「コクヨ」障害者の視点で商品開発 ストレス軽減を目指すオフィスづくりに密着:ガイアの夜明け

5月29日(金)に放送した「ガイアの夜明け」のテーマは「コクヨが挑む“困りごと”」。
【動画】「コクヨ」障害者の視点で商品開発 ストレス軽減を目指すオフィスづくりに密着
いま、これまでの商品開発ではターゲットとされてこなかった身体の不自由な高齢者や障害者などを企画開発段階から巻きこむことで、誰もが使いやすい商品を生み出す「インクルーシブデザイン」という手法が注目されている。
その「インクルーシブデザイン」に大きく舵を切ろうとしていたのが、文房具やオフィス家具事業を手がける老舗企業「コクヨ」だ。
“裏表のない衣類”が話題に!ファッション業界を変えるインクルーシブデザイン

アパレルや雑貨を中心に、オリジナルグッズを販売している通販会社「フェリシモ」(神戸市)。いま注目されているシリーズが、裏表やかかとがなく、どの方向からでも履ける靴下や、前後・裏表がないため、着るときの手間が省けるTシャツなど。これらは「インクルーシブデザイン」と呼ばれる手法で作られ、身体が不自由な高齢者など、誰もが使いやすいところが特徴だ。
インクルーシブデザインは、障害者や高齢者などの“困りごと”から生まれ、それを解決することで、誰にとっても使いやすい形になる。
「一番困っている人が助かる機能で、そこまで困ってない人の生活が楽になったり、ブラッシュアップできたりする。『便利』『買ってみたい』と思ってもらうことで、お客の層が広がる。そこにビジネスチャンスがある」(フェリシモ 筧 麻子さん)。
いま、インクルーシブデザインに注目する企業が増えている。
“困りごと”からヒット商品を生む!コクヨの新戦略 その舞台裏に密着

インクルーシブデザインに社運を賭けるのが、文房具のほかオフィス用品も手掛ける「コクヨ」(大阪市 売上高:3598億円)。コクヨは、「2030年までに新商品の50%以上をインクルーシブデザインにする」という前代未聞の目標を掲げた。
「お客が必要としているけど、まだ言葉になっていない、小さいニーズしかない。これをどうやって発見して広げていくか。インクルーシブデザインに取り組めば取り組むほど、全ての商品開発やデザインのプロセスが、加速度的により良くなっていく」(コクヨ 黒田英邦社長)。

コクヨが生んだインクルーシブデザインで、特に話題になったのが、紙や湿布をさくさく切るハサミ「サクサ」だ。左利きだと切りにくい…その困りごとから、コクヨは誰もが切りやすいハサミを開発。「サクサ」は、2025年「日本文具大賞」でグランプリを受賞した。

青色の暗記シートは「赤だと見にくい」という色覚障害者の意見を取り入れ、開発。
「赤よりも集中しやすい」と学生の間で人気に。

コクヨグループの社員で、手足に障害のある近藤哲史さんが開発に関わり、商品化された一つが「カードホルダー」だ。ホルダーの裏側にバンドが付いており、物がつかみづらい近藤さん自身の困りごとが生かされている。
大きな荷物を運んでいる時もいちいち下ろさずに済むと、障害のない人にも好評だ。

近藤さん、普段はデータ入力などの仕事をしているが、その合間に、障害者の視点で商品開発のアドバイスをしている。
商品化に向けて改良を重ねたのが「パソコンバッグ」。以前のデザインは、指の力が弱く細かい動きが難しい近藤さんにとって「ポケットが開けづらい」という困りごとがあった。
大きな改良は2カ所で、ジッパーは指を引っかけるだけでいいリングに。開けやすいように、ポケットの角もなくした。近藤さんは「この特性で生まれてきて良かったと初めて感じた。自分の特性が生かされている。生きてきて良かった」と話す。

コクヨは、主力のオフィス事業でもインクルーシブデザインを活用しようと動きだしていた。その開発拠点で陣頭指揮を執るのが、ものづくり開発本部の木下洋二郎さん。長年、オフィス家具などをデザインしてきたエキスパートだ。
木下さんが手掛けたオフィスチェア「イングクラウド」は、体の動きに合わせて座面が動くことで姿勢が自由になり、腰への負担が減る。
腰痛に悩んでいた木下さんは自身の困りごとから、誰にとっても快適なイスを完成させた。
「椅子づくりをやっていく中でインクルーシブデザインに出合い、インクルードされづらい状況にいる人たちに共感できるところがあった。こういう人たちのためにものを作れば、自分もハッピー。これが、ものづくりの本質」。

2025年8月、木下さんたちが開発していたのが、斜めになっているホワイトボードだ。
「既存のホワイトボードは垂直で、下まで壁があるものが一般的。そうすると車椅子や椅子に座っている人はホワイトボードに近づきにくいという難しさがあった。下の部分を浮かせて、盤面をせり出すことで、下肢障害のある人でも自由に書ける」(ものづくり開発本部 香取 岳さん)。
このホワイトボードには別のメリットもあるという。
障害の有無を問わず、誰もが使いやすいホワイトボードは出来上がるのか――。
オフィスのストレスを減らせ!精神障害者の視点で商品開発

インクルーシブデザインの新たな鍵になると期待されているのが、精神障害や発達障害のある人たち。コクヨで働く障害者の中には、そうした社員が多くいる。
精神障害のある社員は、自身が職場で感じるストレスや困りごとが、役に立つかもしれないと感じていた。
「精神障害者がストレスとかつらいところを敏感に感じ取る。それは健常者にとっても気づきになる。“気づいていないところでこんなところにストレスを感じていたんだ”と。我々は、それをクリアにして解決していくヒントになれるのではないか」。

うつなどの精神疾患がある患者は急増し、2002年からの20年間で約2.3倍に(出所:厚生労働省)。予備軍も増え続ける中、社員の心を守る職場づくりが求められている。

オフィスづくりが主力事業のコクヨは、今年5月、90年ぶりに本社を移転することに。
新本社にインクルーシブデザインを取り入れることになり、普段はオフィスの設計を担当するスペースソリューション本部・卜部奈緒さんがその責任者に抜擢され、新オフィスの空間デザインを手がけることになった。
2025年6月、本社移転まで10カ月。卜部さんは障害のある社員を集め、精神障害や発達障害のある敏感な人たちの視点で今のオフィスを見てもらう。障害のない人には気づきにくい“ストレスのタネ”を探そうというのだ。

しかし、「間仕切りのある個室ブースは居心地がいいゆえに、何か質問をするとき、ここから出るのが億劫になってしまう」「開放的な空間が苦手なため、作業中に目の前で動くものがあると気になってしまう」「後ろで人が歩くと気になる。往来に背中を向ける方が怖い」と、社員がオフィスで感じるストレスは千差万別。
卜部さんは「意見をたくさんもらったけれど、それをどう解決していくか、すごく難しい」と悩む。
ストレスのないオフィスづくり…どこをどうすればいいのか――。
番組は卜部さんの奮闘に密着。コクヨがつくった、誰もが働きやすい新本社のオフィスも紹介する。
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