上田西の快進撃を支えたCB緑川周助。流経大柏戦は無念の負傷欠場も、笑顔で大会を去る。生まれ育った栃木の強豪校・矢板中央と戦えたのは一生の宝物【選手権】
7年ぶりの選手権。下馬評は決して高くなかったが、上田西は破竹の勢いで快進撃を続けた。初戦となった2回戦で徳島市立を2−1で下し、3回戦では過去4度の選手権ベスト4を経験している矢板中央を2−0で撃破。1月4日に行なわれた準々決勝では優勝候補の流経大柏に0−8で敗れたものの、多くの人に強烈なインパクトを残した。
ただ、2・3回戦と違ったのは、最終ラインに自慢の堅守を支えていた背番号5がいなかったこと。CB緑川周助だ。矢板中央戦の後半開始早々、相手選手との接触で右の鎖骨を負傷。プレー続行不可能となり、交代となった。チームは勝利したが、試合後に病院に直行した緑川は離脱が決定。準々決勝は仲間たちの戦いを外から見守った。
最後はグラウンドに立てないまま終戦――。試合後、ミックスゾーンに姿を見せた緑川は悔しさを滲ませながらも、晴れ晴れとした表情で「本当に楽しかった」と今大会を振り返った。
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高校サッカーに悔いはない。なぜならば、矢板中央と対戦できたからだ。緑川は栃木県の出身。しかも、矢板市の隣にあるさくら市で生まれ育ち、矢板中央とは縁が深い。
栃木SCのOBで長谷川具三氏が立ち上げた「ともぞうSC」に籍を置いていた中学時代に矢板中央のMF渡部嶺斗やFW朴大温と対戦した過去があり、実際に自身も地元の強豪校への進学を考えた時期もあった。だが、メンタル面が弱かった自分を鍛えるべく、県外の高校で寮生活を送りたいという考えで上田西の門を叩いた。矢板中央と対戦が決まった2回戦の試合後、緑川はこんな言葉で意気込みを語っていた。
「矢板中央に行かなくても、全国大会で戦える力を示したい」
そうした強い覚悟を持って臨んだ一戦では無念の負傷交代となったが、チームの勝利に貢献できた。「中学時代はジャイアントキリングをあまりした経験がなかったし、本当に地元のチームと対戦できて、楽しくて気持ち良かった」というコメントからも、充実感が見て取れる。
自身の成長を示す舞台に立ち、地元の高校から勝利を奪えたことは一生の宝物。見ず知らずの土地でチャレンジを続けてきた男の決断は間違っていなかった。最高の成功体験を胸に、緑川は次のステージに進む。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
