「本田雅一的Engadgetオールタイムベスト」過去イチ読まれた記事は……意外なアレでした

日本市場から撤退してしまうというエンガジェット。僕は2018年から寄稿してきたが、ふと気になって編集長に「過去イチ読まれた記事って何?」と尋ねてみると、その数時間後には全ランキングが送られてきた。

僕はこれまでに170本の記事を書いてきたらしい。いや、もっと書いた気がするんだけど、もしかして誤魔化されてる?(いやいやそんなことは……)

それはともかくAppleネタで一緒になることが多かったエンガジェットだけに、トップもAppleだと思いきや、実は意外な"アレ"でした。

……と、引っ張るわけじゃないのだけれど、トップ5を逆順から紹介しつつ、その背景についてリキャップしたい。

●第5位 2万円違いなら「MacBook Pro」を選ぶべき。第10世代のAirじゃなく第8世代のProだと思う理由

ここで書いてる"世代"とはIntel Coreの世代。第10世代Intel CoreのIceLakeを搭載したMacBook Airが登場したのだけど、ちょっと待てよ? トータルの性能やディスプレイなどの違いを考えれば、MacBook Proの方が良くない? というお話でした。

Apple製品をたくさん買ってる方ならご存知だろうが、Appleは製品を発売するタイミンの為替レートで価格を決め、その後、為替レートが変動しても価格を変えないという、実に硬派(?)な価格戦略を続けている。

そんな為替レートのマジックもあって、MacBook Proの下位モデル(2 Thunderbolt Port)の方がかなりお得に見える現象があったのだ。詳細は記事を再読いただくのがいいが、新しい製品が必ずしも良いわけではないという典型的な例。

この記事に関わらず、製品の価格と機能や性能を比較したリアルな意見というのは、よく読まれる記事になるようだ。

●第4位  ひと足先にApple Watch Series 4を触って確信。予想を大幅に上回るフルモデルチェンジだった

Apple Watch Series 4が発売される少し前、Series 3が特に米国で大ヒット。市場が十分に温まったところで投入されたのがSeries 4だった。見た目の違いも大きかったが、中身や機能もOSのアップデートともに大きく変化。

まだスマートウォッチ市場が未成熟だったこともあって、完成度の高いSeries 4がバカ売れしたのだが、そんな爆発が予想されそうだということをレビューから紐解いた記事だった。

さすがApple! 上位のほとんどはAppleじゃないの? と思うかもしれないが、実はAppleのネタはこれで打ち止め。1〜3位はAppleの製品、サービスなどと一切関係ない記事が並ぶことになる。

●第3位 GoogleのHuawei向けサポートが停止すると何が変わるのか? 発売済み端末への影響は?

米トランプ大統領によるHuaweiへの制裁はかなり徹底したものだった。制裁によって中国の国民がHuawei応援ムードに沸いたが、その背景には何ら事実認定も進んでいない曖昧な状況にも関わらず、米政府の意向でグローバルの製品に影響を及ぼすという恐怖心があったと思う。米政府としてはHuawei排除に見せしめの部分もあったのではと疑っていた。

が、ユーザーの視点で言うならば、もっとリアルなところの方が気になる。手元の端末についてアップデートを続けてもらえるのか。独自設計のSoCと組み合わせたカメラで差別化を図っていたHuaweiの端末に新機種は追加されるのか。

記事では過去にAndroid端末開発に携わった経験から、Google Playを始めとするGoogleサービス向けモジュール搭載が可能になる条件なども含めてまとめている。

結局、Huaweiはその後、独自のアプリマーケット(アプリを流通させるアプリ)を構築して販売を継続しているが、これは元々Googleが営業を行なっていない中国国内向けに展開したサービスをグローバル化したもので、実際にはGoogle Playの代替とはなり得ていない。

独自SoCの生産に関しても制約がかけられたことで大幅にその勢いを削がれたHuawei。そのままの勢いがあれば、iPhoneシリーズの大きなライバルになっていただろう。iPhoneの安売り販売なども増え、iPhoneの日本でのシェアは(店頭販売のみの数字だが)8割近くに及んでいる。強力なライバルになってくれるはずだっただけに、個人的にHuaweiの脱落は残念な出来事だった。

●第2位 オンライン飲み会ブーム到来?「Zoom飲み」を試したらすこぶる楽しかった

その後、当たり前になってしまったので、今読み返すとなんら新規性のない記事だが、これがなんとオールタイムの第2位。それだけ初期のコロナ自粛で人とのコミュニケーションを求めていたと言うことだろうか。

オンライン飲み会と言っても、単にオンライン会議システムを使って飲み会をするだけなのだが、本来はビジネス向けのツールを使い、どのように宅内エンタメへとつなげているのか、色々な人たちの創意工夫についても伝えたからだろうか。

すっかりその後は廃れたオンライン飲み会だが、蔓延防止法が解除された昨今ではあるものの、いまだに人の動きは以前ほど大きくはない。遠くにいる友人や、滅多に会わない昔の友人と、たまにオンラインでの飲み会をしているワタクシであります。

●第1位 ZOZOSUITの計測データでZOZOの2Bスーツをオーダーしたらとんでもないものが届いた件

ああ、なるほど!と自分でも思ったこの記事。

実はAppleのスペシャルイベントで渡米する直前に書き上げ、飛行機の上で掲載公開された記憶がある。すると投資家関連の間でも話題になり、あれよという間にバズり始め、ついにはZOZOの株価急落へ。

1兆円を超えていた当時の時価総額が一日でおよそ1000億円(あるいはそれ以上)下落する事態となり、Appleイベントに集まった他のプレスから「本田さん、ZOZOの時価総額の1割近くを吹き飛ばしちゃったよ!」と揶揄われたのが思い出だ。

当時、まだZOZOの社長だった前澤友作さんの肝入りで開発されたZOZOSUITを使って体型を計測、サイズオーダーの紳士向けスーツを安価に提供というサービスでスーツを作ったところ、実にチンチクリンなスーツが届いたというお話。

ZOZOSUIT(計測する商品の方)に関しては、その未来的な計測方法が話題だったものの、初期のプランで採用されるはずだった技術はお蔵入りになり、その後、スマホのカメラで"全身モジモジくん"姿の自分を撮影。その画像データを元に寸法を推測するAIシステムに衣替えとなった。

計測データそのものは、そこそこに良い結果が出ていたと今でも思っているが、さすがに立体裁断のスーツをキッチリ作るのは難しいのでは?と思い、自分でそれを確かめるために注文していたのだ。

実はオーダースーツの発表会にも出席していたのだが、どうしても壇上のスーツのフィッティングが自動だとは思えなかったというのもある。

後日談にはなるが、この時のスーツ、あまりにフィッティングが悪い人には「作り直し」がオファーされ、僕のところにもスタッフが(リアルに)やってきた。迎え入れるとそのうちの一人は広報担当者を名乗り、別の担当者は洋服作りのプロ。

結局、手動で計測し、好みを尋ねられ、完全に作り直したスーツが数週間後に届いた。つまり、自動計測ではなく、純粋なサイズオーダーのスーツになったというわけ。他の発注者の分はどうなったのだろう?

いずれにしろ、ZOZOSUITをめぐっての一連の出来事は、ZOZOのターニングポイントになったように思う。その後、前澤さんはYahoo! JAPANに会社を売却、お金配りオジサンになったり、宇宙に出かけたりしてらっしゃる。

今ではこうした愉しい? 逸話も期待できないが、前澤さんが悠々自適なセカンドライフへと舵を切り愉しい時間を過ごすきっかけになったのかもしれないなぁと思い出す記事が、オールタイムのベストだった。

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