『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』(4月25日より渋谷アップリンクにて公開)

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『妖怪ウォッチ』や『アイカツ』といったこども向け人気キャラクターが登場するテレビアニメの劇場版ではない、オリジナルの映画を親子で楽しみたい! でも、そういう親子で楽しめる映画が見当たらない! 休日にいざ、映画館にいってみようにも、公開されているのは若者向けばかり……。こんな風に頭を悩ませている小さな子を持つ親御さんはけっこう多いのではないだろうか? 

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実際、親子一緒に楽しめる映画が多いとは言い難い。ただ、上映情報だけでは判断できない、意外と見落としている子供向け映画がけっこうあるのも事実。そんな親子で見てほしい映画を一挙に紹介します!

■上映環境・作品内容ともに子どもは大喜び、親は安心の『マジックドルフィン』

まず、未就学児の映画館デビューにうってつけの映画が『マジックドルフィン 夢をあきらめないイルカたちの物語』(2月14日より全国のイオンシネマにて公開)。こちらは大手シネコンのイオンシネマが手掛ける「こども映画館」シリーズの最新作になる。実は本シリーズ、日本初の試みといっていいかもしれない、観る環境から作品内容まで子どもの目線に立った映画コンテンツだ。

「大好きなキャラクターの映画にも関わらず、映画館の暗さや音の大きさにお子さんがびっくりして泣き止まず、やむにやまれず劇場を後にしてしまうお母さんやお父さんを数多くみてきました。劇場に携わる人間としてはこれほど悲しいことはない。ですから、ずっと考えてきました。“どうにか子どもが安心して映画が楽しめる環境を作ることはできないか”と。その結果たどりついたのが「こども映画館」シリーズ。ある意味、映画館の常識のすべて覆す試みになってしまいました(苦笑)」

とイオンエンターテイメント株式会社プロモーション本部本部長の小金沢剛康さんが語るように、本シリーズでまず何より親として心強いのが上映環境にほかならない。劇場といえば真っ暗な中が常識。でも、本シリーズではこどもが暗がりに恐怖を覚えないよう劇場内は通常より明るめ。音量も驚かないよう大音量にせず、こどもの体調を考えて場内の室温設定も劇場スタッフがこまめに調整している。“小さな子を持つ親同士、多少騒いでしまうのはお互いさま”という親子が気兼ねなく楽しめる上映スタイルを目指してもいる。しかも、2歳以上中学生以下の子どもは鑑賞料がワンコインの500円と財布にも優しい。

一方、作品もよく考えられていて、通常の映画よりも短めの45分。未就学児の集中力は15分程度というリサーチを基に、作品には15分ごとにクイズコーナーが盛り込む工夫がなされている。内容も、水族館やサファリパークなど、こどもたちの知的好奇心を刺激する場所が舞台。その世界を冒険して周るような構成で、親と子が作品を観ながら周りに気兼ねしないで話し合い、考え、思い切り驚き、楽しむ、新しい体感型のエンターテイメント映画になっている。

今回の『マジック・ドルフィン〜夢をあきらめないイルカたちの物語〜』は、八景島シーパラダイスを舞台にした、日本初のショーにチャレンジするちょっと臆病なイルカの成長物語。こどもは海で生きる動物たちに興味深々、大人は大人でイルカの目線で撮られた驚きの映像に魅入るはずだ。

「映画館という異空間で多くの人と同じ時間、同じ空気、同じ感動を分かち合うのはこどもにとってかけがえのない体験。それはいつの時代も変わらないのではないでしょうか。「こども映画」シリーズが小さなお子さんの映画館デビューのきっかけになってくれたらこれほどうれしいことはないですね。「こども映画館」シリーズをこどもの時見た人が大人になって、今度は自分の子供を連れて「こども映画館」シリーズの作品を観にきてくださる。そういう末永いシリーズに成長できるよう創意工夫した作品をこれからも発表していきたい」と小金沢さんは語る。

■みんなで作る、みんなの学校がここにある『みんなの学校』

子どもにとって社会の入り口であり、重要な場所である“学校”。でも、イジメ、不登校、お受験など、学校に対するイメージはどちらかというとネガティブなものになっているのではないだろうか? 小学校入学でさえ、不安を抱く親も多いときく。その中で、ドキュメンタリー映画『みんなの学校』(2月21日よりユーロスペースにて公開)は、学校の本来の姿に気づかせてくれる1本といっていいかもしれない。

舞台は「大阪市立南住吉大空小学校」。2006年、大阪市で開校した同校は、地域にあるごく普通の公立小学校だ。ただ、その内実はちょっと違う。“すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる”という理念のもと、同校が目指すのは“不登校ゼロ”。児童や教職員だけではなく、保護者や地域住民もいっしょになって、みんなが通い続けることができる学校を作り上げている。

そんな同校にはいつからか他の学校では手をつけられないと厄介払いされた生徒たちがしばしば転校してくるようになった。しかし、同校ではそんな生徒も分け隔てない。特別支援教育の対象となる発達障害のある子も、うまく気持ちを抑制できない子も、みんなが同じ教室に集い、ともに学ぶのだ。

作品は、そんな大空小学校に密着。2012年春から約1年、学校の日常の喜怒哀楽を丹念に映し出す。そこからは実に多くのことが見えてくるに違いない。

手掛けた真鍋俊永監督は「木村校長は“すべての子どもの学習権を保障する、不登校ゼロなんてほんとうは当たり前のこと。うちは、それを学校の理念や目標にする最低の学校だ(苦笑)”と言います。大空小学校はどこにでもある地元の子どもなら誰でも通える公立小学校なのに“当たり前”ではなく、どこか特化して見えてしまう。そこに現在の学校の現実があるのかもしれません。私自身、取材をしながら多くの問いを投げかけられる時間になりました」と明かす。

たとえば同校には、たったひとつの約束がある。それは“自分がされていやなことは人にしない 言わない”ということ。唯一の校則といえるこのルールを破った子どもたちは、やり直すために校長室へやってくる。ただ、この場は、ともするとなりがちな大人が頭ごなしに反省を促す場ではない。たとえばケンカをした子どもに対し、木村泰子校長はそうなった理由や、そのときにどんな気持ちになったかを徹底的に考えさせる。この過程を経たとき、子どもたちははじめて納得する自分の答えを導き出す。それは少し大人になった証拠なのかもしれない。

「子を持つ親である自分自身も、ついついめんどうで怒る理由を説明しないまま子どもをしかりつけてしまいがち。でも、それでは根本の解決にはなっていないんじゃないか? そもそもめんどうというのは大人の事情であって手抜きともいえる。すごく反省しました(苦笑)」と真鍋監督は語る。

子どもたちにとって何が大切なのか? ほんとうの意味での、大人の、地域の、学校の役割とは何か? 親世代はいろいろと考えることが多いだろう。また、学力テストの成績だけでは決して計ることのできない、どんな子どもにもある豊かな才能やすばらしい能力を映画に登場する子どもたちの姿に気づくに違いない。一方、本作が映し出すケンカをしたり、仲直りをしたり、勉強をしながらともに喜んだり泣いたりする学校での時間は、子どもたちも自分に身を寄せて一喜一憂しながら時を共有するはずだ。

真鍋監督は「大空小学校の子どもたちひとりひとりがどう変わり、どう羽ばたいていくのかをぜひみてほしい。また、当事者の小学生がこの作品をみてくれたとき、どんなことを感じてもらえるのか? いまからとても楽しみにしています」とメッセージを送る。

■子どもが子どもの心の琴線に触れる『人の望みの喜びよ』

親子でじっくりと味わえるドラマとしておすすめしたいのが『人の望みの喜びよ』(3月28日よりテアトル新宿にてモーニング&レイト公開)だ。12歳の姉と5歳の弟を主軸に据えた本作は、大人よりもむしろ未就学児から小学生の子どもたちの心の琴線に触れるといってもいいかもしれない。

「中学のときに阪神大震災を経験してから、ずっと何かできたのではないか、なんで当時こういうことに気づかなかったのだろう?といった何もアクションを起こせなかった自分に後ろめたさと憤りを感じていました。それで長編デビュー作を発表しようとなったとき、こう思いました。“自分としては避けて通れない“震災”ときちんと向き合おう”と。これが作品の出発点です」

と手掛けた杉田真一監督が語るように本作は震災後の物語。ある災害によって両親を失った12歳の少女・春奈の姿を通し、不意の出来事に直面した人間の感情が丹念に描き出される。経験したことのない、いや経験したくもなかった悲しみ、停止したような時間、どんどん置き去りにされていく心。そういった春奈の胸の内に去来する想いが作品からは痛いほど伝わってくる。

「同じ家にいた事実から両親を助けられなかったという罪悪感に苛まれる春奈は、大きな十字架を背負ってしまう。でも、親族に引き取られると彼女否応なく、新しい町で、新しい家で、新しい家族と、新しい生活を始め、新しい学校に通い出すことになる。気持ちがなにも整理できないままなのに。そのときの彼女の心に思いを馳せて、なにかを感じてもらえたらうれしいです」と杉田監督は語る。

このように子どもの心に寄り添ったドラマは、昨年のベルリン国際映画祭のジェネレーション部門でスペシャルメンションを獲得。11〜14歳の子どもで構成された審査員から「物語にどんどん引き込まれ、感動とともに涙が溢れた」と絶賛された。また、もうひとつ大きなポイントとしてあげたいのが、作品の根底に流れる“命”と言うテーマ。大切な人を失うということについて子どもが考えをめぐらすドラマは、生と死について深く考えさせる。核家族化が進む現在の日本では死が遠ざけられていると言われるが、親子で語れる機会になるかもしれない。

最後に杉田監督は「あえて場所や災害を特定しなかったのは、今後もどこかで誰にでも起こりうることとして受けとめてもらいたいとの思いから。よくあるファミリームービーではないと思うのですが(笑)、ぜひ親子で見ていただいて、いろいろなことを語り合ってもらえたらうれしいです」と言葉を寄せる。

■ティーン世代の胸に響くに違いない『幕が上がる』『花とアリス殺人事件』

早春の注目作として話題を集めている『幕が上がる』(2月28日より全国公開)と『花とアリス殺人事件』(2月20日より新宿バルト9ほか全国公開)は、小学校の高学年以上のティーンにぴったりの作品といっていい。

ももいろクローバーZの5人のメンバーが主演を務める『幕が上がる』は、世界的劇作家、平田オリザが2012年に発表した同名小説の映画化。小さな地方都市の高校を舞台に、弱小演劇部のメンバーが全国大会を目指す姿が描かれる。ときに歩調が乱れながらも、最後は目標に向かって一致団結して舞台に打ち込む女子高生たちの姿はまばゆいばかり。すばらしい師との出会い、ぶつかって初めて生まれる友情、子供と大人の狭間への戸惑いと不安といった思春期に直面する普遍的な局面を収めたドラマは、きっといままさに学園生活を送る学生たちの心に響くはずだ。親世代は自分の苦く蒼い青春時代の記憶がよみがえるだろう。

一方、岩井俊二監督初の長編アニメーションとなる『花とアリス殺人事件』は、いまも若い世代に支持される2004年の『花とアリス』の前日譚。石ノ森学園中学校へと転校してきた有栖川徹子ことアリスと、家にひきこもっていた同級生の荒井花の出会い描かれる。

ウソかほんとうか定かでない噂話、それに動揺するクラスメイト、クラス内に置いての人間関係のパワーバランスなど、大人になるとどうでもいいことながら高校生にとってはすべてといっていい学園の時間を主軸にしたドラマは、ティーン世代がいままさに学校でリアルに体感しているものかもしれない。

また、のちに無二の親友となる花とアリスのファースト・コンタクトから時間を共有するまでの過程は、いつ、どこであるかわからない出会いのすばらしさを教えてくれる。それから、約10年前、『花とアリス』をリアルタイムでみた、いまはもしかしたら子をもつ親になった人たちは、あの花とアリスと再会を果たすことになる。そのとき、それぞれの心に何かが甦ることだろう。

■子どもの未来のために知っておきたい『小さき声のカノン――選択する人々』『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』

最後に親子ではなく、親として子どものために見ておきたい映画として『小さき声のカノン――選択する人々』(3月7日よりシアター・イメージフォーラムにて公開)『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』(4月25日より渋谷アップリンクにて公開)に触れたい。この2つの作品は、子を持つ親として知っておきたいことが語られている。

『ミツバチの羽音と地球の回転』など“核”をめぐるドキュメンタリーを発表してきた鎌仲ひとみ監督による『小さき声のカノン――選択する人々』が焦点を当てるのは、原発事故が起きた福島とチェルノブイリ。今後、日本でも起こりうる被爆の影響を想定して、チェルノブイリ原発事故で多大な被害を受けたベラルーシで、その後、どんなことが住人の体に起きたのか、それに人々はどう対処していったかを丹念にリポートする。

方や福島でとりわけ注視をして伝えるのが、現地で生きるお母さんたちの声。黙っていてはすべてないものにされてしまう現状に、立ち上がるしかなかった彼女たちの声にならない声は重く受け止めなくてはならない。大手メディアでは伝えてくれない、いまの福島で生きる子をもつ親の本心がここには記されている。

一方、タイトルからも察しがつくように『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』は、いま日本でもひじょうに関心度の高い “食の安全”について警鐘を鳴らすドキュメント。3人の子の父となって“食”について考えるようになったジュレミー・セイファート監督が、アメリカでは表示義務さえないため、その存在自体が知られていない“遺伝子組み換え食品=GMO”について鋭く検証していく。

遺伝子組み換え食品をめぐる食産業の次々と明るみになる実態には唖然! 親としては頭の中に入れておきたい“食の安全”についての知っておきたい情報がここにはある。