今年最強の「スーパー台風」が首都圏に直撃する恐れがある。日ごろからの備えが重要なことは間違いないが、あらかじめ進路が予想できる台風だけは、事前の準備が可能だといえる。停電や断水があり、避難所生活を余儀なくされる広域災害の直撃時に何が必要なのか、防災の専門家から聞き取った。

(初出:「週刊文春」2015年6月11日号)


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避難所生活か、在宅避難か

「広域災害の場合、1週間は自力で生き延びる必要があります。そこで大事なのが、『水・食糧・トイレ』を中心とする防災グッズです」

 こう語るのは、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏だ。

「被災した際、自分たちがどのような生活を余儀なくされるのかをイメージして準備してください。たとえば建物倒壊や火災リスクが高い地域は、避難所生活になります」(同前)

 避難所生活なら、すぐに持ち出せる「一時持ち出し品」を準備しておきたい。「3、4日分の水、食糧、簡易トイレと薬、防寒具などの生活用品に加え、耳栓やアイマスク、風呂敷もあった方がいい。安眠グッズなしに避難所で眠るのは至難の業ですから。また置き引きトラブルが頻発します。大切なものには名前を書いて、風呂敷に包んでおくと被害を避けられる」(同前)

 一方、在宅避難の可能性が高い場合、「一時持ち出し品」は当日分の準備だけでもなんとかしのげる。

「そのかわり自宅で1週間程度生活する備蓄が必要です。特に高層階は物資の移動が難しいので、多めに備蓄しておきましょう。ガスも電気も使わず食事を温められる『ヒートパック』も複数枚用意しておくといいですね」(同前)

まずは水や食糧の確保

 特に生命を左右する水や食糧は備蓄が必須だ。東京情報堂の中川寛子氏が指南する。

「防災用の保存食に加え、いつも飲食しているレトルト食品や水を余分に用意し、使った分を買い足すローリングストック法で保存しましょう。ラップも、食事のたびに洗い物を出さずに済むので便利です」

 

 市民防災ラボの玉木貴氏のおすすめは菓子系保存食と『ポポンS』などのマルチビタミン剤だ。

「避難生活は物資を取りに行ったり、情報を集めたりと歩き回ることが多いので、高カロリーの保存食を加えておきたい。栄養の偏りはかさばらない錠剤で補うようにしましょう」

トイレ、歯磨きなどの衛生環境も命を左右する

 そして忘れてはならないのが簡易トイレだ。首都直下地震の際、内閣府は、下水道の復旧に1カ月近くかかる可能性があると発表している。

「購入はホームセンターかアウトドアショップがいいでしょう。100円均一やカー用品売り場でも売っていますが、小便にしか対応していないドライブ用のものがほとんどで、避難時には役立ちません。必ず大便に対応しているものを選んでください」(同前)

 トイレを始め、衛生環境は命を左右する。

「高齢者や子供は感染症に罹る可能性が極めて高い。避難所では、嚥下力が弱い高齢者による誤飲性肺炎が多く報告されています。口内の細菌が肺に入ってしまうんです。歯ブラシや洗い流さずに済むシャンプー、ウェットティッシュで身体を清潔に保つことで防止しましょう」(前出・中川氏)

LEDライト、ガスコンロ、手動の充電器があれば…

 防災システム研究所所長の山村武彦氏は、ケガを防ぐ救急セットなどの携帯防災グッズを薦める。

「都会はガラス、ガス、ガソリンの3Gのリスクが高く、災害によって怪我をしやすい。最低限の頭部保護のため折り畳める『セーフティハット』も常備しています。水に濡れても音が鳴る『命の笛』もおすすめ」

 東日本大震災で被災したIさんは「意外に必要だった」と、トンカチとドライバーを挙げた。

「電気が止まると洗濯機の中のものが取り出せないし、窓枠やドア枠がゆがんで室内に閉じ込められるケースも多く、それらをこじ開けるための工具は必須です。その他にLEDライト、ガスコンロ、手動の充電器などがあればどれだけ心強かったか。あの不安と恐怖はもう二度と経験したくない。今は十分に備えをしています」

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2015年6月11日号)