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RS4のシャシー+クワトロのボディ

1980年代に登場したアウディ・クワトロが、英国のスタートアップ企業、オーデイシャス・オートモーティブ(Audacious Automotive)によるレストモッドで、スーパーチャージャー付きV8エンジンを搭載して生まれ変わる。

【画像】アウディ・クワトロが現代的な高性能モデルとして復活【オーデイシャス社のレストモッドとオリジナル車を詳しく見る】 全23枚

これは彫刻家でありクラシックカーの修復家でもあるマック・ザグレウスキー氏の発案によるものだ。今回手掛けるクワトロは、スチールとアルミニウム製のボディを用いた受注生産車だが、カーボンファイバー製ボディによる量産化も計画されている。


オーデイシャス社のクワトロ(プロトタイプ)

このモデルは、2006年に発売されたB7型のアウディRS4(2代目)の性能と、クワトロのスタイリングを融合させたものだ。RS4のシャシー、エンジン、電子制御システムが、現代風にアレンジされたクワトロのボディシェルと組み合わされている。

ザグレウスキー氏はAUTOCARに対し、この構想は「モディフィケーション(改造、改良)というよりは、コンティニュエーション(継続、復刻)を目指したものです」と語った。

「これは『もしも』という問いかけです。もしアウディがこのプラットフォームを継続していたら、最終的にはこれに近い形になっていただろうか? そして、重い5気筒ではなく、軽量なV8になっていただろうか? そうした問いには答えがありません。しかし、わたし達が目指しているのは、現代的なフィーリングと、機械的に本来あるべきフィーリングを両立することです」

なぜV8エンジンを選んだのか?

オリジナルのクワトロは5気筒ターボエンジンが特徴だったが、ザグレウスキー氏率いる開発チームは、ベースとなる2代目RS4に搭載されていた4.2L V8エンジンを採用している。

B7型を選んだ理由はいくつかあるとザグレウスキ―氏は語ったが、最大の決め手は、クワトロのコンセプトである「実用性が高く、楽しく、そしてアナログなフィーリング」に最も合致していた点だという。


オーデイシャス社のクワトロ(プロトタイプ)

例えば、現代のRS3をベースにしていたら、そのコンセプトには合致しなかっただろうと同氏は言う。なぜなら、B7型RS4がリアバイアス(トルセン・ディファレンシャル)であるのに対し、RS3はフロントバイアスの四輪駆動(ハルデックス・ディファレンシャル経由)であるため、「刺激度は比べ物にならない」からだ。

さらに、RS3のプラットフォームではトランスミッションがオートマティックに限定されてしまうため、「アナログ」なマシンを作るという目的が達成できないという。ザグレウスキー氏は、RS3のシャシーはRS4よりも剛性が低く、「サスペンションの性能も及ばない」と主張する。

したがって、RS4のプラットフォームを採用することで、オリジナルの魅力を保ちつつ、手応えのあるマニュアル・トランスミッションを備えたクワトロスタイルのクルマを作ることができる。同時に、比較的新しい高性能車ならではの剛性と安定性も獲得している。

「現代のクルマが持つ(デジタル的な)運転体験や、クラシックカーでは到底及ばない要素よりも、この機械的な奥深さや運転体験への主体性を重視するドライバー層が増えている、あるいは以前から存在していたのではないかと思います」とザグレウスキー氏は語った。

現代的かつアナログに仕上げる

オーデイシャス・オートモーティブ社のクワトロにとって「走行性能は最優先の目標ではない」ものの、標準仕様のB7型RS4と比較して数々のアップグレードが施される。その中でも最大の変更点はスーパーチャージャーの追加であり、これにより出力は標準の420psから「最低」でも600psへと向上する。

一方、新ボディはRS4の元の車両重量1650kgから「少なくとも」250kg軽量化し、パフォーマンスの大幅な向上に寄与する。


オーデイシャス社のクワトロ(プロトタイプ)

グループBラリーに参戦したS1クワトロを彷彿とさせる鮮烈なボディワークは、単なる見栄えのためではなく、エンジニアリング上の目標を達成するために設計されている。

ザグレウスキー氏は「ダクトも開口部も、偽りのものは一切ありません」と述べ、デザインについては最終決定はされていないものの「クレイジーで、斬新なものになるでしょう」と付け加えた。キャビンも一新され、アルミニウム製のボタンやスイッチ類が採用される予定だ。

ザグレウスキー氏によると、RS4の車体構造とクワトロのボディを融合させたことが、同車の開発における重要な成果だという。オリジナルのショートホイールベースのクワトロは、全長4.6mのRS4に比べて著しく短く、フロントガラスなど構造上のハードポイントにおいて大幅な変更を必要とした。

「すべての車両は個別に受注生産されるため、外観は多少変わるかもしれませんが、再現性のあるプラットフォームを持っていることが当社にとって非常に重要です」と同氏は語った。

旧車に新たな命を吹き込む

オーデイシャス・オートモーティブ社のクワトロの受注価格は35万ポンド(約7400万円)からだが、これには税金や2台のドナーカーの費用は含まれていない。

希少で愛されるモデルのオリジナル車両を改造に用いることについて、物議を醸すのではないかとの問いに対し、ザグレウスキー氏は次のように答えた。


錆除去のため酸浴されたアウディ・クワトロのボディ

「当社のアプローチは、決して完璧な状態の車両を道路から引き離すことではありません。同業他社とは異なり、当社が選定する車体は、通常は非現実的なレベルの修復を必要としています」

「だからこそ、ボディシェルであれ、ドナーカーから回収した部品であれ、それらに新たな命を吹き込むのです」

「賛否両論あるかもしれませんが、別の見方をすれば、当社はクルマを台無しにするのではなく、救っているとも言えるでしょう」とザグレウスキー氏は述べ、世の中には台無しになってしまったクルマが「想像以上にたくさんある」とした。