「1発6億」のミサイルを浪費でジリ貧…米退役軍人が語る「トランプがイラン戦争を続けられない背景」

写真拡大 (全4枚)

米国とイスラエルによるイラン攻撃は、長期化と泥沼化への懸念が強まっている。パキスタンの首都イスラマバードで行われた米国とイランの戦闘終結に向けた協議は4月12日、21時間に及ぶ交渉の末、合意に至らず終了した。

そんな中、「トランプ政権は、SNSのプロパガンダ動画で『高校のロッカールームのような熱狂』を作り出し、戦争を煽っている」と、米ABCニュースの番組で非難したのが、軍事専門メディア「ミリタリータイムズ」の編集長を務めるJD・シムキンズ氏だ。

イラク戦争に従軍した退役軍人の同氏は、1986年生まれ。高校卒業直後の2004年に海兵隊に入隊し、戦場の最前線でミサイルや砲撃、空爆などを誘導する「スカウト・オブザーバー」と呼ばれる任務に従事。2006年には、最激戦地として知られたファルージャで従軍した。

ホワイトハウスは3月中旬、任天堂のゲームWii Sportsの映像とイラン攻撃の様子を繋ぎ合わせた動画をX(旧ツイッター)に投稿。ボウリングやゴルフのゲーム画面に爆撃シーンを重ね、「ホールインワン!」「ストライク!」といった文言を表示して戦果をアピールした。当然ながら、「戦争はゲームではない」といった批判が噴出したが、シムキンズ氏も「強い憤りを感じた」と筆者の取材に語った。

トランプ政権の「ずさんな計画」

「2021年に米軍がアフガニスタンから撤退した際は、13人の兵士が自爆テロで亡くなった。私はその時、帰還兵としてサバイバーズ・ギルト(生き延びた者が抱く後ろめたさ)を感じずにいられなかった。なぜならそのテロで亡くなった若い兵士らは、私がイラクで戦っていた当時まだ3歳くらいの子どもだったという思いが頭から離れなかったからだ。SNSに投稿されたあの動画を見ると、仲間たちの犠牲にまったく敬意が払われていないと感じる。しかもあの動画は、イランで13人の兵士が命を落とした直後に投稿されていた。私はどうしても考えてしまう。もし自分が、あの中の誰かの家族だったらどう感じるだろうと」(シムキンズ氏)

2001年の米同時テロ以降、約20年続いたアフガニスタン戦争は、約7000人の米兵が犠牲になり、1兆ドル(約159兆円)超の軍事費が投入された挙げ句、結局は、開戦当初に打倒を目指したタリバンの復権を許す形で幕引きした。シムキンズ氏は、米国がそれと同じ過ちを繰り返すことを危惧している。トランプ政権が、イランとの戦いにきわめてずさんな計画で乗り込んだことは、明らかだという。

「6億円」のミサイルを浪費する米軍

「米軍は、イランが1機あたり3万5000ドル(約560万円)程度で製造したシャヘドと呼ばれる安価なカミカゼドローン(自爆型ドローン)を、400万ドル(約6億円)もするパトリオットミサイルで撃墜している。しかも、米軍はこの非常に高価なミサイルを、攻撃開始後のわずか数日で800発以上も使用したとウクライナのゼレンスキー大統領は述べている。これは、ウクライナがロシアに対して4年間で使用したパトリオットの総数を上回る数だ。持続可能とは思えない」とシムキンズ氏は指摘する。

また、この自爆ドローンは、イランから提供を受けたロシアによってウクライナ戦争の初期から使われており、2023年と2024年には、紅海でフーシ派が米海軍に対しても使用していた。「それなのに米国は今、イランがこのドローンを使ってることに驚いているようだ」と同氏は続けた。

米国とイスラエルがイラン攻撃を開始したのは、2月28日のことだが、それは奇しくもトランプ大統領がゼレンスキー大統領をホワイトハウスで厳しく叱責した2025年2月28日の会談からきっかり一年後のタイミングだった。そして今、米国はドローンやミサイル防衛能力の運用について、実際にウクライナにアドバイスを求めている。「私たちがこれらの武器の調達や運用の準備を怠っていたという事実は、致命的だと言わざるを得ない」(シムキンズ氏)

日本の高市早苗首相は、3月の日米首脳会談でトランプ大統領に寄り添う姿勢を示し、ミサイルの共同開発・生産で合意。日米の強固な連携を確認したと報じられた。しかし、米国が弾薬を使い果たすことで、同盟国を脆弱な状態にしてしまうことが懸念されている。

トランプ大統領は、イスラエルと共に進めたイランへの攻撃開始当初、核能力の破壊や軍事力の無力化、さらには体制転換を目標としていた。しかし、その後は場当たり的な発言が目立ち、明確な目標を示していない。

「イラクやアフガニスタンの退役軍人たちは、イランの状況が、かつての戦争に非常に似ていると感じている。提示されている目標は不明確であり、非常に曖昧だ。そして日ごとに変化している。大統領は、この戦いの目的がホルムズ海峡を開くことだと述べたが、これは戦争前にすでに達成されていた状態だ。論理的に破綻している」(同前)

さらに、最高指導者のアリ・ハメネイ⁠師の殺害には成功したものの、その結果以前よりも厄介な強硬派が台頭し、「終わりなき戦争になる懸念がより強まった」とシムキンズ氏は指摘した。

【後編を読む】「米国による民主化は無理」アメリカの退役軍人が語る「戦場と軍事ビジネス」の乖離

【つづきを読む】「米国による民主化は無理」アメリカの退役軍人が語る「戦場と軍事ビジネス」の乖離