西成のホルモン焼き名店「やまき」が「あの場所、あの味」で完全復活 仕掛け人は51歳国内最年長ボクサー
大阪・西成の伝説的ホルモン焼き店「やまき」が15日に待望の復活を遂げた。
場所は阪堺線「今池駅」の高架下。そう、以前と「同じ場所、同じ味」でカムバックしたとあって、全国のやまきファンを喜ばせている。
復活に尽力したのは西成をこよなく愛するボクサーたち。その舞台裏に追った。(山本智行 内外タイムス)
西成に再降臨し激震走る
今池高架下に近づくと独特の香ばしいにおいが漂ってきた。ホルモンの焼ける音や沸き立つ煙の中、鉄板を囲むお客さんの笑顔。そこにはかつて見た活気がよみがえっていた。
「やまき、完全復活」の電撃ニュースが伝えられたのは15日。大阪・西成に衝撃が走った、と言えば少々大げさかもしれないが、23年8月から休業して以降「本当になくなったのか」「いつ再開するのか」と待ちわびる声が多く、再オープン初日から3時間を超える行列ができたのも当然だったか。
今回の復活を陰で支えた仕掛け人で現役最年長ボクサーの恵良敏彦さんが感慨深げに話す。
「やまきがなくなったのは3年前。僕自身は7年前からYouTubeで西成の街の魅力を発信していて、やまきは、あいりん地区の中心地、象徴でもあったので、どうしても復活させたかった。ようやく持ち主にたどりつき、ホルモンの入手経路も確保。今回オープンする運びとなりました」
陽光アダチジム所属ボクサーでもある恵良さんは保護猫活動、ホームレス支援やチャリティー活動をする慈善家。その一方で実業家としての顔も持ち「西成あいりん地区再生プロジェクト」の一環として、街のにぎわいを取り戻すために立ち上がった。
西成の世界とボクサー同士のきずな
「西成は僕が生まれ育った北九州と同じ労働者の街。小さいころ見た風景が残っていて懐かしさがあった。社会を底辺から支えている人々の営みや人情味にあふれるところ。そんな世界観が好きなんです」
鉄板の前に立つのも元ボクサーで大阪帝拳ジムに所属した李明浩さん。「屋台のみょんみょん」として西成で親しまれており、その腕を買われたものだ。コテの扱いは手慣れたもの。ただ「同じ味を提供しようと毎日が必死。緊張の連続です」と表情を引き締めた。
元ボクサーの李明浩さん(筆者撮影) 50歳を前に国内リング復帰
確かに、秘伝のタレやホルモンの調理法は分かっていたが、最も大切な味の再現には時間を要し、試行錯誤を繰り返したそうだ。価格は串が90円、アルコール類が350円と西成仕様。恵良さんが続ける。
「レシピはある程度聞いていたんです。ただ、醤油の濃さとか温め方とか、どのタイミングで加えていくのとか、細かいことが分からなくて。あの味に近づけるため、4人がかりで2カ月以上かけて、取り組みました。みなさんから、この味やった、この味やったと喜んでもらえるのが何よりです」
そう話す恵良さんも異色のボクシングキャリアを持つ。19歳でデビューしたものの、重度のヘルニアのため、20歳で現役を一度退いた。
長期リハビリを経て回復したが、日本ボクシングコミッション(JBC)の年齢制限があり、41歳からタイを中心に海外で活動。日本では非公認ながらWBF世界フライ級王者にもなった。
その後、ルールの見直しがあり、50歳を前にJBCのA級ライセンスを取得。いまも毎週ジムに通い、現役を続けている。
「何度も心が折れそうになりましたが、夢は諦めたら終わり。ジョージ・フォアマンの言葉じゃないけれど“老いは恥じゃない”。最後にもう1試合。なんとかして国内リングに立つ。できれば地元の北九州で戦いたい」
引退ボクサーの受け皿に
1月21日、51歳の誕生日には妻と、先生を目指して大学に通う娘さんと心斎橋で食事。「パパ、頑張って」と励まされたと照れた。陽光アダチジムの安達哲夫会長も「なんとかマッチメークを」とバックアップを約束する。もちろん、やまき復活の先には壮大な計画がある。
「引退したボクサーには何の保証もない。今後はやまきを店舗展開していってセカンドキャリアの場にしようと考えている。最終的には大阪土産のひとつとして、この味を持って帰ってもらえる仕組みをつくりたい」
新生やまきの第2ラウンド。恵良さんはファイティングポーズを取り続ける。
現役最年長ボクサーの恵良さん(筆者撮影)
