その背中の痛みは大丈夫? 急性すい炎のサインを見逃さない3つのポイントを医師が解説
急性すい炎では、上腹部の痛みとあわせて背中の痛みが現れることがあります。これはすい臓の解剖学的な位置に関連した放散痛であり、診断の重要な手がかりの一つです。このセクションでは、背中に痛みが広がるメカニズムや痛みの部位・範囲、体位による変化についてわかりやすく説明します。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
急性すい炎における背中の痛みの特徴
急性すい炎では、上腹部の痛みだけでなく、背中の痛みも重要な症状の一つです。この背中の痛みは、すい臓の解剖学的な位置に関連して生じる特徴的な症状で、診断の手がかりとなることがあります。
背中に痛みが放散するメカニズム
すい臓は後腹膜腔(こうふくまくくう)に位置し、背骨の前方、胃の後ろ側に存在します。この解剖学的な位置関係により、すい臓の炎症による痛みは、神経を介して背中に伝わりやすい特徴があります。すい臓周囲には、脊髄神経とつながる神経叢(しんけいそう)が分布しており、炎症が起こるとこれらの神経が刺激されます。その結果、痛みの信号が背部の神経を通じて伝わり、背中の痛みとして感じられるようになります。このような放散痛は、内臓痛の典型的な特徴です。特に、すい臓の炎症が強い場合や、すい臓周囲に体液が貯留する場合には、背中の痛みがより顕著になる傾向があります。
背中の痛みの部位と範囲
急性すい炎による背中の痛みは、主に背中の上部から中部にかけて感じられます。具体的には、肩甲骨の間や、背骨の両側、腰の上部あたりに痛みが広がることが多いです。痛みは左側に偏ることもあり、これはすい臓が体の左側寄りに位置しているためです。ただし、痛みの範囲は個人差があり、背中全体に広がるように感じる方もいらっしゃいます。痛みの性質は、鈍い痛みから鋭い痛みまでさまざまで、持続的な痛みとして感じられることが一般的です。体位によって痛みの強さが変わることもあり、前かがみの姿勢や横向きに寝ることで、若干痛みが和らぐと感じる方もいます。背中の痛みが上腹部の痛みと同時に現れることが、急性すい炎を疑う重要なポイントとなります。
体位による痛みの変化
急性すい炎の背中の痛みは、体位によって変化することがあります。多くの患者さんが、前かがみの姿勢をとることで痛みが若干軽減すると報告されています。これは、前かがみになることですい臓への圧迫が軽減され、痛みの刺激が弱まるためと考えられています。逆に、仰向けに寝た状態では、すい臓が背骨側に圧迫され、痛みが増強することがあります。横向きに寝て膝を抱え込むような姿勢をとることで、痛みが和らぐと感じる方もいらっしゃいます。ただし、これらの体位による変化は、痛みを完全に消失させるものではなく、あくまで若干の緩和にとどまることが多いです。体位を変えても痛みが持続する場合には、速やかに医療機関を受診することが重要です。
まとめ
急性すい炎は、早期発見と適切な治療により予後が大きく改善される疾患です。初期症状である上腹部痛や背中の痛みを見逃さず、胃痛との違いを理解して、迅速に医療機関を受診することが重要です。特に、アルコールの過剰摂取や胆石などのリスク要因がある方は、症状に注意を払い、定期的な健診を受けることが予防につながります。痛みが強い場合や随伴症状がある場合には、躊躇せず医療機関に相談することをおすすめします。
参考文献
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性膵炎(薬剤性膵炎)」
日本膵臓学会「急性膵炎診療ガイドライン2021」
日本膵臓学会「急性膵炎」
