「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「寂しい」の「寂」。「寂寥」の「寂(セキ)」、「静寂」の「寂(ジャク)」とも読む漢字です。



「寂」という字は、まず、うかんむりを書きます。

うかんむりの中の左に「上」と書き、その下に「小」という字を添え、右隣に「又、会う日」の「又」という字を書きます。

うかんむりは祖先の霊をまつる霊廟の屋根の形。

その中の「上」という字は鉞(まさかり)の刃の部分、その下の「小」という字は刃が下に向かって放つ光を示しています。

隣の「又」という字は人間の手を意味する漢字です。

それらを組み合わせた「寂」という字は、霊廟に鉞の頭の部分を安置して、祖先の霊を鎮めている様子を意味しています。

人気のない霊廟で鈍い光を放つ鉞の刃、それは静かでものさびしい風景。

そこから「寂」という漢字が生まれたのです。

心の中にこびりついた寂しさと向き合うために、祖先の霊が祀られた部屋で、静かなときを過ごすいにしえのひと。

もう、二度と会えない人々のことを懐かしく想い、失われた日々に帰り、言えずに飲み込んできた言葉を反芻します。

目をそらすことなく、まっすぐ見つめる寂しさ。

その正体に気がついたとき、冷たい暗闇が広がっていた心の中に、ほのかな光が差し込んできます。

近代演劇の父と呼ばれたノルウェーの劇作家・イプセンは、かつて、こんな言葉を残しました。

「我々はみな真理のために闘っている。だから孤独なのだ。寂しいのだ。しかし、だから強くなれるのだ。」

ではここで、もう一度「寂」という字を感じてみてください。

寂しさを抱えて過ごす孤独な時間は、自分についてじっくりと思いをめぐらせる絶好の機会。

ただそこに自分ひとりが居ることを味わってみましょう。

やがて五感が冴え始め、さまざまなことに気づくはず。

しん、としみわたる月夜の美しさにふるえたり、一杯のあたたかなお茶に心から感謝したり。

寂しさとうまく折り合いがつけば、自分だけの幸福の形が見えてくるかもしれません。

誰かとつながるその前に、この秋は、あなた自身の寂しさとつながってみてはいかがでしょう。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

9月9日の放送では「野」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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聴取期限 2017年9月10日 AM 4:59 まで

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<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/