※この記事は2015年10月14日にBLOGOSで公開されたものです

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10月7日、「新経済連盟」(代表理事・三木谷浩史楽天社長)の会員交流会が行われ、「企画力で勝つ!」をテーマに、秋元康氏と小山薫堂氏による対談が行われた。モデレーターは、新経済連盟クリエイティブディレクターの齋藤太郎氏(株式会社dof代表取締役社長)が務めた。会場には三木谷社長のほか、サイバーエージェントの藤田晋社長、GMOインターネットの熊谷正寿社長など、新経済連盟加盟社の幹部らおよそ200名が詰めかけ、両氏の話に耳を傾けていた。 編集部では、この日の対談の内容を抜粋でお送りする。※ "記憶に残る「幕の内弁当」は無い"~秋元康☓小山薫堂「企画力で勝つ!」(後編) はこちら

最近のテレビは、視聴者が何を望んでいるのか、どうやったら視聴率が取れるか、ということを考えすぎ

齋藤:まず、「企画」をする上で、一番大事にしていることはなんでしょうか。

小山:僕は社内ではいつも「企画とはサービスである。サービスとは思いやりである。」とスタッフに言っています。つまり、何を求められているか、何を欲しているか。どれだけ人々の気持ちを慮れるかというのが「企画」なのではないかなと。

いつも自分に問いかけている3つのことがあります。それは、「その企画は新しいか」、「その企画は自分にとって楽しいか」、「その企画は誰を幸せにするのか」。3つとも当てはまっていたらすごくいいなと。

齋藤:人々を幸せにするというのは?

小山:より多くの人というよりも、一人のためとか、近い人を喜ばせるとか、それぐらいのほうがいいかなと。先輩、「それは違うだろ!」みたいな指摘をお願いします(笑)。

秋元:全くその通りです。小山薫堂は人格者なので、優しく穏やかに、思いやりとかサービスと言うんですけども(笑)、それ別に異を唱えるわけではなく、ちょっとやり方が違うのは、僕はとにかくマーケットを見ない。

昔は世の中の動きとか、"人は何を望んでいるんだろうか?"、ということを考えていたんですけど、この10年、20年ぐらいですかね、それをやればやるほど、結局過当競争に巻き込まれる。

つまり、そこにどんな魚がいて、どうなっているかが分かるほど、そこには漁船が集まります。でも、ある時そうじゃないかもしれないなと思ってからは、とにかく自分が信じるものをやり続けることの方が面白いかなと。

それは多分僕が薫堂君のような人格者じゃないからかもしれないんですけど(笑)、例えばみんなが校庭でドッジボールをやっている時に、途中で混ざっても勝てないなという気がするんですね。だから、みんながドッジボールをやっている時に、僕はたった一人で鉄棒を始めて、鉄棒で何か面白いことをやっているうちに、ドッジボールをやっているみんなから「混ぜて欲しい」と言われる方がいいかなと。

僕は「企画」をそういうようなことで考えている気がするんですね。外を見ずに、自分の中だけの面白いものがどこまで広がるかっていう、その"思い込み"と"思いあがり"の賜物のような気がするんですよ。

だから、決して全てがうまくいっているわけではないし、偉そうなことを言うつもりもなくて。結局夕暮れまで、鉄棒に一人きりだったなっていうこともよくある。でも、みんなが望んでいるものを探せば探すほど、ダメになるような気がして、全く見たことがないものとか、やったことがないものを、追い続けている気がします。

例えば、最近のテレビは、視聴者が何を望んでいるのか、どうやったら視聴率が取れるか、ということを考えすぎて、みんなが想像する"予定調和"を壊せなくなったと思っています。

スタッフにずっと言っているのは、"カルピスの原液を作らなきゃダメだ"

小山:僕、秋元さんがすごいと思う瞬間があるんですよ。ニューヨークに先月一緒に行った時、あともう一人、一緒に行った方が、ずっと色んな人の悪口を言われていたんですよ。そして突然僕に、「で、薫堂は誰がキライなんだ?」と(笑)。

僕はキライな人って、そんなにいないんですよね。「誰って言われても、あんまりいないんですよ」って言ったら「だからお前はダメなんだ!」と。「キライな人を言わない人間を、俺たちは信用しない!」みたいなことを言われて。ちょっと強がって「いや、いますよ。すっごいイヤな奴いますよ」って言ったら「じゃあ、誰?」って。「今、名前を思い出せないんですけど」って言ったら「思い出せないなら、キライじゃないんだよ」って。

その時に、秋元さんが凄いなと思ったのは、とにかく嫌いな人がいると。で、その人のことが嫌い過ぎて、好きなんじゃないかなと錯覚することがあるから、年に一回、ご飯を食べに行って"やっぱり嫌いだ。よし、俺、ブレてない"って確認するんだって言うんですよ。それぐらい自分の思いを守り抜いて、近寄る人を寄せ付けないぐらいの強い思いを持って、色々な企画をやられているのかなと思ったら、すごいなと。

僕はやっぱり、誰かに嫌われているなと思ったら「じゃあ、これはやめとこう」っていう気になるんですよね。企画って、Win-Winじゃないとダメだなと思ってしまうタイプなんですよ。自分だけ儲けていると思われた瞬間に、共感を得られなくて失敗するだろうなと思ってしまうんですよね。

だからくまモンも、本当に儲けてないんですけど、「僕は本当に儲けてないです」と言っておかないと、うまく回らないんじゃないかなと思います。でも秋元さんは、AKBで相当儲けてらっしゃると思うんですけど(笑)、それを批判にも感じさせないぐらいの強い企画力をぶつけるからいいんじゃないでしょうか。これが中途半端な企画力だと、批判されるんじゃないかなと思います。

秋元:この流れだと、薫堂くんがいい人で、僕が悪い人みたいな(笑)。僕はWin-Winにしていないような。(笑)

小山:違うんです(笑)

秋元:薫堂くんが言わんとしていることは分かります。嫌いな人が、なぜ嫌いかっていうのは、自分の方向性の問題なんですよね。つまり、好きでもない嫌いでもない、っていうのは、結局自分がないから、好きでも嫌いでもないわけじゃないですか。自分を持っていたら、必ず好きか嫌いはあるわけで。その人が嫌いっていうのは、きっと自分にすごく似ているか、自分と全く価値観が違うかのどっちかなんですね。なので、会ってご飯を食べるぐらいだから本当に嫌いじゃないのかもしれないですよね。

僕は、もうどう思われてもしょうがないなというところがあるんですけどね。 もちろん僕も薫堂くんみたいに、みんなから好かれたいですし、いいイメージでいたい。この男はすごくいいイメージで売ろうとしているでしょ。本当は腹黒いんですよ(笑)。

僕は、「企画」というのは、イソップ物語の「北風と太陽」がいなきゃいけないと思っています。つまり、旅人、あるいは世の中、ユーザー、消費者。とにかく風がビュービュー吹いていても、絶対にコートを脱がない。だから、太陽のようにポカポカさせて、自分から脱いでもらうしかない。

昔だったら、場所の悪いところにお店出しても絶対ダメじゃないですか。だけど、今はネット時代ですから、中身さえ良ければ、太陽のようにポカポさせていれば、旅人がコートを脱ぐように、お客さんが近づいて来るわけですよね。

だから、僕はそこの一点だけですかね。企画をする時に"これの優位性はなんなんだろう?"と。

スタッフにずっと言っているのは、「カルピスの原液を作らなきゃダメだ」と。カルピスの原液さえ作れば、例えば、カルピスウォーターにさせてもらえませんかとか、ホットカルピスにさせてもらえませんかとか、アイスクリームのカルピス味を作りたいんですけど、というお話をいただけて、薫堂くんの言うところのWin-Winになるわけじゃないですか。

だけども、この原液がなくて、なんとなく当たっちゃったものっていうのは、すぐ同じものが作られるし、競合が出て来る。だから常に、この優位性はなんなんだろうなと考えるということです。

アイドルを作る時も、他のアイドルとどこが違うのかなと。それは秋葉原に専用劇場があって、そこで365日公演をしているアイドルはいないだろうなと考えるとか。
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"失敗した石も捨てずに持っておく"という思いがある

小山:僕と秋元さんで一緒にやって失敗したって企画もいくつかあるんですけど、一つは、『おニャン子クラブ』の後に、『ねずみっ子クラブ』ってのをやったんです。おニャン子は高校生だったんで、「小学生だ」とか言って。秋元さんが企画して、日テレのとんねるずの番組でやったんですけど、全く当たらなかったんですよ。

その後も、秋元さんが企画して、僕が構成をやった「最大公約ショー」という番組もダメでした。選挙公約が流行った時代だったので、「公約をエンターテイメントにしよう」って。芸能人が「もし、今度◯◯を出来なかったら××します」って宣言をしてもらうというもので、今でも面白かったなと思っているんですけど、あの番組をやり直したやつを出来ないかなって思ったりもします。

僕は"失敗した石も捨てずに持っておく"という思いがあるんですけど、秋元さんは失敗したアイデアも、もう一回やろうと思いますか?それとも、いいやと思って捨てちゃうんですか?

秋元:小泉今日子さんの『なんてたってアイドル』は、前に違う形でやっていたものなんです。アイドル自身が「アイドルは楽しい」っていうのが面白いなと思って。

でも、なぜ『ねずみっ子クラブ』や『最大公約ショー』が当たらなかったのかなと思うと、当てようと思ってなかったからなんだよね。やることが楽しかったから。とんねるずとは、そういうことが多いんですけど、視聴率を取れなくても、やっている本人がおもしろいからと。その究極が、『オールナイトフジ』だったような気がするんです。

映画も何本もやっていて、一番始めに『君は僕をスキになる』が大ヒットして。その後、自分で監督した『グッバイ・ママ』もヒットして。「映画楽勝だな」と思っていたら、5~6作、当たらなかったんです。それも、当たろうが当たらなかろうが関係なくて、自分が作りたいものを作っていたからなんですね。

僕らの仕事ってすごく分かりやすくて、パーティーに行ったら、映画関係者が、「秋元さん、また何かやりましょうよ」って言って来るんだけど、目にはやる気がないのね。明らかに社交辞令。「秋元さん、何かないですか?」って話をしているんだけど、目は違う人を探している。こうやって、チャンスは失われていくんだなって。

それで"今回は当てなきゃいけない"と思った時に、人はどうするかというと、まずバットを短く持つ。当てにいくから長打は出ない。例えば、"もう映画の仕事はできないかもしれないな"と思っていた時、バットを短く持って作ったのが『着信アリ』というホラー映画なんですよ。ホラー映画だから、ある程度のお客さんは間違いなく入るんですね。そこに三池崇史さんという非常に優秀な監督を持ってきた。それから当時はそんなに有名じゃなかったんですけど絶対来ると思っていた柴咲コウにお願いして。大ヒットはしないけれども、確実に塁に出る、というのをやりましたよ。

AKB48の場合は、バットを一番長く持って、当たらなくても全然いいと思って、秋葉原に劇場を作りました。多分、薫堂くんの『おくりびと』なんかは、バットを長く持って、やりたいことを、映画好きの人と集まってやったんだと思う。あれ、当てにいってないでしょ?

小山:全く当てにいってないです。ただ、賞は獲りたかったんですよね。

秋元:どこの誰も見向きもしなかったでしょ。外国の賞を取ってからだよね。

小山:そうですね。モントリオール映画祭で、賞を獲ったことがきっかけでしたよね。

最近思うのは、何を作り出したかっていうのも大切ですけど、それ以上に、作り上げた企画が誰に出会うかっていうのが、すごく大切な気がするんです。

例えば、さっき言った「最大公約ショー」も、あの時は、番組のプロデューサーに視聴率が取れなかった瞬間に「もうつまんない」と思われてしまったたんですけど、今なら、ネットのコンテンツになるなっていう方に出会って、また変わっていたのかもしれないし。なので失敗した企画って、たまたま出会った男が悪かったっていう気分で、新しい人を探してしまうんですよね。

企画には"抗生物質"と"漢方薬"がある

齋藤:秋元さんはさっき『ねずみっ子クラブ』と『最大公約ショー』は、「当てようと思わなかったら失敗した」とおっしゃっていました。一方で、最初の"鉄棒の話"は、みんながやっていないことをやるとか、バットを長く持つというお話でした。なんとなく矛盾しているようにも感じます。

秋元:僕は放送作家になりたかったわけでも、作詞家になりたかったわけでもなかったので、遊んでいたんですよね。ずっと遊んでいて、ほとんど真剣にやったことがないんですよ。だから遊んでいるうちに、たまたま当たっちゃったみたいなことがあった。でも、段々責任とかが出て来るようになると、真剣に当てようかなと思い始めました。

『ねずみっ子クラブ』だって、真剣にやっているとは思えないじゃない。『おニャン子クラブ』があって、『ねずみっ子クラブ』って。普通はもうちょっと考えますよ。だから、その冗談がおもしろかったんでしょうね。でも、当てようと思う時は、ちゃんと考える。考えるんだけど、ベースは遊びですよ。遊ばないといけないし、自分が面白いと思わないと。

例えば、セガのコマーシャルを作った時に、セガのドリームキャストっていうゲーム機が出ると。これを作る時、一番考えたのは、当時SONYのプレステが圧倒的に強かったので、いくら「ドリームキャストってゲーム機が出ますよ」って言ったって、その前のセガサターンがボロ負けしていて、これは勝てないだろうと。だから、それをコマーシャルにしちゃおうと考えた。当時、セガの専務だった湯川(英一)さんにお願いして、セガのコマーシャルなのに、プレステの方がおもしろいじゃんっていうのをやろうと思ったんです。これも遊びですよね。

会社もそうかもしれないですけど、企画を当てなきゃいけないなという時には、"抗生物質"と"漢方薬"があります。漢方薬のようにジワジワ効いていく企画と、そうはいってられないから、すぐ結果を出せなきゃいけないという、抗生物質のような企画の両方あるんですね。

つまり、咳やくしゃみを早く止めたいんだっていう抗生物質と、体質改善しなきゃいけないという漢方薬。その両方をどうやって使うかということは、考えますよね。でも、昔は薬という考え方じゃなくて、「面白けりゃいいんじゃないの?」っていうのがずっとあった。年を取ると、自分の中で面白いか面白くないかっていうのが一番大きいですね。それと当てなきゃいけないという責任ですよね。だってそれは、色々託されるわけだから。

昔はね、ある種"外野"なわけですよ。例えば、番組を作るんでも、プロデューサーがいたり、ディレクターがいたり。僕らは放送作家ですから。でも段々、託されるようになると、それは考えなきゃいけなくなる。昔は会議室でも若い作家の一人としていたわけで、段々チーフになったり、自分が企画・構成になってくると、あんまり冒険が出来なくなってくるでしょ。

小山:そういうのはありますよね。

<後編: "記憶に残る「幕の内弁当」は無い"~秋元康☓小山薫堂「企画力で勝つ!」へ続く>