RKK

写真拡大

10年前、熊本地震。

【写真を見る】「ライオン逃げた」熊本地震のデマ 震度7の裏側で"避難や復旧を妨げた"もう一つの混乱

1度目の震度7の揺れが熊本を襲った2016年4月14日、SNSに投稿された"ある写真"が混乱を招きました。

SNSへ投稿されたデマ「おいふざけんな、地震のせいでうちの近くの動物園からライオンが放たれたんだが 熊本」

この情報は1時間で2万件以上拡散されます。

本当にライオンは逃げたのか?

熊本県でライオンを飼う動物園はただひとつ、熊本市東区の熊本市動植物園です。

デマは地域住民の避難を妨げ、熊本市動植物園の復旧作業にも多大な影響を及ぼしました。

当時何が起きていたのか?

園長の松本さんです。

熊本市動植物園 松本充史園長「地震の後、安全確認するために園内を回っているときに、上野動物園の知り合いから写真付きでメッセージで見たのが最初。すでにその時はライオンの安全確認は最初にしていたので、あきらかにデマだとすぐに分かった」

しかし、嘘の情報いわゆるデマの拡がりは想像を超えていました。

事務所の電話回線はパンク

松本充史園長「100件以上はずっと電話を受けていたと聴いている」

「逃げたのは本当か?」「怖くて避難所に行けない」不安の声が多数寄せられ、事務所の電話回線はパンク。職員は朝まで対応に追われたといいます。

松本充史園長「電話回線が塞がってしまうというのは、我々も地震の直後、いろいろなところと連絡を取り、復旧に向けて仕事をしていかいないといけないというのがあるので、業務が滞ったというのはあった」

一方、SNSへの投稿から時間をおかず、警察もこのデマを認識していました。

当時、インターネット上の犯罪を捜査する県警の「サイバー犯罪対策課」で特捜班長として捜査にあたった、古城さんです。

熊本県警 生活安全部 当時の特捜班長 古城大一参事官「多数の流言飛語(デマ)があったので、その把握を警察は行っていた」

"熊本市内を武装集団が襲う"
"消防団を装った事件が起きている"
"井戸に毒を投げ込まれた"

当時、警察は100件以上のデマを確認。中でも悪質で市民生活に大きな影響を及ぼした「ライオンが逃げた」というデマを捜査することになりました。

足りない捜査員

ところが、問題がありました。

古城大一参事官「捜査する上で大変だったのは、捜査員がいないということですね。捜査員はみんな被災者の救護などに従事していたので」

捜査員の多くが現場で地震の対応に追われていたのです。

本格的な捜査が始まったのは、デマを認識して2週間以上が過ぎてからのことでした。

その結果、「ライオンが逃げた」という投稿はすでにSNS上から削除され、警察はネット上に残る過去のデータなどを捜査し、証拠を集める必要があったといいます。

そして地震から3か月後の2016年7月、警察はSNSにライオンのデマを投稿した男性を特定し、偽計業務妨害の疑いで逮捕しました。

古城大一参事官「避難所に逃げようとしてもためらってしまう、警察や消防は流言飛語があれば対応しないといけない、救護を求めている人のところへ行きたいのに行けない、ということもあったかもしれません」

その後、逮捕された男性は、犯罪の事実は明らかなものの、事情などを踏まえ起訴しないことを意味する、「起訴猶予」処分となりました。

警戒すべきは発信元

SNSなどに詳しいITジャーナリストの三上洋さんも当時、あの投稿を見た一人です。

ITジャーナリスト 三上洋さん「リアルタイムでライオンデマと呼ばれる画像が投稿されたのを見ている。その投稿を見てワッと広がる様子も見ています」

災害時には嘘の情報が流れると予想していた三上さんは、情報が拡散される様子を注視していました。

三上洋さん「1時間後にはツイッター(現在のX)では、あれはデマだと分かった。しかし問題はそれからだった。LINEやショートメールで友人に送られました。また避難所で口伝えで聴いたという人も多かった」

当時は、災害時に出回るデマに関する知識が薄かったこともあり、広がってしまったのではないかと三上さんは分析しています。

その上で、SNSなどの情報に対する正しい知識を持っておくことが重要だと訴えます。

三上洋さん「私たちが警戒すべきは、写真や動画ではありません。発信元なんです。共有しているのは誰だ、発信をしているは誰だ。投稿者の以前の投稿をさかのぼって見てください」

古城大一参事官「一次情報ですね。流れた情報を鵜呑みにするのではなく、この情報はどこから、元々のどこの情報なのか、一次情報を確認するというのが大事」