【清水 芽々】「子ども食堂なんてやるんじゃなかった…」閉店を余儀なくされた大人気店、ボランティアスタッフからの「予想外の不満」

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自宅を改装して「子ども食堂」をオープン

子どもやその保護者に無料、もしくは安価で食事を提供する「子ども食堂」。貧困家庭への支援だけでなく、地域住民の交流の場としても需要が広がり、現在では全国に1万ヵ所以上が設置されているという。自治体からの支援があるとはいえ、基本的に運営はボランティアであり、地域の主婦などが運営を担っていることが多いようだ。

北関東に住む、小谷野真美さん(仮名・52歳)もそのひとり。3年前、夫が定年退職したことをきっかけに念願だった子ども食堂(以下・A店)をオープンさせた。

「子どもたちもとっくに独立していたので、夫と『これからはお互い好きなことをやろう』と話し合った結果でした。私は手料理を誰かに食べてもらうことが大好きでしたし、子どもたちが小さい頃はお友達を呼んで我が家で食事会をすることも多かったので、子ども食堂の存在を知った時に『いつか絶対にやりたい!』と思っていたんです」

自宅のリビングを改装して12畳ほどの食事スペースを作ることにし、真美さんは「食品衛生責任者」の資格も取得。ボランティアで手伝ってくれるママ友や、食材を提供してくれる地元の農家や業者なども見つかり、準備を始めてから3ヵ月でA店はオープンにこぎつけた。

週に2日、夕方から5時間だけの開店で提供は無償だった。これは「家庭の事情で満足に食事ができない子どものため」という真美さんの考えによるものであり、貧困家庭に限らず、親が多忙であったり心身の不調で手料理を作れなかったりといった家庭の子どもも対象にした。

「福祉センターやフリースクールにビラを置かせてもらったり、民生委員の方に口コミをお願いして利用者を集めました。我が家は周りに民家が少ないので人目を気にせずに来てもらうことができたんです」

行列ができるほどの盛況ぶり

子どもだけで来られない時は保護者の同伴も可能で、その場合は保護者も無料で食べることができる。

「子どもだけに食べさせると、保護者に遠慮して食べづらそうにしたり、保護者に分けようとしたりするので、『いっそのことみんなで仲良く食べてもらおう』ということになったんです」

A店のメニューは管理栄養士である真美さんの姪が監修しており、カロリー計算も栄養のバランスもばっちりだった。

「姪っ子にはお世話になりっぱなしでした。高価な材料は使えないので、お肉やお魚は業務用スーパーで仕入れましたが、全体的には野菜を中心としたメニューです。煮物やコロッケ、ハンバーグ、餃子など、手間はかかるけど安上がりな料理が多かったです」

最初こそ、1日に2〜3組しか来なかったが、3ヵ月後には満席になり、半年が過ぎる頃には家の外に行列ができるほどの盛況ぶりとなった。

「こんなにも必要としてくれる人がいるんだと、嬉しかったです。美味しそうに食べている子どもたちも、その姿を見ている保護者の満足そうな顔も、すべてが張り合いになりました」

「さすがに無料は心苦しいので」という理由で一部の保護者がお金を置いて行ったことをきっかけに、「支援箱」という募金箱を置くようになると、募金だけをしに来てくれる高齢者も現れた。

「せっかくなので一緒に食べてもらうこともありました。『子どもたちと一緒にワイワイ食卓を囲める喜びはお金に換えられない』とおっしゃってくれました」

さまざまな年代の人との交流が子どもたちに良い影響をもたらすこともあり、「子ども食堂の存在意義が高まっていった」と真美さんは実感していた。

スタッフ全員の給料を支払うことに

順風満帆に見えたA店。だが、開店して1年が過ぎた頃から、暗雲が立ち込めるようになる。

「繁盛すればするほど、懐事情は苦しくなっていったんです」

最初に浮上したのはボランティアスタッフへの報酬問題だった。

「拘束時間が長くなったり、手間が増えたことでママ友たちが『タダでは割に合わない』と言い出すようになりました。ボランティアは意思があって成り立つものなので、無理強いはできません。かと言って人手がないと回らないので、こちらがお願いする形になった以上、対価は当然だと思いました」

結局、真美さんは手伝いのスタッフ全員に、県の最低賃金程度の給料を支払うことにした。思いがけず発生した人件費だけでなく、食材の供給不足という事態にも見舞われた。

「天候不良で野菜の品質が低下したり、提供が不安定になったりしたんです。後継者不足で廃業する農家も出てきて、お米も手に入りにくくなりました」

気がつけば、真美さんの持ち出しが毎月10万円を超えるようになっていた。

子ども食堂は、自治体から補助をもらうこともできたのだが、真美さんはこれを拒否している。

「申請が面倒で審査に時間がかかるということもあったんですけど、何より、税金で補助されることに抵抗があったんですよ。もともとA店は私が個人的に始めたものだし、自己満足の延長みたいなものだったので、公金に頼るのは違うんじゃないかって……」

「ちょっとお金がかかる趣味だと思おう」。そう思って運営を続けていた真美さん。だが、その善意につけこむ……と言っては言い過ぎかも知れないが、予期せぬ利用者がやって来るようになる。

後編記事『「子ども食堂」を閉店するしかなかった女性…押しかけてきた「部外者の大人」に苦悩』に続く。

【つづきを読む】「子ども食堂」を閉店するしかなかった女性…押しかけてきた「部外者の大人」に苦悩