やっぱり気になる「認知症は遺伝する」のか…最先端の研究者らが明かす本当のトコロ

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認知症の「なりやすさ」は遺伝する

認知症そのものが遺伝することは稀ですが、なりやすい因子は親から受け継ぐことがあります」(日本認知症学会専門医で天沼きたがわ内科院長の北川尚之氏)

65歳以上のうち、5人に1人が罹ると言われている認知症。その種類はいくつかあるが、最も多いのがアルツハイマー型認知症で、全体の約7割を占める。その中に、遺伝が深く関わるケースが存在するという。

北川氏が解説する。

「遺伝性のアルツハイマー病として知られるのは、『家族性アルツハイマー』と呼ばれるタイプです。アミロイドβというタンパク質の産生に関わるAPP・PSEN1・PSEN2という3つの遺伝子のいずれかに異常があると、ほぼ100%の確率でアルツハイマー型認知症を発症します。

遺伝子異常をもっていても発症までには時間がかかりますが、それでも40〜50代くらいの早い時期に発症するのが特徴です」

親のどちらかがこの遺伝子異常をもっていた場合、子に受け継がれる確率は2分の1だ。ただし家族性アルツハイマーは、アルツハイマー型認知症患者全体の1%以下にすぎない。つまり、冒頭で北川氏が語ったように「遺伝することは稀」というわけだ。

発症確率に大きく関わる「APOE遺伝子

「残りの99%以上は『孤発性アルツハイマー』と呼ばれ、発症を直接引き起こす遺伝子はまだ見つかっていません。ただし、アルツハイマーになりやすい因子が親から遺伝することはあります。

その代表がAPOE(アポリポたんぱく質E)という遺伝子で、この遺伝子の型によって、発症する確率が大きく変わってくるのです」(北川氏)

そもそも遺伝子とは、二重らせん構造をもつDNAに刻まれた「体の設計図」だ。各遺伝子について、私たちは父親と母親からそれぞれ1つずつ受け継ぎ、2つペアでもつことになる。APOE遺伝子も同様で、E2・E3・E4の各タイプが存在し、父親と母親それぞれから受け継いだ組み合わせによって、アルツハイマーの発症リスクが大きく異なってくる(下図)。

北川氏が続ける。

「日本人の約4分の3はE3を2つもつ組み合わせで、これが標準的なリスクです。問題はE4で、1つもつ人は全体の約19%ほどいて、発症リスクは3〜4倍に上がります。さらにE4を2つもつ人は全体の約2%と少ないのですが、その場合の発症リスクは標準の13倍にのぼります」

E4を2つもつ場合、発症時期が早くなる傾向がある。ただし、発症年齢には生活習慣などの複数の因子が関係していることにも注意してほしい。

APOE遺伝子の検査方法

気になるのは、これらの遺伝子を実際に調べる方法だ。

APOEの検査は精度が非常に高く、一部の医療機関で受けられる。採血で行い、費用は約1万5000〜2万円、結果は2〜3週間でわかる。

一方、認知症に関わる体質を遺伝子から調べる方法もある。ゲノム解析サービスを手がける株式会社Zeneの代表・井上昌洋氏が解説する。

「APOEのリスクが低くても、生活習慣や心疾患といった別の要因で認知症になる可能性はあります。そうした遺伝的リスクを総合的に評価できる手法も精度が上がってきました。PRS(ポリジェニックリスクスコア)と呼ばれるもので、数万から数百万ヵ所にのぼる遺伝子の個人差を合算し、認知症のなりやすさを幅広く見ることができます。唾液を採取するだけで検査ができ、費用は約2万円。結果が出るまでは2ヵ月ほどかかります」

遺伝的なリスクは自分の力で変えることはできないが、早めに知ることで生活様式は変えていける。

認知症の発症リスクを下げるために、今日からできることはたくさんある。本特集で得た知識をもとに、脳の老化と闘っていこう。

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「週刊現代」2026年6月22日号より

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