『このミステリーがすごい!』1位は『ジェノサイド』に決定
日本・アメリカ・コンゴの三つの土地を舞台に繰り広げられるこの物語は、創薬化学を専攻する大学院生である古賀研人の元に、死んだはずの父から一通のメールが届くところから始まる。研人は、その不可解な遺書を頼りに、隠されていた父の私設実験室に辿り着く。父はここで何を研究していたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵・ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘のミッションを引き受け、コンゴに潜入する。当初、暗殺だと思われたその任務だったが、指示された場所で見たものは、想像とは全く違ったものだった…。
日本で父の遺志を継いだ研人と、コンゴでミッションを遂行するイエーガー、そしてアメリカのホワイトハウス。三つの舞台で行われていることが作中で絶妙に交差し、世界を一変させる可能性のある“最初の兆し”が明らかにされていく。その緻密に組み上げられたストーリーと、正確な描写は読者を冒頭から作品世界へと引き込んでいく。
エンターテイメント小説において、重視されるべきは「物語のおもしろさ」であることはまちがいない。しかし、何年かに一冊という「傑作」には、読者を楽しませるだけにとどまらない、普遍的なテーマが含まれているものだ。
『ジェノサイド』もそんな小説である。ネタバレを恐れずに書くなら、前述の“最初の兆し”とは、突然変異的に生まれた、ある驚異的な生命体についてであり、その生命体を巡って「人間の本性は善か悪か」というテーマが浮き彫りになる。コンゴの少年兵に関する倫理的な問題提起や、戦争、先進国と途上国の関係など、小さなテーマが作中に散りばめられているが、これらはすべてこの大テーマに結びつくと言っていい。
そして、これも傑作と呼ばれる小説の条件だが、それぞれのテーマは、主張しすぎることなく、物語としての面白さを強化しているのである。
新刊JPが以前、高野氏に行ったインタビューによると、『ジェノサイド』の最初のアイデアは25年ほど前に既にあったが、その物語の設定自体がナンセンスなのではないかという疑問もあり、具体化はしなかったそうだ。それが2000年代に入り、この作品のカギになっている生物学の分野で新しい知識を得たことや、国際情勢の変化によって、作品化する状況が整ったのだという。
25年の準備期間を経て世に出された本作だが、高野氏の作品には10年単位の時間がかかっているものが他にもあり、デビュー作である『13階段』も2年かけて書かれたそう。
長い年月をかけて徹底的に物語を練り上げていく。
このあたりが高野氏の作品が支持されている理由なのかもしれない。
(新刊JP編集部)
『ジェノサイド』特設サイト:http://www.kadokawa.co.jp/genocide
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