タイガー・ウッズを上回る快挙!新スター、トム・キムのオーラがすごい【舩越園子コラム】
21歳になる以前に米国男子ツアーで複数回優勝を遂げたのは1996年のタイガー・ウッズ以来、26年ぶりの快挙だ。
キムの20歳3か月18日はウッズの20歳9か月20日を上回るスピード出世。そして、1932年のラルフ・ガルダール(20歳2か月2日)に次ぐ史上2番目の若さでの快挙となった。
キムが最終日をパトリック・カントレーと首位タイで迎えようとしていたとき、1993年全米プロ覇者でゴルフ解説者のポール・エイジンガーは「キムはすでにスターだが、彼は間違いなくスーパースターになる」と予言した。
そして、冷静沈着ゆえに「アイスマン」「パティ・アイス」と呼ばれるカントレーと堂々の優勝争いを演じ、最後は3打差で記録づくめの2勝目をマークしたキムが、まさにスーパースターに近づきつつあることを、今、誰もが感じていることだろう。
キムの名が初めて広く認識されたのは、彼が初優勝を挙げた今年8月のウインダム選手権のときだった。
2018年にプロ転向後、アジアの下部ツアーやアジアツアーで合計6勝を挙げ、昨年のアジアツアー賞金王に輝いたキムは、今年の全米プロ、全米オープン、全英オープンにも出場。
まだ米国男子ツアーの正式メンバーになる前段階のスペシャル・テンポラリー・メンバー資格のまま出場した8月のウインダム選手権を2位に5打差で圧勝し、シンデレラボーイとして注目を集めた。
9月のプレジデンツカップには20歳の若さで世界選抜チーム入り。初出場をモノともせず、米国チームの強敵たちと伍して戦ったキムの活躍は世界選抜チームの「大人たち」を牽引する熱いエネルギーになった。
飛距離も正確性も高く、小技で見せる精緻な読みとタッチも群を抜いている。だが、そうした技術面に加え、屈託のない太陽のような笑顔を讃えながら前だけを見つめて進んでいくキムには周囲を引き付ける不思議なオーラが感じられる。
中国、タイ、オーストラリア、フィリピンなど、いろいろな国々で育ち、韓国語、英語、タガログ語を自在に操るトライリンガル。国際性、社交性、順応性に溢れている。
プレジデンツカップからは、かつてのリッキー・ファウラーの長年の相棒キャディ、ジョー・スコブロンとタッグを組んだ。米国男子ツアーのコースや攻略法を熟知し、さらにはスター選手のサポートの仕方も心得ているベテラン・キャディの力を得たことは、20歳の若さと未熟さを補う上で効果は大だ。
「『スターになったね』なんて言われるけど、僕は本当にスターなのかな?スターというのはジャスティン・トーマスやジョーダン・スピースのことで、僕にはまだまだやるべきことが山ほどある」
そんなキムの謙虚さが、彼の魅力をさらに増大させている。
キムとカントレーが首位タイで迎えた今大会の72ホール目。終始、高いフェアウエイ・キープ率を誇ってきたカントレーが、あのホールではティショットを左のブッシュに入れ、第2打は脱出失敗。アンプレアブル宣言後の第4打を池に落とし、トリプルボギーを喫して優勝を自ら手放す結果になった。
2位タイに甘んじたカントレーは「2打目でフェアウエイに出せなかっただけのこと」と淡々と振り返ったが、無理矢理2打目を打たずにアンプレを宣言していたら、もしかしたら結果は違っていたのかもしれず、あの場面でクールなはずのカントレーの判断を狂わせたのは、キムが無邪気な笑顔の奥から漂わせる不思議なオーラのせいだったのかもしれない。
勝利したキムは、そんなカントレーへの気遣いからか、神妙な表情を見せていた。
「4日間、ノーボギーで安定したゴルフができたけど、最後の18番は、僕にとっては、とてもラッキーだった」
だが、「タイガー・ウッズ以来の快挙ですね」とマイクを向けられると、うれしそうな笑顔になった。
「はい。僕は米国男子ツアーで戦えることを心から楽しんでいます」
いろんな意味で、米国男子ツアーの新スター、いや新スーパースターの誕生であり、彼は明日には米国男子ツアーのチャーター便で日本に到着。ZOZOチャンピオンシップにやってくる。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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