日本でも広まる「AI失業」だが、その現象を言葉通りに受け取ってはいけない(画像/Adobe Stock)

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シアトルにいると、ここ数年でテック業界のオフィスの景色がじわじわと変わってきたことを肌で感じます。知り合いの企業でも、あちこちの部署でポジションが静かに消え、優秀だった人たちが「効率化のため」という説明とともに姿を消していきました。表向きの理由は毎回ほとんど同じです。「AIへの投資を優先するため」と。
でも本当にそれだけなのか、とずっと引っかかっていました。

◆「AIのせい」という便利すぎる説明

2025年、アメリカの企業が発表した解雇のうち、AIを理由に挙げたものは約5万5000件にのぼりました。2年前と比べて12倍以上の数字です。報道だけ見ていれば、AIが着々と人間の仕事を奪っているかのように聞こえます。

ところが専門家たちの見立ては、かなり違います。採用調査会社Resume.orgの調査によれば、採用担当者の約60%が「AIや自動化を理由に挙げる方が、財務的な制約を正直に言うよりも受け入れられやすい」と考えているという結果が出ています。そして実際にAIが役割を「完全に」置き換えたと答えた企業は、わずか9%にとどまりました。

労働市場データ分析会社Revelio Labsのチーフエコノミスト、Lisa Simon氏はこう述べています。「企業は不要になった部門を整理したいだけです。今のところAIは、そのための隠れ蓑であり、言い訳になっています」。

これが「AIウォッシング」と呼ばれる現象です。グリーンウォッシング(環境への取り組みを実態以上に見せること)と同じ構造で、AI活用を実態以上に見せながら、本来は別の理由による人員整理に正当性を持たせる経営手法です。

◆Twitterが3年前に証明してしまった事実

AIウォッシングを理解するために、もっと直接的な例があります。2022年、イーロン・マスクによるTwitter買収直後の大量解雇です。

マスクはBBCのインタビューで、買収時に約8000人いた従業員を約1500人にまで削減したと述べました。約80%のカットです。当時、「これでプラットフォームが崩壊するのでは」という声が上がりました。コンテンツモデレーションチームが壊滅し、信頼安全チームは大幅縮小。あちこちで機能障害が起き、広告主も一時離れました。
ただ、プラットフォームとしてのTwitter(現X)は、今も稼働しています。

つまりこういうことです。「あれだけの人数がいなくても、会社は回った」。

もちろん品質の低下はあったでしょう。利用者数の減少を示すデータもあります。でもここで注目したいのは別のことです。8000人いた組織が1500人になっても、会社として消えなかった、という事実そのものです。

さらに興味深いのは、Twitterの共同創業者でかつてのCEOだったジャック・ドーシー自身が解雇された従業員に向けて謝罪し、「会社を大きくしすぎた」と認めたことです。つまり過剰な採用は、経営者も内心ではわかっていた、ということです。これはAIが登場するずっと前の話です。

◆Microsoftが静かに始めたこと

Microsoftが同社51年の歴史で初めて、社員に対して早期退職プログラムを提示しました。対象は米国従業員の約7%、約8750人。年齢と勤続年数の合計が70以上の社員に、自発的な退職を促す内容です。これに先立ち、Microsoftは2025年だけで約1万5000人を解雇し、2026年3月にはAI部門以外の採用を凍結しています。

一方でMicrosoftの直近の四半期売上は813億ドル。AIインフラへの年間投資は800億ドルを超えています。つまり赤字で困っているわけではまったくなく、十分な利益を上げながら、それでも人員を削っているのです。

テクノロジー専門メディアThe Next Webはこう評しました。「自発的退職プログラムは大量解雇より穏やかな手段に見えるが、同じ戦略的目的を果たす。Microsoftが十分に利益を上げていることを考えると、削減は『必要性』ではなく『選択』だ」と。