【赤木智弘の眼光紙背】僕たちは何に票を投じるべきか - 赤木智弘
※この記事は2012年12月22日にBLOGOSで公開されたものです
赤木智弘の眼光紙背:第251回読売新聞に、少し気になる記事があった。今回の衆院選では無効投票が普段よりも多かったということで、最も無効票が多かった東京12区を論じているのだが、その論じ方に僕は首を傾げる。(*1)
何を隠そう僕も東京12区の有権者である。しかし、私としては大きく悩むことはなく投票をすることができた。自民党と共に日本をダメにしていると僕が思っている公明党の太田昭宏に入れる気はしないし、極右的言動を繰り返す幸福実現党の服部まさみにも興味はない。
政策的に考えれば日本未来の党の青木愛と共産党の池内さおりの2択ではあるが、未来の党の鳴り物入り的に反原発を叫ぶ態度が好きではないので、同じ反原発ではあるものの、今回は池内さおりに票を投じることにした。
記事では「誰に入れていいかわからない」という後援者がいたとされているが、少なくとも左派的思考を持つ人間であれば、私の思考の通り、最低でも2人の選択肢はあったわけだ。しかしそれがないということは、つまり自民党右派の「自民党に入れたいが、公明党には入れたくない」という人が、投票先を決めかねる状況だったのではないか。ならば問題は「自民党がいないこと」であり、民主党がいないことではない。(*2)
そもそも、どうして東京12区に自民党がいないのか。東京12区は自公協力の流れでコスタリカ方式が取られていたが、かつて東京12区の自民党候補だった八代英太が郵政民営化に反して公認されなくなったために、なし崩し的に公明党のみが候補者を立てる区となった経緯がある。
そうした経緯を無視して単に無効票が多かったことだけに注目し「自民党も民主党もいなかったからだ」と論じるのは、新聞記事としては質的に劣るのではないだろうか。
この記事に対するはてなブックマークのコメントを見ると「12区は穴」というような書き込みがあるのだが、これは完全にこの記事を鵜呑みにして、なにか「東京12区には泡沫候補ばかりで選択肢がない」かのように誤解してしまっているのだろう。
現実には前述のとおり、現状において東京12区は自公の強い安定した地盤であり、新人候補が鳴り物入りで入ってきて勝てる選挙区ではない。だからこそ前回の衆院選で民主党候補として出馬していた青木愛が当選し、当時公明党の代表だった太田昭宏が敗れたことは、当時の民主党の勢いを示す大きなトピックとなったわけだ。
さて、問題としてはこの記事が印象付けるように「誰に入れていいかわからない」から全体の無効票率が増えたのかということだ。少なくとも東京12区では自民党議員の立候補が無かったことが無効票率が増えた原因の1つであるとは言える。そして「誰に入れていいかわからない」のはあくまでも「自民党区議の後援者」、つまり常に自民党に票を入れたい人の考え方であることが予想できる。
しかし、全国的に無効票が増えているのは、けっしてそのような理由ではないだろう。普通に考えても「もう民主党を応援する気はないが、自民党にも入れたくない。しかし政治的には何らかの態度を表明する必要はある」と感じた人が、無効票を投じているのではないだろうか。
今回衆院選の投票率は、59.32%で戦後最低の数値を叩きだした。(*3) しかし、無効票を投じた人たちは、少なくとも投票をした人たちである。だが残念なのはそこで思考停止をしてしまい、今ある選択肢の中から少しでもマシな選択をするという考え方ができてないということだ。
例え弱い候補であっても、いやむしろ弱い候補だからこそ、仕方なしに投票された一票一票であっても、それが政治家の多様性を広げる血肉となるのではないだろうか。
マスコミは自民党か民主党かでばかり政治を報じるが、政治は決して政局だけで判断されるものではない。投票したい党がないなら、少しでも投票したい人を探し、できうるかぎりその名前を書いて票を投じるべきだと、僕は思う。
*1:自民も民主もいない東京12区、無効投票1割超(読売新聞)http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/news/20121219-OYT1T00349.htm
*2:そもそも民主党がいないといっても、今回は日本未来の党から出馬した青木愛は、前回は民主党候補であった。変質してしまった現状の民主党よりも、そこから離脱した候補のほうがよほど、前回勝った民主党の理念を引き継いでいるのだから、青木に票を投じればいいだけの話ではないのだろうかと、僕は思うのだが。
*3:衆院選投票率59.32% 戦後最低の記録更新(朝日新聞)http://www.asahi.com/politics/update/1217/TKY201212170292.html
プロフィール
赤木智弘(あかぎ・ともひろ)
1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。著書に「若者を見殺しにする国 (朝日文庫)」など。
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