【裁判詳報】病院に車突っ込み高齢女性2人死亡 遺族の悲痛…「家族にとって扇の要で、太陽のような存在。妻と結婚したことが、人生で一番の幸せ」運転していた74歳男に禁錮3年の「実刑判決」 大阪地裁
過失運転致死罪に問われた男(74) 禁錮3年の判決
2023年3月に大阪市生野区で、病院に車が突っ込み高齢女性2人が死亡した事故をめぐり、過失運転致死の罪に問われた男(74)に対し、大阪地裁は禁錮3年の実刑判決を言い渡しました。
86歳女性と75歳女性がはねられ死亡
判決などによると呉昌樹被告(74)は、2023年3月1日に、通院先のクリニックから帰宅するため、大阪市生野区で普通乗用車を運転中、車を対向車線に逸走させたうえ、歩道を乗り越えて生野愛和病院に突っ込み、黒田シマ子さん(当時86)と口池邦子さん(当時75)をはねて死亡させました。
裁判で呉被告側は「咳嗽(がいそう)性失神によって突発的に意識を喪失していたから、過失はない」「交差点を右折しようと思っていたが、咳をしていたために、右に曲がりかけた時点で意識を失った」として、無罪を主張していました。
「86歳になっていましたが、余生を楽しめるはずでした」
2024年5月の公判では、死亡した黒田シマ子さんと口池邦子さんの遺族の供述調書が読み上げられました。
■黒田シマ子さんの子の供述調書
「母は私が物心ついた時には、養護教諭をしていました。聖人君子のような人で、社会の模範になるような人でした。教え子から、母のおかげでいまがあると、感謝の手紙が来ることもありました」
「事故当日、母は入院していた弟の見舞いに来ていて、口池さんも付き添っていました」
「86歳になっていましたが、余生を楽しめるはずでした」
「どうしてこんな事故を起こしてしまったのか、被告には正直に話してほしいです」
「家族にとって扇の要で、太陽のような存在でした。邦子と結婚したことが、人生で一番の幸せでした」
【口池邦子さんの夫(当時、単身赴任だった)の供述調書】
「邦子は家族にとって扇の要で、太陽のような存在でした。邦子と結婚したことが、人生で一番の幸せでした」
「『黒田さんを病院に連れていく』。これが最期の電話になりました。邦子のことを思い出すと涙がこみあげてしまいます」
車の運転をやめなかったのは“たまたま”
一方で呉被告は2024年12月の公判での被告人質問で、「3年くらい前に家で1、2回くらい気を失ったことがあったと思う」としたうえで、車の運転をやめなかった理由について「たまたまだと思った」と述べていました。
判決は禁錮3年の実刑
4月21日の判決で大阪地裁(深見翼裁判官)は、「急加速の時点で被告が失神していたのであれば、交差点内で車がやや右寄りに進路を変えたことを合理的に説明できない」として、被告側の主張を退け、「車が急加速したことや対向車線に進入したことで被告がパニック状態になり、回避行動をとれなかった可能性は十分に考えられる」と指摘しました。
そのうえで、「右折レーンで右折待ちをしていた車があったにもかかわらず、その左側の直進レーンから右折しようとした運転操作は異常で、その過失は、一般人であればしてしまう可能性がある過失とは一線を画する重大なもの」として、呉被告に禁錮3年の実刑を言い渡しました。
判決を受け遺族「交通事故の量刑が軽すぎるのがやはり問題」
被害者参加制度で裁判に参加し続けた口池邦子さんの夫・幸一さん(78)は、判決に対する心境を、次のように語りました。
「求刑(禁錮4年)に対しては妥当だと思いますが、交通事故の量刑が軽すぎるというのがちょっとやはり問題だと思います。過失がないという加害者の対応には、非常に疑問を感じました。」
そして、亡き妻への思いを改めて語りました。
「私にとってはかけがえのない人ですから、かみさんがいないというのは本当に寂しいですね。私がいくら頑張っても、話し相手もいないし、慰めてくれる人もいないし、基本的に死ぬまで1人ぼっちかなという気ですから…。最近、新幹線などでたくさん旅行の方がおられますけども、夫婦連れを見てますと非常に寂しいですね、こっちは1人なので…」
