1次リーグD組最終戦で日本はイングランドに0-2で敗れた【写真:Getty Images】

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格上イングランドに0-2完敗「我慢強く守れずに失点してしまうのは大きな問題」

 サッカーの女子ワールドカップ(W杯)フランス大会は19日、1次リーグD組最終戦で日本はイングランドに0-2で敗れたが、勝ち点4の同組2位で決勝トーナメント進出を決めた。前回大会の準優勝メンバーで現地観戦している解説者・永里亜紗乃さんは戦いぶりをどう見たのか。「THE ANSWER」に語ってもらった。

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 この試合の結果にかかわらず、日本の決勝トーナメント進出は決まっていました。そのため選手に大きなプレッシャーがかかるシチュエーションではありませんでしたが、あくまでも勝利を目指して戦うという姿勢が随所に見られたのは良かったと思います。そういったメンタル状態でイングランドという格上を相手にどこまでやれるかは、今後への試金石になりうるものでした。

 しかし、前半はフィジカルとスピードに勝るイングランドに主導権を握られ、比較的早い時間帯に失点してしまった。相手に追い込まれるようなパス回しになり、ボールを奪われてからも手数の少ない攻撃でディフェンスラインの背後を突かれました。まだ相手の速さに対応し切れていない時間帯で、リカバリーの余裕がありませんでした。

 1点ビハインドで折り返した後半は相手の運動量が落ちたことも手伝い、チャンスを作れるようになりました。実際にいくつか決定機も作りましたが、その直後に再び失点。良い形で攻めていたのは事実でも、守備のリスク管理を怠ってしまえば失点の確率が高まります。2失点目を紐解くと、人と人の間でボールをつながれて最後はまたしても背後のスペースを使われている。ダイレクトパスを活用した相手の攻撃が上手かっただけでなく、日本の応対にも課題が残りました。

 0-2という結果は戦前の力関係を覆すものではなく、力負けと言わざるをえません。これまでの2試合から相手のレベルが明らかに上がり、プレースピードや精度、戦術面でも劣っていました。すべてにおいてワンテンポ速く、強い動きが求められる中で、今まで通用したことが通用しなくなった。そういったことが2つの失点場面に凝縮されているように感じました。

 チャンスを決め切れずに流れを手放してしまうのは課題ですが、我慢強く守れずに失点してしまうのはそれ以上に大きな問題で、致命傷になりかねない。格上のチームと対戦する時は終盤の、できれば70分から80分までスコアレスで耐え凌ぐことでようやく勝機が生まれてくる。同じ失点にも内容があり、イングランド戦のような失点をしていると今後も厳しい戦いは避けられないでしょう。

「勝機は必ずある」決勝T1回戦、「逃げ道を用意することなく、さらなる高みを」

 苦しい試合でしたが、GKの山下杏也加選手は再三再四に渡るファインセーブを見せてくれました。彼女は身体能力の高さに加えて、ゲームの流れをしっかり把握してプレーできています。GKに大切な予測能力にも長けていますし、ピンチが訪れても精神的なブレを決して見せない。決勝トーナメントに進んでからは1つの得点、1つの失点が運命を分けます。ゴール前のシーンがより重要になってくる状況で、GKの仕事が大きな鍵を握るはずです。

 攻撃面では、第2戦に続いて岩渕真奈選手がキレのある動きでチームを牽引していました。コンスタントにドリブルで勝負を仕掛けられているのは好調の証ですし、「自分がやってやる」という意志の強さも見えます。だからこそ2トップを組む相棒の働きが重要になります。途中出場でチャンスを決め切れなかった菅澤優衣香選手ですが、勢いを加速させることはできていました。ですがストライカーは結果で評価されるのが宿命。決勝トーナメントの勝負どころで大仕事をやってのけて、自身の存在価値を証明してもらいたい。

 決勝トーナメント1回戦の相手は、カナダかオランダのどちらかです。カナダは米国に似たプレースタイルの強豪で、オランダは個の力が高く、前線に良い選手が多い。どちらの国も決して簡単な相手ではありませんが、イングランドと比較すれば力はやや劣るでしょう。厳しい戦いになるのは間違いありませんが、勝機は必ずあるはずです。

 そのためにはグループリーグ3試合からのアップグレードが欠かせません。1勝1分1敗という結果がなでしこジャパンの現在地で、優勝を目指すのであれば足りない部分も多い。狙うのはベスト8ではなく、もっと上のはず。「次につながる良い経験を得られた」という逃げ道を用意することなく、さらなる高みを目指して戦ってほしい。(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)