深夜0時過ぎ、26歳娘からの着信…〈貯金1,700万円〉〈年金見込額月20万円〉62歳会社員の「平穏な老後」が崩れた夜
定年まであと3年。地方都市で働く会社員の田中さん(仮名・62歳)は、妻との穏やかな老後を思い描きながら再雇用で働き続けていました。しかしある深夜、都内で暮らす娘から一本の電話が入ります。思いがけない告白は、田中さんの老後設計を大きく揺るがすことに……。その内容とは?
娘から深夜の電話…「まさかの内容」
地方都市のメーカーで働く田中さん(仮名・62歳)は、退職まで残すところ3年となり、妻との平和な老後生活を思い描いていました。
現役時代の年収は900万円近くありましたが、50代半ばをピークに減少。60歳以降は再雇用となり、現在の年収は400万円ほどです。転職を3回経験しているため、退職金を含めた貯金は1,700万円ほどで、夫婦の年金見込み額は月20万円程度です。決して余裕があるわけではなく、年金受給までの数年間はできるだけ貯金を増やす計画でした。
再雇用後の職場では、元部下が上司になるなど、肩身の狭さを感じる場面も少なくありません。それでも「あと少しの我慢」と自分に言い聞かせて働き続けてきたのです。
しかし、まさかの事態が訪れます。ある晩、深夜0時を過ぎたころ、隣で寝ていた妻のスマートフォンが鳴りました。こんな時間に……? 妻と共に目を覚まし、画面を除くと都内で働く娘(26歳)の名前。スピーカーをオンにして急いで電話に出ました。
「お母さん、お父さんも……夜遅くにごめんなさい」
声は明らかに沈んでいました。 そして娘は、しばらく沈黙したあと、絞り出すように言いました。
「借金があるの。すごく多くて、もう返しきれない」
どういうことだ、と聞き返すと、娘は途切れ途切れに事情を話し始めました。
クレジットカードで重ねた借金、総額500万円
娘は大学卒業後、都内の有名企業に就職。配属されたのは広報部門で、周囲には身なりに気を使う社員が多く、さりげなくハイブランドのアイテムを身に着けている人も少なくなかったといいます。
洋服やバッグ、化粧品。最初は必要経費のような感覚だったものが、次第にエスカレートしていきました。SNSを開けば、アルゴリズムによって「都会で働く素敵な女性」の投稿が次々と表示されます。それを見るうちに、自分もそうでなければいけないと思い込むようになっていったといいます。
「ボーナスが出たから」
「新作を一つくらいは持っておきたい」
そんな気持ちでブランド品を購入するうちに、買い物は習慣のようになっていきました。もちろん、すべてを一括で支払えるわけではありません。リボ払いやキャッシングを使うようになり、気づけばクレジットカードは6枚。返してもまた借りる自転車操業に陥っていました。
「本当にどうにもならなくなっちゃった……どうしたらいいかわからない」
電話の向こうで泣き出す娘に、田中さんは言葉も見つかりませんでした。数日後、娘は実家に戻り、クレジットカードの請求明細を見せました。合計額はおよそ500万円。リボ払いとキャッシングがほとんどでした。
親が肩代わりする義務はないが…田中さんの決断
クレジットカードは便利な決済手段ですが、使い方を誤ると大きな負担になることがあります。特に注意が必要なのが「リボ払い」です。
リボ払いは、利用金額にかかわらず毎月の支払額をほぼ一定にする仕組み。一見すると月々の負担が小さく管理しやすいように見えますが、実際には利用残高に対して手数料(利息)がかかり続けるため、残高がなかなか減らないという特徴があります。
多くのカード会社では、リボ払いの手数料率は年15%前後に設定されています。例えば30万円の買い物をリボ払いにし、毎月5,000円程度の定額で返済していく場合、元本の減り方は非常に遅く、支払総額が50万円以上になるケースもあります。完済までに何年もかかることも珍しくありません。
返済中に新たな買い物をリボ払いで追加すると、残高は積み上がり続けます。毎月の支払額が変わらないため、利用者が負担の大きさに気づきにくい点も問題とされています。
さらに、キャッシングの金利も決して低くありません。多くのカード会社では年15〜18%程度に設定されており、短期間で返済できなければ利息の負担は大きく膨らみます。
成人した子どもの借金は、原則として本人の責任です。債務整理などの方法もあり、親が肩代わりする義務はありません。それでも、窮地に立たされた我が子を前にして、突き放すことができる親は多くないでしょう。田中さんもまた、その一人でした。
田中さんは妻と相談の末、貯金からお金を出して借金をいったん整理することに。老後の計画は大きく変わりました。65歳で退職するつもりでしたが、当面は働き続けるしかありません。
「正しい判断だったのかは、正直わかりません。でも、あのまま放っておくことはできなかった」
親としてどこまで手を差し伸べるべきなのか――。その答えに明確な正解はありません。ただ一つ確かなのは、田中さんの老後の計画が大きく変わったという事実。深夜の一本の電話が、その人生設計を書き換えることになったのです。
