第3回:個人の多様性から、家族の多様性へ。MIMARU実証実験が示した「誰もが安心できる空間」のヒント
4月2日の「世界自閉症啓発デー」、4月2~8日の「発達障害啓発週間」にあわせ、コスモスイニシアグループで取り組んだ発達特性プロジェクトをご紹介しています。
第1回では不動産事業におけるインクルーシブな視点の立ち上がりを、第2回では当事者家族への事前調査から見えた「旅行への切実な思い」と「5つの構造的な課題」への整理をお伝えしました。
第1回:https://prtimes.jp/story/detail/qb28Z0SK7qx( https://prtimes.jp/story/detail/qb28Z0SK7qx )
最終回となる第3回は、アパートメントホテル「MIMARU」での当事者家族の試泊調査から見えてきた成果と宿泊施設をはじめとする空間づくりへのヒントを、プロジェクトを一緒に企画・推進したインクルーシブデザインスタジオCULUMUさん(https://culumu.com/( https://culumu.com/ )
)と一緒にお届けします。
![]()
--第2回で整理した「5つの構造的課題」に対して、今回はどのような実証実験を行ったのでしょうか?
桑原:事前調査で見えてきた「①見通しが立ちにくい」「②人との距離が調整しづらい」「③刺激が予測できない」「④生活が再現しづらい」「⑤負荷が同時に重なる」という5つの課題に対して、それぞれの課題を解決するための具体的な設計軸を立てました。
旅行のシーンを「事前・到着・滞在・回復」に分け、それぞれの場面で課題に働きかける環境づくりとして、「MIMARU京都 河原町五条」「MIMARU京都 新町三条」の2施設で簡易的にできる配慮策を当事者ご家族に試泊していただきました。
![]()
桑原:まずは空間に対する働きかけとして、「滞在」中の「②距離が調整しづらい」「③刺激の予測・調整」という課題に対し、2つのアプローチを行いました。
1つ目は、客室内に設けた「ほっとコーナー(カームダウンエリア)」です。外部からの刺激を遮断し、パニックになりそうな時や疲れた時に、自分だけの安全基地として休める場所を用意しました。
2つ目は、共用部に設けた「ひかりとふわふわのばしょ(スヌーズレンコーナー)」です。こちらは逆に、心地よい感覚刺激を通じて、お子さんが自ら没頭したり発散したりできる環境です。「休む場所」と「発散する場所」の両方の選択肢を用意することで、お子さんが自ら状態を整えやすくなり、結果としてご家族全体の安心に繋がるかを検証しました。
明石:今回の空間づくりには、コス・インターナショナルさま(https://kosint.co.jp/( https://kosint.co.jp/ )
)にご協力いただき、オランダ発祥の「スヌーズレン」という環境設定の考え方を取り入れました。水中の泡の動きや色の変化が楽しめるアクリル製のポール(バブル・ユニット)、落ち着いて過ごせるテント、触ったり見たりして楽しむおもちゃなど、五感を優しく刺激し、リラックスできる専門的なスヌーズレン用品をお借りしました。また、これらを多く配置した「ひかりとふわふわのばしょ」は、独立したお部屋(MIMARU京都 河原町五条)と、ロビー横のスペース(MIMARU京都 新町三条)の2パターンをご用意しました。プライベートな空間と共有空間、それぞれに設置した場合の利点や過ごしやすさの違いを検証しています。
![]()
![]()
![]()
![]()
石井:空間全体への反応としては、「いつもキッズルームではハイテンションになるのですが、『ひかりとふわふわのばしょ』は興味津々でありながらも少し落ち着いている不思議な状態でした」「何度もこの場所に行き、お気に入りのグッズで遊んでいました」といったお声をいただいています。さらに、「理由がわからず泣いた場面があったが、自らほっとコーナーに入り落ち着いていた」というエピソードもあり、これら2つの空間が、お子さんの行動や状態の安定にとても有効であることが確認できました。
また、設置場所の違いについては、ロビー横の設置は、他のお子さんを含めて利用される機会が多く、時間帯を問わず使いやすいというメリットがありました。一方で、発達特性のあるお子さんは他の利用者がいると空間を避ける例もみられ、個室で落ち着いた方が使いやすいという声も聞かれ、単に設備を用意するだけでなく、「周囲の視線や刺激から距離を置き、自分自身で状態をコントロールできる選択肢」を用意することが、今後のインクルーシブな空間設計において重要な鍵になることが分かりました。
![]()
![]()
桑原:また、「①見通しが立ちにくい」という課題に対しては、当初予定になかったお子さん向けの「事前リーフレット」を作成し、旅行前にお送りしました。ヒアリングの中で「事前の見通しが立てられた方が安心する」という声が多くあったためです。リーフレットでは、旅行中の流れや、実際に宿泊するお部屋、「ひかりとふわふわのばしょ」の紹介などを行いました
実際に、「リーフレットがあることで旅行への不安よりワクワクが勝った」「事前にお部屋の紹介動画を見せることが安心につながった。どんな人がいるのかも知りたいと子どもから何度も聞かれた」というお声をいただきました。ホテル側からの視覚的な見通し情報が、単なる「安心」を生むだけでなく、実際の「行動の安定化」に直結することが分かりました。
![]()
早川:「⑤負荷が同時に重なる」という課題には、事前の特性把握やロビーでの待機スペースの確保といったサポートを行いましたが、ゲストからは「駐車場からの移動、荷物の運搬、子どもの対応が重なるとやはり大変。荷物が運びやすい工夫がほしい」といった、同時対応の難しさを改めて浮き彫りにする課題の声をいただきました。一方で、「スタッフがいつも笑顔で声かけしてくれた」「対応が柔らかく安心した」という嬉しいお声もいただき、スタッフの柔軟な対応や見守りが、環境の安心感を補強する大きな要素になるのだと実感しました。
![]()
![]()
--今回のプロジェクトを実施しての感想や今後の展望についてお聞かせください。
佐藤(CULUMU):私は今回、新たな気づきを得ました。これまで個人の多様性(ニューロダイバーシティ)として捉えていたものを、「家族滞在型」というMIMARUでの検証を通じて、「家族のダイバーシティ」として見つめ直す機会になりました。発達特性という事象や多様性を、「個人」ではなく「家族」という単位で見つめ直す機会になったような気がしています。我々は家族の多様性というものに、本来はもっと向き合うべきだったんじゃないかと、少し反省するような気持ちにもなりました。
小森(コスモスイニシア):コスモスイニシアの社内プロジェクトから始まったこの取り組みが、公共性の高い「ホテル」という実際のアセットで実証実験できたことが非常に良かったと感じています。今回得られた「誰もが使いやすい環境設計の原則」を、今後の建物づくりや、他のアセットへの展開にどう活かしていくか、しっかり考えていきたいです。
山田(コスモスイニシア):まずは今回の結果を、グループ内にも共有していきたいです。一度インクルーシブな視点を持つと、「この照明は強すぎないか?」「この音環境は想像以上に負荷をかけていないか?」と、日常の空間の見え方が変わります。そうした問いが自然に浮かぶ状態を作っていきたいと感じています。
早川(コスモスホテルマネジメント):プロジェクトを進めていく中で、社員やアルバイトスタッフの中にも「実は身近に発達特性をもつ家族がいるんです」と声をかけてくれた方がいました。今回の試泊検証の結果を共有した際の反応を今後確認し、これをホテル運営の現場で今後にどうつなげていくかを考えていきたいと思います。
明石(コスモスホテルマネジメント):今回の検証を通じて、当事者ご家族における「旅行の価値」の深さを改めて実感するとともに、キッチンや広い客室を備え、普段に近い生活が再現できるMIMARUという「施設特性の良さ」も再認識することができたのは大きな収穫でした。また、今回アンケートにご協力いただいた中に、成人されたお子さんを持つ親御さんがいらっしゃり、「昔は社会の理解がなく、子どもが落ち着くための工夫も分からなくて、外出も難しかった」とお話ししてくださいました。そこからわずか1世代の間に、環境づくりや社会の認知は急速に広がっています。私たちにできることは限られていますが、今回学んだことを発信していくことで、社会がさらに良い方向へ変わっていくための一歩になれたら嬉しく思います。
![]()
![]()
株式会社コスモスホテルマネジメント(本社:東京都港区、社長:藤岡 英樹)
株式会社コスモスホテルマネジメントは、訪日ファミリーに人気のアパートメントホテル「MIMARU」を東京・京都・大阪で展開しています。キッチン・ダイニング付きの広い客室と、多国籍スタッフのフレンドリーなサポート、さらに家族旅行を快適にするサービスを提供。“みんなで泊まる”楽しさと、家族との絆や旅先で出会う人・街とのつながりがちぢまり深まる旅をお届けします。
MIMARU公式サイト: https://mimaruhotels.com/( https://mimaruhotels.com/ )
サステナビリティページ: https://mimaruhotels.com/sustainability/( https://mimaruhotels.com/sustainability/ )
コスモスイニシア公式サイト: https://www.cigr.co.jp/( https://www.cigr.co.jp/ )
![]()
![]()