人々は普段何気なく「電気」を使用していますが、よく考えてみると一体どうやって電気が流れているのか分からないものです。「そもそも電気とは何であり、特定の物質が電気を『伝導』するのはなぜか」という疑問について、電子回路エンジニアのルカムトゥフ氏が解説しています。

But good sir, what is electricity? - lcamtuf’s thing

https://lcamtuf.substack.com/p/but-good-sir-what-is-electricity



学校で原子について習う時、一般的には「中性子と陽子で構成された原子核の周囲を電子が飛び回る」という以下のような模式図を使用する事が多いはず。



上の図は直感的で分かりやすいものの、実際の電子は円軌道を描くわけではなく、電子は量子力学的な空間内の特定の分布として存在するとのこと。とはいえ、ルカムトゥフ氏は「今回はそれぞれの原子もしくは分子に一定数の電子があり、一定数の殻におさまっている事を理解すればOK」と述べています。

電気の流れには電子の動きが深く関わっていますが、原子の最も内側の殻に収まっている電子は安定しており、外部に影響を与えたり外部から影響を受けたりすることは少ないとのこと。しかし、外側の殻にある電子は外部とさまざまな相互作用を引き起こします。

原子が結びついて分子となる化学結合も相互作用の一例です。共有結合では原子がくっついて新たな「軌道」を生成し、お互いの電子の一部が新たな軌道に入っていきます。イオン結合では片方の原子からもう一方の原子へ電子が移動し、結果として生じる静電場によって原子同士がまとまって分子を生成します。



原子に存在する電子の一部を一時的に操作する難易度は高くなく、一般家庭でも「静電気」としてよく観察されています。2つの異なる物質をくっつけると、電子がランダムに移動することがあります。物質を離したときに電子の均衡が崩れていると静電気が発生するわけです。電子は容易に物質の表面から引き離されたり堆積したりしますが、付近の分子に空孔がなければ動き回ることはできません。

金属では原子が高密度で均質な格子を形成するため、電子の軌道が融合して材料全体に広がります。そのため、電子は自由に流れるガスのような動きをすることが可能になるとのこと。金属から電子を一つ抜いて反対側に注入すると、静電気力(クーロン力)によって隣の電子が移動し、さらにその隣の電子が移動し……というプロセスを繰り返すことで金属全体の電子が移動します。この電子の流れが電気の正体です。



電子の動きが伝わる速度は秒速約30万kmと非常に高速ですが、金属内のそれぞれの電子の動きは非常にゆっくりで、1時間に1cmも移動しないとのこと。この違いについて、ルカムトゥフ氏は「誰かに向かって叫んだ場合、声が伝わる速度は非常に速いものの、叫んだ人の場所にある空気分子が聞き手に届くのはずっと遅い」と例を挙げています。

電気が伝わる仕組みには、真空中の熱電子放出による電子の移動のほか、プラズマや極性の強い溶媒中でのイオンの動きなど、金属以外の仕組みも存在しているとのこと。とはいえ、「現代の電子回路で使うことはほぼ無いだろう」とルカムトゥフ氏は述べました。