空の「じゃじゃ馬」E-2C早期警戒機 パイロットが語るその特徴
背中にお皿型のレーダーを載せたE-2C早期警戒機。一風変わった見た目が特徴的ですが、その操縦もほかとは少々違うようです。同機へ搭乗する現役自衛官に、その特徴などについて話を聞きました。
軽くてハイパワーなE-2C、パイロットは「職人気質」
「パイロットの目線から言うと、この飛行機はものすごいじゃじゃ馬です」
航空自衛隊・那覇基地(沖縄県)に所在する第603飛行隊、その隊長である小池裕晃2等空佐がこう語る飛行機の名前はE-2C「ホークアイ」早期警戒機。胴体の上部に大きなお皿形の警戒レーダーを搭載し、領空に接近する航空機を早期に探知することを目的とした自衛隊機です。このE-2Cが「じゃじゃ馬」である理由について、さらに詳しく聞いてみました。

「E-2Cは2基搭載された5100馬力のエンジンでプロペラを駆動していますが、このエンジンは大型のP-3C哨戒機やC-130H輸送機と同じものです。これらの大型機はエンジンを4基、積んでいますが、E-2Cの重さはC-130Hの半分以下ですから非常にパワーがあり、横安定性が低いことから操縦がものすごく難しくなっています」(第603飛行隊長 小池裕晃2佐)
そうしたことからE-2Cは、通常の飛行機と異なり、左右対称に造られていないのも特徴です。
見て分かる左右非対称 じゃじゃ馬の「性格」は生い立ちに由来
「4枚ある垂直尾翼のうち、左から2枚目にだけ横方向の操縦を行う動翼『ラダー(方向舵)』が取り付けられていないのです。またラダーも、それぞれ1枚板ではなく2枚の板が連動して大きく動くようになっています。両手両足を使って操縦しなければならないE-2Cは、ある意味でパイロット冥利に尽きる機体です。ですからE-2Cのパイロットというのは、どこか『職人気質』なところがありますね」(第603飛行隊長 小池裕晃2佐)

E-2Cはもともと、アメリカ海軍の空母艦載機として設計されました。たとえば、アメリカ軍の横須賀基地(神奈川県)に配備されている航空母艦「ロナルド・レーガン」は全長333mで、軍艦としては非常に大きな部類に入る空母ですが、2000mや3000mの滑走路を持つ陸上の飛行場に比べれば、海面に浮かぶ木の葉のようなものです。E-2Cはそんな空母から離陸する際に素早く加速、上昇するために、操縦の難しさにはある程度目をつむった上で、小さな機体に大きなパワーが与えられたのです。
飛行場運用でも、大きなメリットがある空母艦載機E-2C
E-2Cは、ほかにも様々な面で艦載機としての特徴が残されていると、第603飛行隊長の小池2佐はいいます。
「狭い空母で場所をとらないように、主翼をたたむことができます。航空自衛隊が戦闘機として採用しているF-4『ファントムII』も、もともと艦載機なので主翼を折りたためますが、両機ともに主翼をたたむと、ほぼ同じ横幅になります」
主翼を広げた状態で、E-2Cの全幅は24.56m、F-4は11.71mと倍以上の差があります。

「空母の飛行甲板と格納庫を結ぶエレベーターに、サイズの制限が設けられていたからです。空母への着艦時に、飛行甲板へ張られた拘束ワイヤーをひっかけるためのフックも、E-2Cにはそのまま装備されています」(第603飛行隊長 小池裕晃2佐)
艦載機としてのこうした設計は、飛行場で運用するうえでも大きなメリットがありました。着艦の衝撃に耐えるため“頑丈につくられている”ことで、航空自衛隊のE-2Cは、まだ当分は現役で活躍できる見込みです。
きっかけは、ソ連戦闘機による函館への強行着陸
E-2Cはもともと、1976(昭和51)年に発生したソ連防空軍MiG-25戦闘機パイロットによる亡命事件において、低空に降下したMiG-25をレーダーサイトが失探し、函館空港に強行着陸されるまで再探知できなかった教訓をもとに、低空の監視体制を強化する目的で1983(昭和58)年より合計13機が航空自衛隊へ導入されました。
こうした経緯から、E-2Cは当初、ソ連(当時)に対する防衛の最前線であった北海道に近い、三沢基地(青森県)の第601飛行隊に配備されていました。しかし近年では南西域(南西諸島空域)におけるスクランブル発進の急激な増加にともない、那覇基地(沖縄県)へ一部のE-2Cを派遣したうえでの任務が常態化。2012年には、中国国家海洋局の小型プロペラ機Y-12が低空を飛行し、領空侵犯する事案が発生します。
奇しくもMiG-25による低空からの領空侵犯によって導入されたE-2Cは、こうした南西地域(南西諸島空域)における周辺国の活発化に対応するため、那覇基地へ常駐する必要に迫られ、2014年に第2のE-2C飛行隊として第603飛行隊が新編されたことを契機に、同機の一部が那覇基地へ配備されました。
さらに2014年には、航空自衛隊へ新型のレーダーやシステムを搭載し、大幅に近代化されたE-2D「アドバンスドホークアイ」の導入が決定。近い将来、E-2C/Dの航空自衛隊における総数は17機に増強され、浜松基地(静岡県)に所在する第602飛行隊のE-767「AWACS」とあわせ、全体的にはもちろん、南西域の警戒監視能力もさらに向上する見込みです。
青森から沖縄へ 「最前線」へ赴任したパイロットの心境とは
第603飛行隊の小池隊長をはじめとする隊員たちは、日本の防空最前線である沖縄の地にて、警戒監視の要であるE-2Cを運用するその重責に、プレッシャーを感じることはないのでしょうか。
「もともと三沢にあった第601飛行隊をふたつにわけて、急きょ那覇に新編された第603飛行隊ですが、三沢から単身赴任している者もたくさんおりますし、そういう意味では大変なところもあります。私自身も寒い三沢から赴任し6ヶ月(インタビュー当時)になりますが、体は完全に沖縄になりました(笑)。国の代表として最前線で勤務できることは、自衛官として非常に誇りに感じます。第603飛行隊長としての勤務は、私の自衛官人生でも最も有意義な時間になるものと思います」(第603飛行隊長 小池裕晃2佐)
第603飛行隊のじゃじゃ馬「ホークアイ」とその乗員5名は、いまこの瞬間も、領空に接近する国籍不明機がないか、その「鷹の目」を光らせ、沖縄の空にあります。
【画像】まさに「ホークアイ」 E-2Cを運用する那覇基地・第603飛行隊のマーク

