2030年には3.6万人不足、都心でも進む「バス減便」に打ち出す「外国人人材」の育成【Nスタ解説】
深刻な「人手不足」により、全国で相次ぐ路線バスの廃止や減便。運転手を確保するため、バス会社が注目しているのが「外国人人材」の採用です。
【写真を見る】卒論で「君の名は。」について書くほどの日本好き バス運転手のマハトミさん
国内初 外国出身の女性バス運転手
高柳光希キャスター:
神奈川県で、インドネシア出身の女性、マハトミ・リスマルタンティさんがバスの運転手としてデビューをしました。既に3月から働いているといいます。
TBS報道局社会部 都庁担当 寺島学 記者:
取材してみて、事業所の皆さんがマハトミさんに大きな期待を寄せていることがわかりました。
それでも、違う国に来て仕事していて難しいこともあるといいます。
例えば、日本は「時間に厳しい」という部分がありますが、バスを運転していると時間だけでなく安全運転、交通ルール、そしてお客さんのことまで色々なことを考える必要があります。時間を守りつつ運転するため、路上教習で丁寧に指導しているそうです。
その他にも驚いたのは、一部のルートを「歩いて回る」という研修を行っていることです。この研修により、「土地勘」や国によって異なる「歩行者の扱い」が理解できるようになるそうです。マハトミさんは、「最初ちょっと難しかったのですが、今は慣れてきました」と笑顔でおっしゃっていました。
また「接客の言葉づかい」にも苦戦しているそうで、例えば「定期券をもう一度拝見させてください」という台詞の「拝見」は、かなり難しい言葉づかいだと思います。
「日本語の力」を養うだけでなく、「接客で使う言葉」も丁寧に勉強しているのが伝わりました。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
発音もそうですが、「わかりました」は「承知しました」や「承知いたしました」など、色々な言い方があります。私も非常に苦労したので、マハトミさんの苦労もよくわかります。
TBS報道局社会部 寺島記者:
バスの利用者にも取材したのですが、「ありがたい」という声が多くありました。「電車のない地域ではバスが大切。海外の方がこういう職業についてくれるのはありがたい」「不安に思うことはなかった。インドネシアからも来てくれて、バスの運行が続いていくことは助かる」などの声がありました。
2030年にはバス運転手が3.6万人も足りなくなる?
高柳光希キャスター:
バス会社が外国人運転手の採用を始めた背景には深刻な「なり手不足」があります。
2017年には全国で13万3000人いたバスの運転手ですが、2030年には9万3000人まで減ることが予測されています。2030年の必要人員が12万9000人とされているので、3万6000人不足するのではないかと考えられています。(日本バス協会の試算)
TBS報道局社会部 寺島記者:
このような傾向は地方都市から始まるイメージがありますが、既に都心でもその波が来ているようです。都営バスでも直近4年間で5路線が休止(3月時点)になっていて、他にも減便がかなり多くの路線であったということです。
都議会や都庁でもこの問題が話し合われていて、いろいろな対策が現在進行形で進めようとされているので、関係者間で「このままだとまずい」という危機感が共有されているのかなと日々感じています。
井上キャスター:
人口が減っているわけではない東京で、バスが5路線も休止になるのはなぜなのでしょうか?
TBS報道局社会部 寺島記者:
バスの運転免許を持っている人が減少していて、バスの運転手になれる人が少ないという点があります。そして難しいのが、待遇を上げていく努力をしてそれを宣伝しても、すぐに運転手の数が増えるわけではないということです。バスの運転手を育てるにも時間がかかります。
そのような「技術を持った人手不足の波」が来ているのだと思います。
各業界が直面する“人材不足” どう対応すべきか
ハロルド・ジョージ・メイさん:
各業界が人材不足ということはよく耳にしますが、バス業界であればやれることは2つしかありません。
人材を確保するか、テクノロジーを取り入れて無人運転などにすることです。無人運転については、日本や世界の技術が発展しているとはいえ、レベル4(特定条件下における完全自動運転)の実用化は2030年ごろを見込んでいるため、ここ数年をなんとかするために、こういう(外国人運転手の採用に)取り組むことはすごくいいと思います。
ただ、短期と長期で目線を変えないといけないと思います。
短期で考えると、外国人人材の活用は素晴らしい取り組みだと思います。しかし、ヨーロッパでは海外から人材を積極的に取り入れて、5年10年経っても帰国しなかったり、言葉・文化・宗教などの壁で馴染めなかったりする問題も出ているため、長期的な目線でも考えないといけないと思います。
出水麻衣キャスター:
バス運転手のマハトミさんは「特定技能1号」で、在留期間が原則5年となっています。せっかく技能を取得しても、5年後には帰ってしまうという課題もありそうです。
TBS報道局社会部 寺島記者:
会社も日本で培ったものや技術を母国の発展に生かしてほしいと話していましたが、人手不足のことを考えていくと「残って働いてもらいたい」「そこに向けてのサポートもしたい」といういろいろな思いがあるようです。
高柳キャスター:
他の地域も外国人人材の登用に取り組んでいます。
札幌市では、バスの運行本数(平日1日あたり)が、2019年度から2025年度の6年間で3割減便しました。
そこで市が主体となって、ベトナムで人材を募集することになったといいます。
まずは現地ベトナムで約1年間、「大型二種免許」取得に向けた対策や日本語の習得といった育成を行います。その後、正社員として10人ほどを採用し、国内で免許の取得支援も行うといいます。費用は札幌市とバス会社が全額負担するということです。
井上キャスター:
短期的と長期的にどう変えていくか、その両輪で考えることが大切ですね。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
日本の人口が減っていくのは目に見えているので、テクノロジーに頼らざるを得なくなる時期が必ず来ます。ただ、全部をテクノロジーで解決することは難しいので、人間の力に頼らざるを得ない時代は当分続くと思います。
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<プロフィール>
寺島学
TBS報道局社会部 都庁担当
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ハロルド・ジョージ・メイさん
プロ経営者 1963年オランダ生まれ
現パナソニック顧問・アース製薬の社外取締役など
