、なかなか試合に出られなかった時期とは、自分に違いはありますか。

「いろいろありますけど、以前は、例えば練習が終わった後にボールを触ったり、練習をひとりでやることが多かったんですけど、今はフィジカルコーチを捕まえてやっています。成果として自分に跳ね返ってくるものは、ひとりでやろうがフィジカルコーチを捕まえようが一緒なんですけど、そこでフィジカルコーチを捕まえることができた」

――昔だったらひとりでやっていた?

「ひとりで黙々とやっていましたね。ひとりでやれていること自体に満足感、充実感を得ていました。そういう努力は昔からできていましたけど、今回はそれに、質と量というところを求めながらやれた。やりながら自分自身でも『ここまで(ベンチ外など)いろんな苦しみを与えられながら、よくここまでできるな』と思いました。あの状況でこれだけ頑張れたら、もう頑張れないことはないだろうなと思いましたね」

――アクションを自分から起こせるようになったのが大きいですね。

「それもそうですし、自分に必要なものを考えながら自分を変化させていくこともしています。例えば、食べるもの、飲むもの、寝る時間、寝るまでのサイクル、考えること、普段の過ごし方、全部考えました。『これ、変えすぎであかんかな』と思うくらい変えましたね。

 もうちょっと細かいことを言うと、走力をもっとつけないといけないから、シンプルにもっと下半身の筋力を上げることも重要やし、心肺機能を鍛えていく上で口呼吸と鼻呼吸どっちがいいねんってことも勉強したり。いろいろなアクションを起こしながら、自分の中身を変えながら......。なので、成長はしてると思いますよ」

――フィジカルコーチとトレーニングをするなど、人を巻き込めたというのは昔と全然違う。

「そうなんですよ。練習試合が終わった次の日、俺ら控え組は試合をやってないのに軽い回復トレーニングしかメニューがなくって。だから俺はフィジコに『今日終わったらトレーニングやってくれ』って頼んで。そうしたら俺に連鎖してみんながやるようになっちゃって、それは逆にやめてくれって思いましたけど(笑)、ひとりでやりたかったんで。そういうアピールも大事やと思って俺はやっていたので。でも、そういう中でも絶対、俺が一番(練習の)量はやってました」

――ただ、10試合連続で出場がなくて、日本代表からも外れましたよね。

「あのままガンバで、Jリーグの環境で試合に出続けて、それで代表に選ばれ続けても、なんの変化もなかったと思うんです。キヨ(清武弘嗣)君だったり、(原口)元気君だったり、(香川)真司君、(本田)圭佑君とか、海外でやっている選手には、あのままJでやっていても及ばないと思ったので。だからこそ海外に出てきたというのがあって。代表からは外されてしまいましたけど、でもここからアウクスブルクで試合に出られるようになって、試合で活躍するようになったときのことを考えると、ガンバで出続けるより自分にとっては確実にプラスだと思いますよ」

――ガンバで出続けるよりも、苦しんだとしても?

「今は苦しんでいるかもしれませんけど、こっちに出てきて本当によかったなと、こういう状況でも思う。やっぱりレベルが全然違う。普段行なわれている競争から、レベルが全然違いますから」

――それでも前半戦、これだけ苦しむとは予想外だったのでは?

「予想外でしたね。試合こなしながら、ブンデスリーガのスピードにも慣れて......という感じを予想していました。慣れていく中で、自分の表現したいプレーをやっていくんだろうなと思っていたので」

――その苦しみを後半戦につなげていきたいですね。

「まず冬季キャンプから勝負です。たぶんほかの選手はベッタリ休んでくるでしょうからね。そこも少し......、少しというかかなりチャンスでしょうね。貪欲にポジションを奪っていかないと、後半戦もこんなような状況じゃ話にならない。下積みというか、積み上げ作業は半年で十分。やってきたことを試合にぶつける後半戦にしたいなと思います。精神的な部分とか、逆境に立たされたときもやり続けるというところは変わらないですけど」

――過去に比べると、一番強い自分になっているような気がします。

「そうなんです。だからウィンターブレイクがほしくないんですよね。今までなら『やっと日本に帰れる』とか思っていたんですけど、今はそんなこと思いたくもない。だからぶっちゃけ、オフはいらない。このままやっといてほしい」

――3月には日本代表戦があります。代表復帰も目指したいですね?

「とにかく成長を続けていきたい。試合に出てないと代表には入れないと思うので。ブンデスリーガで試合に出れば成長はできると思う。成長して初めて日本代表に必要な選手になれるということだと思うので。そのために日本を出てきたというのはあります。本当にそこにこだわってやっていきたいです」

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko