[連載| ワールドサッカーキング 11.08.04(No.185掲載]

華麗なテクニックや緩急ある駆け引きなどサイドの攻防はサッカーの面白さが凝縮されている。レアル・マドリーで躍動するアルゼンチンの“魔術師”、アンヘル・ディ・マリアがウイングとして活躍するためのノウハウを伝授する。
インタビュー・文=サイモン・タルボット
攻撃──ウイングには発想力が求められる



サイドを攻略してチームの決定機を生み出すためには、発想力が大事だ。“ゴール前にバスを停める”ような守備一辺倒のチームが相手の時は、特にこの力が必要になる。僕が心掛けているのは、ドリブルのタイミングをワンテンポ遅らせたり、利き足とは逆の右足でクロスを上げたり、とにかく相手の意表を突くこと。守備を固めた相手にはありきたりなプレーだけでは成功しないからね。
でも、勘違いしてほしくないのは、独り善がりなプレーとクリエイティブなプレーは全く違うってことだ。むやみに突破を図ってボールを失えば相手の思うつぼになってしまう。集中力を切らさず冷静にボールを回し続けて守備網にズレが生じるのを待つ。その上で自分が仕掛けるべきタイミングを見極めることが重要なんだ。
判断力──味方が作ったスペースを見逃すな



ウイングはサイドが主戦場だけど、常にスペースを意識しながらプレーしなければならない。サイドに張っていても、味方の動きに連動してインサイドのスペースに入り込む動きが求められるんだ。R・マドリーでは、前線の4人がポジションチェンジしたり、スペースに走り込む動きとタイミングはすべて自己判断に任されている。僕やC・ロナウド、ベンゼマ、イグアインの誰がどのポジションで出場しようと、モウリーニョ監督は僕らに同じことを求める。相手のバイタルエリアに少しでもスペースが生まれたら、アグレッシブに仕掛けてチャンスをものにしろってね。

守備──体を張って守備に貢献する

サイドアタッカーとして一段レベルアップしたければ、「ウイングは守備をしなくていい」という考え方を捨てるべきだ。僕はベンフィカ時代、ほとんど守備をしなかったけど、R・マドリーへの移籍を機に自分のプレースタイルを見直した。モウリーニョの下でプレーしたいなら、体を張って守備に貢献することが必要だと分かっていたからね。おかげで1年目でレギュラーになれたし、選手としても成長することができた。ただし、気を付けなければならないのは、攻撃する余力を残しながら守備をこなす必要があるということ。モウリーニョはボールを持っていない時もアグレッシブさを求めるけど、同時に攻守のペースを考えながらプレーすることも求めている。つまり、サイドを攻略して決定機を作るというウイング本来の役割を忘れてはならないということさ。
本分──相手を抜き去ることだけがすべてではない



相手を2、3人ドリブルでかわしたことで満足する選手もいると思うけど、ウイングの仕事は味方のチャンスを作り出すことだということを肝に銘じてほしい。味方のためにスペースを生み出したり、チームのFWが相手GKと一対一になるようなラストパスを送ったりすることが、僕らの本当の仕事なのさ。確かにスピードがあれば相手DFを抜き去ることはできるだろう。だけど、最高のウイングとは、 決定機を何度も作り出すウイングのことなんだ。
心構え──削られることも覚悟する

攻撃の最終局面を演出するウイングにとって、ファウルを受けることは宿命だと覚悟すべきだ。抜かれたら決定的なピンチになる場面でマーカーがファウルをしてでも止めにくることは当然のことと考えなければならない。昨シーズン、僕はドリブルをしている時、何度も相手に削られてイライラすることが多かった。でも、ドリブルで相手をかわすためには、蹴られることに耐えることも必要だと気付かされた。でも、全く無意味で、しかもケガにつながりそうなファウルは、やはり受け入れ難いね。
メンタル──向上心を忘れないこと



現状に満足せずどん欲に技術や戦術を習得しようとする姿勢は、成長するために絶対必要なこと。僕は学ぶのに遅すぎることなんてないと常に考えている。年齢を重ねれば重ねるほどサッカーが見えてくるんだ。理解力が増すからね。知らないことを学ぶチャンスはたくさんある。僕もまだ進化し続けているんだ。たとえば、今はポジション取りを学んでいる。プレスを掛ける時、引いて守る時、ピッチを広く使う時、そして狭く使う時など、様々な状況下でのポジショニングさ。ウイングだからといって、相手をドリブルで抜くことだけで満足していられない。すべての面でチームに貢献できるようにならないとね。

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