コロナで客が激減のネオン街「自殺者も出かねない」ヤバい状況 一時休業する店も

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白けた店内

新型コロナウィルスの感染拡大による国内経済への悪影響が、歯止めのかからない状況だ。不要不急だとして、イベントや懇親会の中止が相次ぎ、大企業による在宅勤務の導入などが原因で、個人消費が大きく減少している。

本来ならば、かき入れ時の歓送迎会シーズンに襲ったウィルス禍に、夜の街からは「自殺者が出かねない」との悲鳴が上がっている。特に、男女が狭いスペースで同席するキャバクラなどの飲食店や風俗店などは大打撃を受けている。

安倍総理が外出の自粛を要請した2月29日の会見から10日ほど経ち、東京都台東区上野の繁華街は、午後9時を過ぎてもいつもの活気はなく閑散としていた。平日とはいえ、きらびやかなネオンが輝く通り沿いに、二次会の店を探す酔い客の姿をほとんど見かけない。

「安くしますからお願いしますよ」

若い客引きの熱心な勧誘に負け、一画にあるランジェリーパブに入ってみた。20席ほどの店内に、この日の客は50代とおぼしき三人組の1グループのみ。空き席では、セクシーな下着を身に付けた若い女の子たちが4、5人、スマートフォンを操作しながら手持ちぶさたな様子で待機してる。

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「いつもはこの時間なら、もっと賑わっているんですけどね。3月に入ってからずっとこの調子です。こんなにお客さんがいないことは今までないですよ。赤字覚悟ですけど、営業しないわけにはいかないですから」と男性店長はため息をつく。

先客の三人組に話を聞いた。ひとりは従業員20人ほどの建設業者の経営者という。コロナ拡大以降は、なるべく飲み会は控えていたが、この日は昔なじみの後輩たちに誘われ2次会まで流れたという。

「今持っている現場でも1人でも感染者が出たら、工事は則、中断になる。従業員に飲み会の自粛を要請している立場で、本当は俺がこんな場所に来ちゃいけないんだけどな」

結局、2時間の滞在で、客はこの三人組のみだった。

「最初は貸し切りと思ってうれしかったんだけど、やっぱりこういう場所は騒がしい方が楽しい。今日はカラオケを歌う気分にもならなかったな」

後輩の1人は帰り際にこう言って白けた表情を浮かべていた。

こういった状況はこの店に限った話ではない。昼は都内のメーカーに勤めながら、夜はキャバクラでアルバイトをするA子さん(26)は「コロナの影響で売り上げは半減している」とこぼす。

シフトを半分に減らされて

A子さんの勤務するのは、在籍女性が20人ほどの中規模の店舗。都心の繁華街の立地だが、滞在100分で客のドリンク代を含むセット料金1万円ほどの比較的リーズナブルな価格設定のキャバクラだ。普段は指名の女の子がいない「フリー」の客を中心ににぎわうという。

「2月下旬以降は客足がめっきり落ちて、毎週シフトの希望を出しても半分は、店から出勤を断られるようになった。特に、家庭のあるサラリーマンは全く姿を見かけない。『このご時世だから、2次会は会社の経費で落とせない』と言われて、前々から約束していた同伴をキャンセルする経営者のお客さんもいます」

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当然、店もセット料金を100分で8000円と2割引にするなど対策にやっきだが、効果は限定的だ。なかには、最初の100分はセット料金を無料にし、指名料と女性のドリンク代だけという苦肉の料金設定に乗り出す店も出始めている。

店のボーイは「限られた時間で多く稼ぐために、短時間でドリンクを飲み過ぎて体調を崩した女の子もいた」と話す。A子さんも収入減を見越して、月に3回通っているネイルの料金を1回1万3000円から5000円に下げたり、まつげのエクステを辞めたりと節約に励む。

「綺麗にしていても、お店に出勤できないなら意味がないから。女の子のヘアメイクさんとか、タクシーの運転手さんとか、夜の店の周辺産業もけっこう影響が出てるんじゃないかな」

男女の濃厚な接触を伴う風俗店では、事態はより深刻という。「リーマンショックよりも遥かに影響が大きい。下手したら経済的問題で自殺者が出かねない」と危惧するのは、都内でも老舗の色街「吉原」のソープランド店の男性店長だ。

コロナ感染拡大で吉原では、同業者でつくる組合と連携し、普段以上にアルコール消毒を徹底するなど対策を強化している。それでも、人気店でさえ売り上げは3割減少し、なかには一時的に休店に追い込まれる店も出始めているという。

「インフルエンザならばどこでうつったかは追及されない。でもコロナの場合は、感染源まで特定される可能性が高いから、客足も遠のいていく。だってコロナにかかった場所がソープだなんて職場や家族にバレたら困るでしょう。それこそもしマスコミに取り上げられてもしたらと思えば、来ようにも来られない」

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一方で、店側も一店舗ででもコロナが発生すれば、吉原全体の営業が停止されるのではないかと戦々恐々としているという。

現金給付が実現しても…

そもそも、吉原は近年警察当局の取り締まり強化で以前は黙認されてきた深夜帯の営業が厳しく規制されたうえ、ホテルに女性が派遣されるデリバリーヘルスや、メンズエステなどの性産業の多様化で、景気は右肩下がりだ。

「20年来、吉原にいますが今が底ですね。『風が吹けば桶屋が儲かる』じゃないけど、最近はコロナの影響でネットでつなっがた映像で女性の性的な映像を見るチャットレディーが流行っていると聞きました。そりゃ感染の心配は無いでしょうけど、「男女の交わり」に関する考えも変わってきてますよね」

コロナウイルスに関する特別措置法の改正案が成立した翌日の3月14日、安倍首相は2度目の会見を開き、コロナで低迷する経済を活性化するため、「一気呵成にこれまでにない発想で、思い切った措置を講じる」と語った。

会見後の週明けには、政府・与党が緊急経済対策として国民1人ずつに現金を配る「現金給付」を検討していると大手マスコミが一斉に報道。金額は2009年のリーマンショック時の1人あたり1万2000円を超えるとの見方もあり、野党の国民民主党は国民1人あたり10万円を給付したうえで、消費税を5%に減税するという大盤振る舞いの案を発表した。

しかし、仮に現金給付が実現したとしても、国民が給付された現金を個人消費に回すかは不透明だ。

前述のA子さんによると、同じ店で働く女性の多くが、店での収入は確定申告をしていない。国の緊急経済対策の詳細は未定だが、仮に源泉徴収や給与明細の提出を求められると、支援策の対象外になる女性も出かねない。

昼間は正社員で働くA子さんの場合は、夜バイトの収入が減っても娯楽や趣味への出費を控えれば生活に支障はない。しかし、夜の仕事が本業の女性たちの場合、このまま収入減少が続けば当然、死活問題となる。

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「4月の歓迎会シーズンまで自粛が続けば、コロナが落ち着いてもお客さんは戻ってこないかもしれない。

今までキャバクラでストレス発散してたけど、案外、家族と過ごすのも良いなって思うお客さんもいるだろうし。一度しめた財布のひもを解いてもらうのは大変だよね」

コロナウイルスの猛威とその余波が早くも夜の街に及び始めた。