優勝できるか(巨人の公式インスタグラムより)

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 阿部慎之助監督が就任した2024年には4年ぶりのリーグ優勝を果たした巨人。だが昨年は、優勝した阪神に15ゲーム差をつけられ3位に沈んだ。今シーズンは開幕カードの阪神3連戦こそ1勝2敗と負け越したが、その後、大きな連敗はなく、まずまずのスタートとなっている。【西尾典文/野球ライター】

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優勝争いに加わる可能性は十分だが…

 原動力となっているのは新戦力だ。ドラフト1位ルーキーの竹丸和幸は開幕投手を任され、プロ初登板で初勝利を記録した。FA(フリー・エージェント)で楽天から移籍した則本昂大は勝ち星こそついていない。だが、2試合に先発して防御率1.38と先発の役割を果たしている。リリーフではドラフト2位ルーキーの田和廉がデビューから6試合連続無失点を記録した。野手では新外国人のダルベックがチームトップの10打点、トップタイの3本塁打と得点源になっている。

優勝できるか(巨人の公式インスタグラムより)

 こうした補強の背景には、今年にかける阿部監督の思いがある。チーム関係者はこう話す。

「阿部監督は今年が契約最終年です。優勝を逃せば退任が濃厚というのがもっぱらの噂です。そのため、とにかく使える戦力を揃えようとフロントはオフに補強へ動きました。エース格の山崎伊織が怪我で出遅れた点は誤算でした。幸い重症ではありません。内野の要でオフに股関節の手術を受けた吉川尚輝は復帰間近と見られています。彼らが戻るまでに上位をキープできれば、優勝争いに加わる可能性は十分あるでしょう」

 名前の挙がった山崎は4月15日にブルペンで捕手を座らせて投球練習を行った。吉川はすでに二軍戦に出場し、ヒットを放っている。また昨シーズン途中でソフトバンクから加入して11本塁打を放ったリチャードは、3月11日のオープン戦で死球を受けて骨折した。リハビリ組で調整を続けていたが、打撃練習とシートノックを再開しており、順調に回復しているという。主力を欠きながら上位争いに加わっている点は、選手層の厚さを示していると言えそうだ。

どこかで思い切った切り替えが必要では

 ここまでは新戦力の台頭で順調に見える巨人だが、不安要素も少なくない。気になるのは、これまでチームをけん引してきた選手の不振である。先発の柱として活躍してきた戸郷翔征はオープン戦から調子が上がらず、開幕一軍入りを逃した。二軍でも結果を残せていない。野手では開幕から三塁に入っていた坂本勇人が打率1割台と低迷。丸佳浩は代打での出場が中心となり、存在感を示せていない。

 新戦力は一定の働きを見せている。ただ、補強がすべて機能しているわけではない。FAで日本ハムから加入した松本剛は主にセンターで起用されているが、主力と呼ぶには物足りない数字にとどまっている。外国人投手のウィットリー、ハワード、マタはイニングを消化しているが、安定感に欠ける。ソフトバンクから昨年FAで加入した甲斐拓也は二軍暮らしが続いている。

 このチーム状況について、前出のチーム関係者はこう話す。

「キャベッジとダルベックの外国人選手2人は一定の結果を残しています。ただ、日本人選手で完全にレギュラーと言えるのはショートの泉口友汰だけです。秋広優人はトレードでソフトバンクに移籍しました。門脇誠、浅野翔吾は成績を落としています。2年目の石塚裕惺への期待は大きいですが、阿部監督は、今年は育成目的の起用をしないと明言しており、開幕一軍入りを逃しています。生え抜きが不動の中軸として並ぶ阪神との差は明らかです」

 比較対象として挙がった阪神は、近本光司、中野拓夢、森下翔太、佐藤輝明、大山悠輔と上位打線の全員が生え抜きであり、中野以外の4人はドラフト1位で入団した選手である。このオーダーと比べると、巨人は外様のベテランと外国人の“つぎはぎ”でやりくりしている印象は否めない。今後の不安について球団関係者は続ける。

「今年が勝負の年ということで実績のある選手と外国人を中心に戦っています。そうなると若手を抜擢できる機会は減ります。オフの契約更改で山瀬慎之助が二軍で結果を残しながら一軍の出場機会がないことに不満を漏らしていたのも、その影響です。今は甲斐拓也と小林誠司が揃って二軍にいるため、若手捕手が試合に出る機会は限られています。一軍に上がっても、わずかなチャンスで結果を残せなければ、すぐに実績のある選手に戻される。そうなると生え抜きは“一軍半”の中途半端な選手が増えてしまいます。それでも勝てばいいのかもしれません。ただ、今年も優勝を逃して同じ状況が続けば、実績はあるが力の落ちたベテランと、殻を破り切れない生え抜きばかりのチームになる危険性があります。どこかで思い切った切り替えが必要ではないでしょうか」

阪神との差をどう埋めるのか

 こうした状況を打破しようとする動きもある。3月24日にはルシアーノと宇都宮葵星、4月6日には平山功太が育成選手から支配下に昇格した。ルシアーノは開幕から中継ぎで4試合に登板し、無失点と好投したが、外国人枠の関係で4月3日に登録抹消となった。宇都宮と平山は出場機会が多くない。

 一方の阪神を見ると、ドラフト1位ルーキーの立石正広は怪我で出遅れている。ただ、3月30日に育成から支配下に昇格した福島圭音が抜擢されて結果を残した。昨年苦しんだ前川右京は復活の兆しを見せている。ここに立石が加われば、さらに強力な布陣となる可能性は高い。

 阪神との差をどう埋めるのか。今年が勝負の巨人にとって、その答えを示せなければ同じ結末を繰り返すことになる。

※成績は4月16日試合終了時点

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部