大潤発(RT−Mart)の中国本土での店舗数は143店舗(2010年12月31日時点)あり、北は黒龍江省から南は海南省、東は江蘇省を中心に沿岸部全域から西は甘粛省といった華東・華北・東北・華南・華中の5地区中国全土で2・3級都市を中心に店舗を展開している。写真は、湖南省長沙市の大潤発。

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大潤発(RT−Mart)の成長に見る中国小売チェーンのあり方 第2回

2.中国市場を熟知した戦略

 大潤発(RT−Mart)の中国本土での店舗数は143店舗(2010年12月31日時点)あり、北は黒龍江省から南は海南省、東は江蘇省を中心に沿岸部全域から西は甘粛省といった華東・華北・東北・華南・華中の5地区中国全土で2・3級都市を中心に店舗を展開している。

 2010年には13省市で22の新店を出店し、また、Kantar Worldpanel Chinaが発表した2010年年次報告書によれば大潤発の中国全国市場シェアは6.1%に達している。写真は、湖南省長沙市の大潤発。

■市場のボリュームゾーンで戦う

 日系企業の中国参入の多くのケースは、そのコスト構造や商品/サービスの品質、販売/マーケティングへの投下資本規模の点からハイエンドに近い市場及び沿海部大都市への参入が多い。結果として、市場のボリュームゾーン向けの商品/サービスではなく、一部の限られたハイエンド層に向けた訴求を行うことになっている。例外的に三得利ピ酒(SUNTORY)のように、ボリュームゾーンに合わせたスペック及び価格訴求を最初から行い、ローエンド〜ミドル市場での地位確立に成功したケースはあるが、日系企業の中では非常に珍しいケースであると言える。

 大潤発の成長要因の一つに、ボリュームゾーンにポジショニングを取っている点が挙げられる。大潤発は、前述のように2・3級都市を中心に出店を行っており、1人当たりGDPが1万ドルを超える上海・北京を中心に事業展開を行う他の外資系企業とはポジショニングが明確に異なる。例えば上海にある大潤発の店舗も全て中心街からは外れた郊外にあり、中心街にある家楽福とのポジショニングの違いは明白である。

■価格イメージによる一点突破

 大潤発は売り場の多くのカテゴリーにおいてローエンド価格帯のMD(マーチャンダイジング)を行っている。家楽福は自社と大潤発の価格帯の違いは知っているものの、ポジショニング/コスト構造/出店立地(=家賃・人件費)/サプライヤーとの関係/人材流出などがネックとなり、大潤発に追随できないどころか、中小都市での閉店が相次ぐなど、近年は苦戦が目立っている。

 数年前に家楽福がスーパーマーケット及びハイパーマーケットにおける選定要因(MD/価格イメージ/プロモーションイメージ/商品品質/流行/サービスの質/売り場環境)に関する調査を上海で行った。その結果、大潤発が価格イメージでトップとなった以外は、他の指標は全て家楽福がトップとなった。大半の顧客にとっては、大潤発の価格は一般的に家楽福よりも低く認識されている。価格イメージの良さ(=安さ)は、現在の中国の小売業にとっては重要な集客要因となっている。価格イメージ以外の要素で大潤発より優れている家楽福が大潤発に売上高で抜かれた点を見ても、いかに価格イメージの影響が集客に影響を与えるのかが推察される。

 通常の購買行動は、買回り品(=耐久財)と最寄品(=消費財)によって異なる。大潤発や家楽福の扱う商材の多くは最寄品であり、消費者にとってのKBF(購買意思決定要因)は、価格/MD/売り場環境が上位に来る。大潤発は価格において家楽福などの外資系ハイパーマーケットと差別化を図り、MD/売り場環境において中国スーパーマーケットと差別化を図ることで独自のポジションを構築している。

 大潤発のポジショニングの特徴は、大資本の欧米系小売業の集中する大都市や人口集積立地を避け、1人当たりGDP3000ドルという国際社会の中で決して豊かとは言えない中国のボリュームゾーンを狙った価格戦略と出店戦略であり、中国市場を十分にマーケティングした成果と言える。(執筆者:金海裕市 析道(上海)管理諮詢有限公司(英文:Corporate Directions (Shanghai), Inc・董事 常務副総経理)