AMDのグラフィックスカードであるRadeon RX 7900 XTXは、ホットスポット温度が110℃に到達してサーマルスロットリングが発生することが報告されています。AMDも、一部のRX 7900 XTXにおいてGPUクーラーに不具合があり、オーバーヒートとサーマルスロットリングの問題が生じていることを認めています。ソフトウェア開発者でYouTuberのジェフ・ギアリング氏が、RX 7900 XTXを実際にテストしてサポートに連絡してみた経緯をブログで公開しています。

How many AMD RX 7900 XTX's are defective? | Jeff Geerling

https://www.jeffgeerling.com/blog/2023/how-many-amd-rx-7900-xtxs-are-defective

以下のムービーでは、実際にRX 7900 XTXを分解した上で、ベーパーチャンバーとヒートシンクの接触に不具合があるのではないかと推測されています。

We open the 7900XTX Vapor Chamber - YouTube

ギアリング氏は、RX 7900 XTXを地面に対して水平になるように取り付けた状態で、MSIのGPUベンチマーク&ストレステストツールであるMSI KombustorでFurMark(donut)を実行し、GPU使用率100%のストレステストを行いました。設定は解像度1280×720ピクセルのウィンドウモードで、レンダリングAPIはOpenGL 3.2.0です。



すると、7分も経たないうちにGPUのジャンクション温度が110℃に達し、ファンの回転数が毎分2900回転に到達。GPUクロックと消費電力が約5〜7%低下しました。GPU温度は60度前後を示しているので、ホットスポット温度とGPU温度の差が非常に大きくなっています。



今度はPCを一度シャットダウンした後、PCのマザーボードを90度傾けて、RX 7900 XTXが地面に対して垂直になるように置き、再びFurMark(donut)を同じ設定で実行しました。すると、今度はGPU温度が70度前後、最大ジャンクション温度が92℃で、ファンの回転数も毎分1700回転に落ち着き、サーマルスロットリングも15分以上見られなかったとのこと。



RX 7900 XTXの向きを何度か変えながら同じ実験を繰り返しましたが、結果は「RX 7900 XTXを水平になるように置くとフルパフォーマンスは5分ほどしか続かないのに対して、垂直になるように置くとフルパフォーマンス状態が長く持続する」というものになりました。この結果から、ギアリング氏はこれまでの指摘通り、RX 7900 XTXのベーパーチェンバーに何らかの問題があるのではないかとにらんでいます。

ギアリング氏は、問題の発生したRX 7900 XTXの製造元であるSapphireのサポートに連絡。すると、Sapphireのサポートから「RX 7900 XTXのオーバーヒートは既知の問題です。販売店に連絡して返品し、RX 7900シリーズの別バージョンを購入してください」という返答を受け取ったそうです。しかし、修理や交換、買い直しについて切り出すと「このサポート窓口ではそのような要求を受け付けておらず、対応しているのは製品サポートと保証サービスのみです。在庫状況については引き続き販売店のサイトをご確認ください」と断られたそうです。

ギアリング氏は、AMDがRX 7900 XTXのオーバーヒートが「一部の限られた製品で発生している」という声明を発表したことについて、「一部の限られたカードで発生していることをわかっているのに、すぐに在庫と交換できないのはおかしい」と指摘。ギアリング氏は、本当に一部のカードで発生していることがわかっていれば一連のシリアル番号から問題のグラフィックスカードを絞り込めるはずだと述べ、本当はAMDが問題の全容を把握していない可能性、あるいはRX 7900 XTXの全製品に当てはまる設計上の欠陥である可能性を主張しています。