男性の欲望を満たす性的動画で今、「個撮(個人撮影)」と称されるジャンルが急速に存在感を増している。

【画像】A氏が投稿するサイトにはモデル女性の写真とともに「個撮」の文字が並ぶ

 従来の、主に法人組織によって制作されたアダルトビデオ(AV)とは異なり、1人、もしくは数人によって制作される動画で、DVDなどにパッケージ化するのではなく、ネット配信のみで稼ぐ。その実態はこれまでのAV業界以上に見えにくく、出演トラブルなど逮捕事案も発生している。


インタビューに応じた「個撮」を手掛けるA氏(筆者撮影)

 今回インタビューに応じたのは、これまで5年以上副業として「個撮」を続けているA氏(男性、50代)。A氏は男優役として自ら出演しながら撮影し、その後の編集、モザイク処理、配信までをこなす。ほかの同業者とも交流があり、新規参入したいという若者にノウハウも伝えてきた、この業界では“古株”ともいえる存在だ。A氏の証言を通して「個撮」の世界の内実を明らかにしたい。

ツイッターで“女優”募集、報酬は現金払い

――まず、「個撮」に出演する女性をどのように募集しているのでしょうか。

「僕の場合は、主にツイッターです。『動画に出てくれるモデルを募集している』とアカウントに書き、出演条件の詳細は『固定されたツイート』に設定して、常時掲載するようにしています。そうするとポツポツと、ツイッター経由でメッセージが入ってきます。

 私が始めた6、7年くらい前は、ツイッターなどのSNS以外に、出演する女性とカメラマンをつなぐために設置された、ネット掲示板を使っていました。その書き込みに、女性側が『追加あり』『オプションあり』などと書いている場合は、キスやそれ以上の性行為などができることが多かった。

 出演してくれた女性の年齢層は幅広くて、20歳から上は60代まで。私の場合は、20歳以下の女性は対象にしていません。新規の女性を獲得しつつ、馴染みになったモデルの女性も撮影しています。月2回ぐらいは撮影しています。

 従来のAVには、作品として物足りない思いをずっと持っていました。また、自分だけしか創作できない何らかの作品を発信したい気持ちも強かった。私が40代の頃、ビデオカメラが進化し、テープからデジタルになりました。撮影やモザイク処理などの編集が楽になったことから、個撮を始めました。以来、マイペースで個撮を続けています」

――未成年ではないかどうか、年齢確認はどのようにしていますか?

「女性には顔写真が入った運転免許証や学生証を手に持ってもらった状態で写真を撮らせてもらっています。ネンカク(年齢確認)と呼ばれる作業です。気が付かずに18歳未満の女の子を撮影して、児童ポルノとして摘発されるのは怖い。自分の身を守るため、そこはしっかりと押さえています。

 女性の職業は、本当にバラバラです。学生、主婦、OL、ときには元AV女優だったケースもあります。彼女たちに共通しているのは、すぐにお金が欲しいという点に加えて、自己の承認欲求が強くあることだと思います。40代以上だと生活に困窮している方も多い。女性は20代、30代ならば風俗店で稼げますが、40代になるとそれも難しくなる。

 福祉の専門家や貧困女性を支援している方々は、知りたくない情報かもしれませんが、生活保護を受けている女性が応募してくる場合もあります。やはり、自分が好きにできるお金が欲しいと言われます。僕は謝礼を現金払いにしていて、女性からはある種のセーフティーネット的に使われているとも感じます」

最も苦労するのは「モザイク処理」

――女性への報酬の相場は?

「20代半ばの女性の場合、女性側から提示される金額は5、6万円が最も一般的です。作品を配信し見込める売り上げと女性の撮影条件を比較検討し、女性への報酬は彼女と交渉して決めています。もっとも私は色々な年代や条件の方を撮影するので、報酬は大きな幅が出るのですが。

 例えば条件でいうと、僕の映像は性器には全てモザイクをかけていますが、女性の顔にモザイクをかけるかどうかは、本人の意向次第です。当然ながら、顔のモザイクがない方が視聴者には受けが良く、売り上げが見込めることから、女性への報酬は高くなります」

――実際の撮影はどんな形式で行われていますか?

「撮影には、都内のラブホテルのサービスタイムを使っています。女性とは駅で待ち合わせし、すぐホテルに向かいます。撮影条件や報酬は、事前のやり取りで決めているので、ホテルに直行となるのです。

 拘束時間は3、4時間ぐらいになります。部屋に入ると、先ほど言ったネンカクや出演承諾書へのサインをもらいながら、撮影でのNG行為を確認します。その後、『どんなHが好きですか』などといったインタビューをします。1本の作品にするためには、作品の冒頭に入れるこうしたインタビューが必要です。そして、絡みの撮影となります。ホテルの一室に入ってから、カメラはネンカクの段階からずっと回しています。撮影する映像は、全部で2、3時間ぐらいになるでしょうか。

 使う機材は手持ちのビデオカメラのみです。個撮を始めた時に、市販品の上位機種を10万円以上出して購入しました。荷物になるので照明は持ち込まず、すべて自然光で撮っています」

――動画配信までの流れは、どのようになりますか?

「まず、撮った映像を2時間ぐらいの長さに編集します。その後、パソコンでモザイクをかけていく。性器、希望があれば女性の顔、撮影したホテル名が映り込んでいる場合もモザイク処理します。

 モザイク処理は、最も苦労する作業です。2時間の映像だと、その処理に5倍以上の時間がかかります。僕の場合は、1日1〜2時間作業し、2週間前後かかります。かなり地味な作業で、同業者も苦労している人は多いですね。もちろん外注することもできますが、それでは利益がでないので自分でやっています。

 完成した映像は、動画サイトの『FC2コンテンツマーケット』に投稿する。ネットにアップする作業はとても簡単です。他にも『XCREAM』や『Gcolle』などの動画サイトがありますが、いまの収入の8割は『FC2』での配信です。僕の場合はFC2だと、売り上げの7割が支払われます。他サイトよりも高還元です。なおかつ作品をアップしやすいため、FC2が主戦場になります」

「個撮は自己表現。危ない橋を渡っている状態を改善したい」

――作品はいくらで販売していますか? 売り上げはどのくらいになりますか。

「僕の場合はモザイクありのため、そんなに高い値段をつけられない。通常、2時間の映像で数百円から1000円ほどで販売しています。ただ、この2時間の映像を、20〜30分程度に分割して販売もします。入浴シーンが好きな男性、手っ取り早く絡みだけを見たい男性など、購入者の嗜好はさまざまです。そんな趣味に合わせるのが分割作品で、1作品500円以内のワンコインにしています。

 この収入で、撮影にかかる経費を賄えます。最低でも経費と儲けでトントン。もちろん、儲けがでればうれしい、という制作スタンスです」

――Aさんは、なぜ「個撮」を続けるのでしょうか。

「僕は撮影自体が好きですし、作品として発表するのも楽しいので個撮を続けています。女性人権団体からは理解されないでしょうが、私には個撮は自己表現です。だから、多くの撮影者が危ない橋を渡っている状態を改善したい気持ちを持っています。

 個撮や同人AVは横のつながりがなく、ノウハウの共有ができていない。たとえば、モザイク。モザイク処理は、やはり一定のノウハウが必要です。現状では『モザイクの濃さをどの程度にすればいいのか』も、誰も教えてくれない。

 僕は、AVメーカーらで構成するIPPA(知的財産振興協会)関連の審査団体に準ずる基準に合わせてモザイクをかけています。これが一番、摘発のリスクが低いと考えているからです。他の撮影者は、薄めのモザイク、いわゆる『薄モザ』や、ましてや無修正で出している」

どんなトラブルがあるのか?

――2月上旬、無修正動画をサイトに投稿したとして、30代の男性が逮捕される事件がありました。「個撮」の世界では、どんなトラブルがあるのでしょうか。

「その男性については、逮捕される2、3週間くらい前から『危険な撮影者』だとするツイッターの投稿が出回っていました。ガウン姿の彼自身の写真付きの投稿です。『顔はモザイクあり、と言われたのに無修正で映像を出された』『撮影代金を支払ってもらえない』などの内容が書き込まれていました。

 個撮のトラブルは多いか少ないかは分かりませんが、モデルとなる女の子から愚痴や苦情を聞くことはあります。例えば、撮影代金のトラブル。『手持ちがないからお金を下ろしてくる』『モデル代金は振り込むから』と言った撮影者が、お金を渡さずにバックレてしまうんです。そして、顔や性器にモザイクをかけると言ったのに、かけなかったというケースもある。あとはコンドームをつける約束だったのに、しなかったという話も聞きます」

――逮捕された男性は、無修正動画の配信で3500万円もの売り上げがあったと報じられています。

「日本では、無修正動画は当然ながら違法で摘発されます。それが分かっていながら、若い世代は短期間で儲けようとして、摘発覚悟で無修正をやっているように見える。こうした状態が続けば、個撮は警察の摘発対象になってしまいます。私は自分が好きでやっている個撮が、『そうした趣味の人たちはいるよね』と、ある程度は世間で認められる存在であって欲しい。警察のやっかいにはなりたくないです」

――「個撮」は勢いがあると聞きますが、その要因は何だと思いますか?

「かつては撮影するとなると、それなりの機材が必要でしたが、今はiPhoneが一台あれば十分になったのが大きいのではないでしょうか。ビデオカメラの場合はデータが大きいので、編集前にPCでデータを小さくする必要もありますが、iPhoneならその必要もない。画質も、テレビでの視聴には耐えませんが、スマホでの視聴なら十分です。やろうと思えば、iPhoneだけで簡単な編集やモザイク処理までできる。画面が小さくて作業がしにくいなら、iPadを追加すれば十分です。

 5Gも本格化してくるし、新規参入する撮影者が減ることはないでしょう。だからこそ、自主団体のような組織を作るべきなんです。グループへの登録制にすれば、撮影者の住所や連絡先が分かる。悪質な撮影者だけでなく、場合によってはモデル志望の女の子にも注意を与えたりできるはずです」

――「個撮」の撮影者たちが集まる機会はありますか?

「撮影者たちのグループができれば、モザイクや編集ノウハウの共有、女の子の募集の仕方についての情報交換などのニーズもあるはずです。過去数回、自分のツイッター上で『個人撮影者の飲み会をやっている』と告知し、オフ会を開いたことがあった。毎回、僕と同じ個撮をやっている人や、これから個撮を始めたい人たちが集まります。

 無修正は扱わない、あるサイトでは、いま個撮の作品を送っても配信されるまで2、3週間もかかるようになっています。投稿本数が増えてしまい、サイト側が行うモザイクの適切さなどのチェックが追いつかないからです。もし、自主グループの『統一モザイク基準』などが導入されれば、そういったサイトの負担は減るし、事前チェックを自主グループで担うこともできるのではないでしょうか」

急増するトラブル「私的であっても性暴力」

 筆者は1年半前、とある集まりでA氏を知った。この間、折に触れメールでやりとりし、情報交換をしてきた。今回のインタビューは2時間を超えるものとなった。匿名とは言え、同業者や周囲に身元を知られるリスクはある。それでも「個撮」への強い思いから、A氏はリスク覚悟でインタビューに応じたのだという。

 とはいえ、撮影者のA氏に見えている「個撮」の世界は一部に過ぎない。

 AV出演強要やリベンジポルノなどの被害者支援に取り組むNPO法人「ポルノ被害と性暴力を考える会PAPS(ぱっぷす)」(東京)の金尻カズナ理事長は次のように話す。

「ここ1〜2年、個撮や同人AV関係の相談は急速に増えています。相談内容は、モザイクありと言われたのに無修正で出された、ギャラの未払いのほか、そもそも動画に出ること自体を了承していないのに公開されたケースもある。

 例えば援助交際やパパ活のような形で出会い、ホテルで行為中の動画の撮影を求められる。『自分だけで見て楽しむから』『撮影フェチだから頼むよ』と言われ、少しお金を積み増され応じてしまう。そしてしばらく経った後、サイトに動画が出ているのを見つけた男友達に知らされ、驚くというパターン。また、単なるコスプレでの写真撮影だと女性を募集しておいて、ホテルという密室に入った途端、強圧的に行為の動画の撮影を迫られ、配信されたケースもありました。

 被害女性の証言によると、悪質な撮影者にはAVメーカーの制作者や元制作者がいるという。DVD販売が落ち込むAV業界で食べられなくなった人たちが、個撮に流れてきているのです。スマホの動画撮影機能が向上したほか、高速通信化で動画をアップしやすくなり、視聴者もサイトを利用しやすくなった。個撮は今後も増え続けていくでしょう。

 AV出演強要問題は一時期ほど騒がれなくなっていますが、個撮にも舞台を広げて続いているというのが我々の認識です。私的であっても、性的行為の撮影を求められること自体が性暴力にあたるとの認識に立って、女性たちは慎重に撮影の諾否を判断して欲しい」

 同会が2019年に受けた相談は158件で、前年より25%増えているという。

(高野 真吾/週刊文春デジタル)