「一箱ひとりじめしてみたい…」ゆる節約家が「1000円ごほうび」で味わった甘いあこがれ
年収200万の「1ヶ月食費2万円生活」
ガソリン価格に続き、JRの運賃や電気代の値上げ、さらに多くの食品価格も上がって、ますます苦しくなる生活費。財布のひもをぎゅうぎゅうに締めてもいっこうに貯められないのは、自分の使い方のせいなのかと、節約に精を出してはいるが……。
そんなご時世に刊行された、『わたしの1ヶ月1000円ごほうび3』(おづまりこ著/KADOKAWA)は、ゆる節約家として多くの共感を集めてきた漫画家・おづまりこさんによる人気シリーズの最新作だ。
おづさんの「ゆる節約生活」の歴史は長い。京都の美大を卒業して上京、そこから10年間ほど、派遣社員として年収200万円の生活をする。2015年に当時の暮らしを「1ヶ月食費2万円生活」というタイトルのブログで発信し始めると、そのリアルで温かな食卓が話題となり、2016年には『おひとりさまのあったか1ヶ月食費2万円生活』として単行本化。少ない予算でも心豊かな生活スタイルが支持され、漫画家としての道を切り開いた。
その後、生活情報誌「レタスクラブ」2021年1月号〜2026年4月号まで『わたしの1ヶ月1000円ごほうび』を連載。現在は2023年1月より「レタスクラブ」で「わたしの1ヶ月1000円ごほうび」を連載中。本シリーズは、「月に一度、1000円で自分を癒やす」というシンプルなルールのもと、日常に小さな癒やしを取り入れるアイデアを描くものだ。
これまで出版した『わたしの1ヶ月1000円ごほうび』とその続編『わたしの1ヶ月1000円ごほうび2』では、高級いちご「あまおう」を味わったり、国産はちみつを楽しんだり、コンビニであえて「散財」してみるなど、等身大で愛らしいごほうびが読者の心をつかんできた。
第3巻となる本作では、さらに多彩な「1000円の使い道」が登場。欲しかったもの、食べてみたかったもの、体験してみたかったことを実際にやってみたおづさんの日々が、綴られている。
1ヶ月1度のプチ贅沢
おづさんの自分に課したルールは、シンプルだが徹底している。自分へのプチ贅沢は1ヶ月に1度だけ。そして予算は1000円台を守ること。
「せっかく遠くまで来たんだから」とか、「今月は頑張ったから特別」なんて言い訳は決してせず、限られた金額の中で工夫を凝らし、楽しみつくす。
けれどもそれは同時に、限られた中だからこそ見えてくる、本当に大切なことを教えてくれる。それは、選択することの厳しさだ。
1000円の使い方くらいで……と笑える人は、余裕があって羨ましくはあるが、果たしておづさんのように1000円の価値を満喫できているだろうか。
「1000円ごほうび」で何を買うかよくよく調べ、店に入ってもずらりと並ぶ商品を前に悩む。「選ぶ」とは、楽しい反面、選ばなかったものは手に入らないという辛く厳しい選択なのだ。
カステラ1箱ひとりじめ
乱れのない静謐(せいひつ)なキッチンを持つ料理家の有元葉子さんは、統一感のある空間を維持できる理由の中で、「買ったものは自分」という視点を外さないと言っていた。
選んだものひとつひとつが、自分の価値を表しているわけだ。
おづさんの「ゆる節約」生活の中で選ばれた1ヶ月に1度の「特別」は、普段頑張っている自分に相応しい、特別な価値をもたらしてくれる。
そんな第1話は、カステラのひとりじめ。
子どもの頃、卵の濃い黄色を彷彿とさせる甘くしっとりしたカステラを、ひとりで一本食べてみたいという夢を見たことはないだろうか。
薄紙に挟まれた茶色の部分は、焼き色のはずなのに、なぜか一段と甘く、濃いように感じられたものだ。
おづさんは長年の夢を「今月の1000円ごほうび」で叶えることにした。
文明堂で購入した5切れ入りのカステラとバームクーヘン、合わせて967円(税込み)。初日はじっくりと味わいながら2切れを堪能。翌日は、「外側の砂糖がサクサク」したバームクーヘンを、そして3日目は思い切って残りの3切れを一度にひとりじめ。
ささやかながら、誰に遠慮することなく、カステラのおいしさを満喫するのだった。
本編は著者の実体験に基づくエッセイです。商品・サービス内容、価格等は変更となる場合がありますのでご了承ください。
◇カステラ一箱食べてみたい、ホールケーキを丸ごと食べたいは、子どもの頃にだれしもが一度は見た夢。1000円で叶う夢、わたしたちはいくつ持っているだろう。
続く第2話「『芋姉ちゃん』と呼ばれる芋好きゆる節約漫画家が『1000円ごほうび』で大人買いしたお菓子」は、いつもは小袋で買っている大好物のおやつの話。おづさんが大好きだという、その大好物のおやつとは。
