AIバブルは崩壊!? “落ちていくナイフ”の掴み方<大山季之の米国株マーケット・ビュー>
◆突如、日米株式市場に吹き荒れた「夏の嵐」の正体は?
先週末から今週初めにかけての日米株式市場の暴落相場を振り返ってみると、日本市場では日銀の植田総裁による想定以上の「タカ派発言」に端を発して、米国景気のリセッション懸念を背景としたFRB(米連邦制度準備理事会)の利下げ幅拡大観測、急速な円高進行といった複合的な要因が重なり、最終的には個人投資家を巻き込んだ「パニック売り」へと繋がった、という流れだ。
一方、米国市場では、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果は想定の範囲内だったが、8月1日に発表された米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数が市場予想を大幅に下回り、さらに翌日、2日の雇用統計でも失業率、失業者数がともに市場予想より大幅に悪化したことで、リセッションの懸念が急速に高まり、投資マネーがハイテク株を中心とした株式マーケットから資金を引き揚げた、という流れだった。
とは言え、8月1日から5日にかけての下落率は、S&P500株価指数は約6.0%、ナスダック総合指数 は約7.9%の下落率に過ぎず、約19.5%暴落した日経平均株価と比較すれば小さな下落だ。一時は年初来安値を更新した日本株に対して、S&Pもナスダックも、依然として10%前後の上昇率を維持している。
この一連の日米両国の暴落劇は、一体何を意味しているのだろうか。まず日本株に関しては、少々乱暴な表現かもしれないが、やはり世界の投資マネーから見れば日本株は「米国株のデリバティブの一種」に過ぎなかったのではないかということだ。この半年間続いた円安の流れに乗り、先物を中心に「円売り日本株買い」のポジションを取っていた海外のヘッジファンドなどの機関投資家が、日米金利差の縮小と米国景気の変調を感じて一斉にポジションを解消したことが、暴落の引き金を引いたことは間違いないだろう。
◆リセッション懸念高まる米国経済、9月の米利下げは0.5%が濃厚に
では米国株はどう見ればいいのだろうか。先週のFOMC以後、景況感、雇用情勢の悪化が明らかになるとともに、FRBの利下げピッチが速まるのではないかという見方が増えている。実際、シカゴ・マーカンタイル取引所の「フェド・ウォッチ」では、これまで9月の利下げは0.25%とみられていたが、一気に0.5%利下げへと引き上がっている。これまで既定路線となっていた「ソフトランディング」のシナリオが崩れ、「ハードランディング」の恐れがある、と考える市場参加者が増えているのだ。だが果たして米国景気はそれほどまでに深刻な状態なのだろうか。
確かに雇用に関しては、失業率は想定以上に悪化しているし、失業者数も増加している。先週、インテル が全従業員の15%、1万5000人のリストラを発表したこともネガティブなアナウンスだった。さらに7月の失業率が4.3%となったことで、直近3カ月の平均失業率が過去1年間の最低値を0.5%以上上回り、リセッション入りの兆候を示す「サーム・ルール」が発動したことも懸念されている。
だが、GDPの約70%を占める個人消費を客観的に見てみると、そこまで米国景気が急速に悪化しているとは思えないのだ。アメリカには、リアルタイムに近い形で個人消費の動向を示す統計データがいくつか存在するのだが、その一つ、米運輸保安局(TSA)が発表する日次搭乗客数の数値を見ると、コロナ後、現在まで右肩上がりで乗客数が増加し続けている。さらに全米のレストラン・ディナー予約数、ブロードウェイの観客動員数の週次、月次データも順調に推移している。

