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高校野球のあり方が、今、大きな転換期を迎えています。

この春、熊本県の公式戦でも「DH(指名打者)制」が本格的に導入されました。

投手は打席に立たず、攻撃専門の選手を起用できるこのルールが、球児たちや試合展開にどのような変化をもたらしたのでしょうか。

独自の調査データから、その実態と傾向が見えてきました。

 打撃の活性化と「埋もれていた逸材」の開花

まず注目したのは、打撃成績への影響です。

この春の熊本大会の全試合の通算打率は『.263』でした。昨春の『.250』と比較すると、1分3厘上昇しています。

特筆すべきは、DHとして起用された選手の成績です。

DH選手に限った大会通算打率『.321』 

これは、大会全体の打率(.263)を大きく上回る数字で、これが大会通算打率を押し上げたとも言えそうです。

甲子園常連の熊本の強豪・九州学院の佐藤元哉選手(3年)は、その象徴的な例と言えます。

昨秋は「0打席」だった佐藤選手ですが、今春はDHとして全5試合に先発。15打数8安打4打点、打率.533という驚異的な数字を残し、大会中に7番だった打順が2番へと昇格しました 。

守備に課題があったとしても、バッティングでチームに貢献できる――。DH制は、これまでベンチに埋もれていた「打撃のスペシャリスト」に光を当てたのです 。

覆された懸念 投手への負担は「軽減」へ

導入前、一部では「強打者が増えることで攻撃が長引き、その結果、投手の球数が増え、かえって負担になるのではないか」という懸念もありました。しかし、データはその予測を覆しています。

1試合平均の投球数は、昨春123.72球に対し、今春は123.13球と微減。

1試合当たりのイニング数は7.47回と、昨春から約0.5回短縮されました。

好打者が打席に入る機会が増えたことで、得点につながり、決着が早まったという仮説も成り立ちます。

現場の監督たちは、数字以上のメリットを感じています。東海大星翔の野仲義高監督や九州学院の平井誠也監督は、味方の攻撃時に投手はベンチで休養でき投球に専念できる「身体的・心理的負担の軽減」を最大の利点に挙げています 。

浮き彫りになった「戦力格差」の課題

一方で、全ての学校がこの恩恵を享受できているわけではありません。今大会、一度でもDHを採用したチームは50校中26校と、約半数に留まりました 。

ベスト4進出校は全試合でDHを採用 。ベスト8以上のチームで、一度も起用しなかったチームはゼロでした 。

部員が充実している強豪校が選手層の厚さを活かす一方、控え選手が足りず「10人目の選手」を起用できない学校があるのも事実です。

導入前の懸念であった「学校間の戦力格差」が、如実に表れた形となりました 。

「選手の出場機会増加」と「投手の けが予防」。この2つにおいて、DH制は確かな成果を上げているようです 。東海・九学の両監督は「気温が上がる夏こそ、投手の負担軽減のためにDH制は不可欠」と口を揃えます 。

1世紀以上の歴史を持つ高校野球。

新たなルールの導入は、勝利至上主義を超えた「選手を守るための改革」となるのか。待ち構える夏、酷暑の中での戦い方が、その試金石となりそうです。