バジャドリー戦で奮闘をみせた久保。(C)Getty Images

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 今シーズンのラ・リーガも残り10節となった。欧州カップ戦の出場権獲得を目指すレアル・ソシエダにとって負けられない戦いが続くが、その10試合の中で最下位に沈むバジャドリーは最もイージーな相手だった。

 ただソシエダは、中2日で、大一番であるレアル・マドリーとのコパ・デル・レイ準決勝第2戦を控えている。

 イマノル・アルグアシル監督が大幅なローテーションを採用する条件が整っていたが、その一方でタケ・クボ(久保建英)をはじめミケル・オジャルサバル、マルティン・スビメンディらチームにはスタメンを外れることをよしとしない主力が大半を占める。おまけに今シーズン、複数の主力を温存した試合でソシエダは、何度も苦戦を強いられてきた。

 指揮官が、その3人を揃ってスタメンで起用し、ローテーションの採用を最小限にとどめたのはその2つの疑いを裏付けていた。

 裏を返せば、万全を期したわけだ。しかし立ち上がりからソシエダは優勢に試合を進めながら、パスのボールスピードが上がらず、ゴール前での迫力や積極性も欠いていた。シュートの機会も限られ、相手GK、アルナウ・ラフスは好セーブを披露する必要もなかった。

 そんな中でも枠内シュート2本で2得点を挙げたが、後半ロスタイムに1点差に詰め寄られ、さらにその直後にもハビ・ロペスの相手のFKを頭でクリアしそこなったボールが腕に当たった可能性があるとしてVARチェックが入るという冷や汗ものの勝利だった。
 
 そんなチームと同様に、タケも序盤からエンジンがかからない様子だった。積極的にボールに関与していたが、相手DFの死角に入り込んだり、決定的なパスを出したり、もちろんシュートを放つこともままならなかった。

 33分に、膝の重症から復帰し、数か月ぶりに右サイドでコンビを組んだアマリ・トラオレにヒールで背後にパスを送り、チャンスを演出したのが前半、唯一の見せ場だった。
【動画】久保建英の超絶ノールック背面パス
 しかしエンドが変わった後半、突然目覚めた。開始早々にレッドカードを突きつけられてもおかしくないタックルを受けたことで闘志に火が付き、インスピレーションが降りてきたようなプレーを連発した。
 
 後ろからパンツを引っ張られて転倒すると、両手を広げてPKをアピールし(52分)、ボールを受けると、素早く振り向いてドリブルで突進して、ポスト右をかすめる低弾道の鋭いシュートを放ち(55分)、キレキレのドリブルで一気にゴールへと迫った(63分)。ほぼ15分間の出来事だった。

“怒りの15分”を経て、81分にタケが交代でピッチを退く際には、スタンドからスタンディングオベーションが沸き起こった。突出したパフォーマンスを披露したわけではなかったが、この日ソシエダの選手の中で唯一その栄誉に浴した。
 
 内容はどうあれ、ソシエダは貴重な勝点3を獲得した。マドリー戦にも弾みがついた。タケが特別にモチベーションを喚起させられるスタジアムがあるとすれば、それはサンティアゴ・ベルナベウだ。

 タケのインスピレーションにかかる期待は当然ながら大きい。古巣でもあるマドリーももちろん警戒してくるはずだ。キックオフは4月1日スペイン時間の21時30分。タケ、君の夜が来た!

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸