様々な平成グッズが並ぶ「夢織屋」

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 2025年の新語・流行語大賞に“平成女児”がノミネートされた。これは近年の“平成レトロ”ブームの影響で、平成の女児向けコンテンツが、当時を知る人だけでなく、令和の若者たちからも支持を集めているためといわれる。平成に流行った“シール集め”が改めて脚光を浴び、販売店には行列ができるほど。平成の文化が再注目されているのは間違いない。

 ハイテクなゲームやおもちゃ、推し活ブームの影響で生み出されたハイセンスなグッズが世にあふれるなか、なぜ、ひと昔前の女児向けコンテンツ・美少女コンテンツが受けているのだろうか。平成時代に流行したグッズなどを買い取り、販売しているショップ「夢織屋」の代表“ふうちゃん”氏と“きょどりん”氏に話を聞いた。【文・取材=山内貴範】
(全2回のうち第1回)

【写真】「ビニール水泳バッグ」から「ママ大助かりのクイックルワイパー」まで…“狙っていない素朴さ”が人気の平成女児グッズ

平成はちょうどいいボリューム感

――平成女児が注目され、平成に流行したグッズの人気が高まっています。

様々な平成グッズが並ぶ「夢織屋」

ふうちゃん:ひと口に“平成女児”と言っても、愛好者の年齢層は幅広く、その嗜好も多様なんです。例えば、「セーラームーン」が懐かしいと思う世代と、「アイカツ!」を懐かしいと思う世代ではかなり違いますからね。とはいえ、昭和は64年までありますが、平成は31年までなので半分くらい。ちょうどいいボリュームだと思います。

きょどりん:平成女児といわれるコンテンツは、2世代にわたって人気があります。昭和レトロとは異なり、平成レトロはリアルタイムで体験してきた人たちが、ちょうど現役世代ど真ん中なのです。お母さん世代が懐かしんでいるのを見た子供が「平成のグッズはかわいい」と感じて、買い求める印象もありますね。

――平成レトロに特化した店をオープンしようと思ったきっかけは何ですか。

ふうちゃん:私は個人的にもアニメや漫画、ゲームなどが大好きで、今までにそれらと関係のない会社で仕事をしたことがないのですが(笑)。仕事をするなかでわかったのが、平成に作られたコンテンツはお客さんの反響が大きいということ。つまり、オタクだけでなく多くの人々に刺さるというわけです。

 総じて、日本人は昔のモノが好きなんですよ。先ほどのきょどりんの話にもありましたが、平成レトロは現在20〜30代の大人たちが、子供だった頃に楽しんだコンテンツです。オタク以外にも幅広い社会人に刺さっているからこそ、購買意欲も高まり、盛り上がっているのだと感じます。

きょどりん:あと、平成と比べて、令和に誕生した女児向けコンテンツが少ないことも影響しているかもしれません。「プリキュア」のようにシリーズで繋がっているものはありますが、完全に新規の作品は平成と比べて少ない。そんなこともあって、「アイカツ!」や「プリパラ」のグッズは、ものすごく売れます。小学生の頃に遊んでいた高校生も、懐かしがって買っていますね。

懐かしさの基準が変わった?

――なんと、現役の高校生が、小学生の頃に親しんだものを懐かしんでいるのですか。

ふうちゃん:「アイカツ!」はコンテンツが誕生して10年以上経っていますが、既に、一部の人たちにとっては懐かしく感じられる存在になったようです。私が最近感じていることですが、一昔前の高校生よりも、今の高校生の方が、考えが大人っぽくなるのが早いかもしれません。昔のものを好きになる年齢が、昔よりも若いといいますか。

――確かに、それは私も取材をしていて感じます。

ふうちゃん:一般的には、“平成はまだレトロではない”と感じる人も多いと思います。でも、“懐かしい”の基準というか、感じ方が変わってきたんだと思います。友達が「Re:ゼロから始める異世界生活」を「懐かしいなあ」と言ったのを聞いたときは、あなたはどの時空から来たんだと思ったのですが(笑)、彼女に言わせれば、「10年以上経ったコンテンツはレトロ」なんだそうです。

きょどりん:当店の1号店では、平成の美少女ゲームやアニメのグッズを販売しているのですが、10〜20代の人が、2000年代後半に流行った「けいおん!」のような作品のグッズを買うんですよ。先日も中学生が「けいおん!」がローソンとコラボしたグッズを買っていましたが、極まっているコレクターが集めるものを若い世代が買っていく光景は新鮮でしたね。

 私の印象ですが、どうも、若い子たちは2000年代のアニメ文化やインターネット文化に一種の憧れがあるようなんですね。「ニコニコ動画」の全盛期に興味があるという人もいましたし。当時のアニメをNetflixなどの配信サイトで見て、素直に感動したという人も多いようです。

ふうちゃん:私は1990年代にヒットした「サクラ大戦」が好きなのですが、当店のお客さんで、2人の高校生が関連商品を買ってくれるんですよ。それに、私から「サクラ大戦」の話を聞くのが好きなんだそうです。

――「サクラ大戦」が令和の高校生に受けるんですね。

ふうちゃん:高校生の間で一番流行っているのはもちろんソシャゲですが、アプリを開いたらすぐに美少女が出てきますし、ネットを見たらいくらでもそういう絵を見ることができるわけですよね。そういった環境に慣れてしまうと、人はかわいい以外の魅力を追求するようになっていくのだと思います。

サクラ大戦」はかわいいだけでなく、熱いとか、ときめきとか、人生のいろんな感情を体験できる作品です。今のソシャゲにハマればハマるほど、欠けているものを探しに行く人がいる。昔のゲームは、ゆっくりと楽しみながら良さを感じるものが多い。これは令和の時代のコンテンツにはない魅力だと思います。

平成時代のグッズのターゲットは日本人

――平成時代に製作されたグッズの魅力はどんなところにあるのでしょうか。

きょどりん:平成のグッズは、今ほどマーチャンダイジングがしっかりしていないせいか、どこか愛嬌があります。オタクとしていじり甲斐があると言いますか。例えば、女の子向けの“クイックルワイパー”のような商品があるんですが、いったい誰に売っているのか意味不明ですし、思い付きで作っているんじゃないかと思ってしまう(笑)。

 現在のグッズはデジタルと連動したりしてハイテク化が進んでいますが、平成は素朴な遊びが中心です。しかも、ボタンを押せば光るだけだったり、シールを貼っただけだったり、そんなシンプルな作りであるにもかかわらず、今よりバブリーで、メッキが厚かったりと贅沢な作りだったりします。

 現在のほうが性能や成型技術は優れていると思いますが、平成時代のグッズも完成度では決して負けていません。むしろ、現代では見られない工夫があったりして、興味深いです。

ふうちゃん:平成のグッズはあくまでもターゲットは日本人なので、“日本”的なセンスで作られていますが、今は“国際”的なセンスで作られています。1980〜90年代にも海外に届いていた日本のアニメはありましたが、現在ほど、最初からグローバル市場を意識して作られていたわけではありませんでした。2000年以降は海外展開を意識して作っているので、グローバル感覚があるんですよ。

いい意味で“ダサい”のが魅力

――それはわかります。最近のグッズはちょっとカッコよすぎて、私はついていけなくなってしまいました。

ふうちゃん:令和になると、日本のアニメが本格的に海外でも受け入れられるようになり、日本を訪れる外国人観光客も増えました。そんな経緯もあり、令和のグッズは、外国人を意識してスタイリッシュに作られていると思います。

 対して、平成の頃は、日本の玩具メーカーにはそういったセンスがまだありませんでした。だからこそ、平成レトロは日本人の心にこそ刺さると思います。実際、当店は外国人観光客が1割くらいしかいないんですよ(笑)。

きょどりん:いい意味でダサい方がいい、というのはありますよね。洗練され過ぎていると、こっちが付け入るスキがないし、どこか微妙なところにツッコミを入れたがるのはオタクの習性じゃないですか(笑)。だからこそ、平成レトロに回帰するファンが一定数いるのだと思っています。

第2回【「平成レトロ」ブームで“シール集め”に脚光も…“ギブアップ”する小売店が続出する「薄利多売」「転売屋」という難題】では、平成グッズの中でも特に「シール」の人気が急上昇していることについて、その理由や、販売側の苦悩について、平成グッズ専門店の代表の方に話を伺っている。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部