吉田鋼太郎が語る″振り切り″の芝居「爪痕を残すことを常に意識してきました」
根拠のない「いつか売れる」
「このスーツ、尊敬する方のお勧めでオーダーメイドしたんです。その方のアスコットタイ姿があまりに素敵でお尋ねしたところ『僕の知っているテーラーがあるので、一緒に洋服を作りましょう』となり、ご一緒させていただきました」
本誌記者が「素敵なスーツですね」と声をかけると、上質なダークブラウンの細身スーツに身を包んだ俳優の吉田鋼太郎(67)は無邪気に笑った。
吉田の“尊敬する方”とはいったい誰なのか……。それは6月19日公開の映画『免許返納⁉』で主演を務める銀幕スター・舘ひろし(76)だ。
本作は’94年公開の『免許がない!』から約30年後を描き、舘演じる大物俳優・南条弘が再び“免許”を巡ってドタバタ劇を繰り広げていく。吉田は南条が所属する芸能プロダクションの社長役を務め、物語の要所で重厚な存在感を見せる。初共演となった舘との現場は、「緊張で役作りどころではなかった」と苦笑した。
「大スターである舘さんとどれぐらいの距離感を保ち、どういう芝居をして絡んでいけばいいのか。そればかり考えていましたね」
吉田は上智大学在学中にシェイクスピア研究会の公演で初舞台を踏んで以来、長らく舞台を主戦場としてキャリアを積んできた。蜷川幸雄演出作品の常連として研鑽を重ね、遅咲きながら50代に入ってから『半沢直樹』(’13年・TBS系)や『おっさんずラブ』(’16年・テレビ朝日系)などの話題作で注目を集めた。
「演劇出身の自分にとって、舘さんとの共演は“異種格闘技”でした。同じ芝居でもジャンルが違うんですよね。生粋の映画スターと共演させていただくのは今回が初めてで、それは凄く新鮮だったし、怯えました(笑)」
“異種”との共演に身構えていた吉田だったが、緊張はすぐに解けていった。
「最初の撮影が肝心だと思い、心して挑みました。それが、ロケバスの中にいる舘さんが外に出ていこうとするのを引きずり戻すシーンでした。正直、『本当にやっていいのかな』という戸惑いがあって、少し力をセーブしたんです。そしたら『もっと本気でやっていいですよ』とおっしゃってくださって。お互い遠慮せずにやろうってことで意思が通じ合ったんです。そこからは楽になりましたね」
高校生のときに観劇したシェイクスピア『十二夜』の衝撃が、吉田を役者という道へと突き動かした。舞台経験を経て、本格的な映像でのブレイクは50代。“下積み”が長すぎたように思えるが……。
「世間的にはそうなのかもしれないですけど、自分では下積みだと思ったことはないんですよ。演劇をやる人は、もともと演劇だけで食べていけるとは思ってないですから、アルバイトをしたりして。でも僕の場合は違った。何の根拠もないのに“自分はいつか売れる”って思っていたんです(笑)。基本的に前向きじゃないとやっていられないですよ、芝居は」
自分はいつか売れる――その一途な願いは現実となり、いまや吉田は映像界に欠かせない存在となった。
5月14日発売の『FRIDAY5月29日号』と有料版『FRIDAY GOLD』では、芝居の原点や大ヒット作の舞台裏などを赤裸々に語っている。
